福島県の病院がホウ素中性子捕捉療法装置を導入

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福島県内で総合南東北病院などを運営する脳神経疾患研究所は本年6月、再発・進行がんを治療できる「ホウ素中性子捕捉療法」(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)装置を、国内の病院で初めて導入することを決定した。

郡山市の南東北がん陽子線治療センター西側に建設する。

本事業は、東日本大震災からの福島県の復興と医療機器産業の振興に寄与するものとして福島県に採択され、事業費総額約68億円のうち、県から4年間で約43億円の財政支援を受ける。

BNCTはエネルギーの低い中性子とがん細胞・組織に集積するホウ素化合物の反応を利用して、がん細胞をピンポイントで破壊する最先端の放射線がん治療法で、正常な細胞への影響を極力抑えつつ、外科手術や既存のX線治療では難しい再発がんや進行がんにも有効とされている。

2014年度後半から頭頸部がんを対象に臨床試験を開始、2018年度には厚生労働省の認定する先進医療として治療の開始を目指す。
計画が実現すると、病院で
BNCT治療を行うのは世界で初めてとなる。

中性子発生装置としては、京都大学と住友重機械工業が共同開発し、間もなく京都大で臨床試験を開始する段階にある「サイクロトロン」を導入する。

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ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は中性子が1932年にChadwickによって発見された4年後の1936年に、Locherによりその原理が提唱された。

概要は以下の通り。

ホウ素化合物のホウ素化フェニルアラニンをあらかじめ体に点滴する。
ホウ素の中には放射性を持たない同位体が含まれるが、そのうち、ホウ素10Bが重要。

ホウ素化フェニルアラニンは、がん細胞に非常に高い割合で集積する。
(がん細胞は増殖力が強いため、正常細胞よりもホウ素化合物を多く取り込む。)

ホウ素化合物集積の様子は陽電子断層撮影(PET)検査で定量的に確認できる。

がん細胞にホウ素が集まったときに熱中性子線を照射すると、この同位体が中性子を捕らえて核分裂を起こし、アルファ線(ヘリウム原子)リチウム線という粒子線を発生する。

アルファ線と7Li粒子が腫瘍細胞を殺す。

アルファ線も7Li粒子もおよそ10ミクロンしか飛ばないため、近くの正常細胞を傷つけない。

対象は、悪性脳腫瘍、悪性黒色腫、頭頚部腫瘍、肝臓がんなど。





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