新日鐵化学は8月20日、世界最大のコールタール蒸留企業である米国Koppers社との戦略的提携を背景に、中国江蘇省でのコールケミカルの生産・販売拠点の新設を決定したと発表した。
中長期的に成長が見込まれる新興国市場での需要増に応えるために、中国江蘇省邳州市で、Koppersから供給される原料をベースに、電炉用黒鉛電極の原料となる「ニードルコークス」、自動車用タイヤ等の原料となる「カーボンブラック」の生産・販売会社をそれぞれ新設する。
総投資額は約130億円、売上規模は約200億円を見込んでおり、設備の稼働開始は2014年6月頃としている。
邳州市を選択した理由としては、コールタールを安定調達できる豊富な原料産地であること、ニードルコークスでは世界需要の約2割の需要地、カーボンブラックでは約3割を占める主需要地であることが大きい。
また、ニードルコークス以降の川下事業について、日系の独資による新会社での運営が可能となったこともある。
今回、新日鉄化学はニードルコークスとカーボンブラックを単独出資としたが、製造に高度な技術を要するため、技術漏洩を防ぐ狙いがあるためとみられる。
同社では、コールケミカル事業の最大のミッションは、新日本製鐵および住友金属工業の製鉄プロセスから副生される原料を有効活用し、その付加価値を高めることであり、親会社である新生「新日鐵住金(10 月1 日発足)」のグローバル戦略に沿って、強靭なコールケミカル事業を目指し、世界的なタールビジネスチャンスの可能性を追求するとしている。
新日鐵化学では、原料から製品までの一貫体制を、日・米・中のそれぞれ特徴ある企業が担う、これまでに例のない新たなスキームが構築され、世界で最も効率的で競争力を持った、コールケミカル事業チェーンが実現できるものと期待している。
江蘇省邳州市(Pizhou City) 経済開発区に新しく 3つの会社が設立される。
1) コールタールの蒸留
会社名:未定
株主 :(majority) Koppers
(minoroty) Yizhou Group (沂州集団:中国のコークスメーカー)
能力 :コールタール蒸留 300千トン/年
蒸留による製品の大部分は下記2社の原料として供給される。
売上高:$150-200 million
2)ニードルコークス、含浸ピッチ(IP)等の生産・販売
会社名:未定
株主 :新日鐵化学
子会社 シーケムが中心となって設立・運営
能力 :ニードルコークス 6 万t/年
投資額:約100 億円ニードルコークスは電炉用黒鉛電極の原料
3)カーボンブラック生産・販売
会社名:未定
株主 :新日鉄化学
子会社 新日化カーボンが中心となって設立・運営
能力 :カーボンブラック 5 万t/年
投資額:約30 億円カーボンブラックは自動車用タイヤ等の原料
ーーー
本件については、2012年2月16日に、Koppers、新日鉄化学、双日ジェクト(双日100%の炭素関連製品商社)、邳州市当局、Yizhou
Groupの間で覚書が締結されている。
今回の発表では、双日ジェクトは含まれていない。
ーーー
Koppers Holdings Inc
設立:1907 年
本社:米国ペンシルバニア州ピッツバーグ
工場:米国、欧州(イギリス、デンマーク、オランダなど)、中国、豪州
事業内容:
コールタール蒸留事業(約200 万t/年:アルミ用等ピッチ類、カーボンブラック原料油、ナフタリン等)、
鉄道用枕木等輸送材料事業
シーケム
株主:新日鐵化学 65%、エア・ウォーター 35%
工場:九州、広畑、鹿島
事業内容:
・炭素材料(ニードルコークス、ピッチ、カーボンブラック原料油等)
・タール精製品および誘導品(ナフタリン類、無水フタル酸、タールファイン製品等)新日鐵化学グループ「コールケミカル事業」の中核会社であり、電炉用電極向け炭素材料(ニードルコークス・バインダーピッチ・含浸ピッチ)の供給をはじめ、自動車タイヤ向けカーボンブラックや、太陽電池・半導体材料に使用される特殊炭素製品分野への原料供給を通じて、幅広い産業分野を支えている。
石炭系ニードルコークスでは世界シェア推定約6割強。
新日化カーボン
株主:新日鐵化学 100%
工場:愛知県田原市
事業内容:ゴム用カーボンブラックの製造・販売
シーケムから安定的に良質な原料油(ブラックオイル)を調達
コメントする