王子製紙の排水に抗議、中国江蘇省でデモ

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江蘇省南通市にある王子製紙の工場から出る排水が、環境汚染を引き起こす恐れがあるとして、7月28日、住民1万人以上が抗議デモを始めた。

問題の工場は江蘇王子製紙(王子製紙 90%、南通市経済技術開発区総公司 10%)の南通工場で、南通市の経済技術開発区にある。

抗議しているのは、黄海沿いの同市啓東の住民。

南通市政府が
経済技術開発区に王子製紙などを誘致する際、廃水を南通市が建設する約100kmのパイプラインで黄海に排出すると約束していた。完成後、王子製紙 の工場から1日15万トンが排水される予定だった。

これに対し、住民の間でインターネットを通じ、廃水には発がん性物質が含まれ、豊富な漁場となっている海が汚染されて健康被害が出るなどとうわさが広がった。

啓東呂四漁港は全国6大中心漁港の一つで、全国四大漁場の一つに数えられる好漁場といわれ、漁民14万人と関連部門の4.6万人が海で生計を立てている。
全国的にも重要な上海蟹の養殖基地であり、著名な天然ハマグリ養殖基地でもある。
 

住民の一人は、「ここの発がん率は中国で一番高い。沖で取れた魚も売れなくなった。これ以上の汚染はごめんだ」と話している。

啓東の地元政府庁舎前の道路を埋めるほど人が集まった。一部は暴徒化し、車を破壊したり、警官隊を突破して地元政府庁舎内に侵入 し公文書を窓からまき散らしたりした。

「パイプラインの建設計画を永遠に取り消す」――。南通市政府が公告の内容をスピーカーから流した。

パイプラインの正確な位置は不明(毎日新聞の地図を参考にした)


王子製紙は7月30日、以下の発表を行った。

・排海パイプに対する抗議デモについて憂慮している。
・南通市政府より啓東市を経由する排海パイプの現計画を全面的に中止するとの情報を得ている。当社プロジェクトへの影響については現在調査中。

排水中に発がん物質が含まれているなどの一部報道があるが、まったくの事実無根。
 中国の国家基準を下回るまで十分に浄化処理を施し、責任を持って水質管理をする所存。

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王子製紙は2003年6月、単独出資で南通市に年産120万トンの上質紙、塗工紙を建設すると発表した。

しかし、その後の中国の投資ガイドラインの変更で合弁方式を義務付けられ、合弁相手との交渉に手間取り、2007年10月にようやく合弁会社の設立認可を取得した。

2007/10/31 王子製紙の中国工場、発表から年半でようやく着工

2010年末に高級紙生産設備第1期40万トンが生産を開始 、2013年稼働を目指し、原料のクラフトパルプ自製設備を建設中。
高級紙の第2期は2015年の稼働を計画している。

最終的には年産120万トンの生産規模を目指すとしている。

パイプラインは2010年末の高級紙生産開始前に完成する予定であったが、遅れたため、現在は廃水を浄化処理した上で長江に放流している 。

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同社の廃水処理計画が報道や発表からは明確でない。

王子製紙は今回、「中国の国家基準を下回るまで十分に浄化処理を施し、責任を持って水質管理をする所存」としている。

工場側で浄化処理するのだろうか。市側が啓東で廃水を浄化処理をする計画だったのだろうか。
啓東での廃水浄化処理の話は聞こえてこない。

きちんとした浄化処理設備があるなら、それを公開して説明すれば、反対は収まるのではないだろうか。

ロイター報道では、 デモに参加した市民はこう述べている。

「政府は廃水が海を汚染することはないとしているが、それが本当なら、なぜ海ではなく、長江に流さないのか。
 それは長江に流せば上海の住民に影響を与え、上海市民が反対するからだ」

対応を誤ると、今後、長江への排出も問題になる恐れもある。

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中国では環境意識の急速な高まりを受け、工場建設などがデモで中止に追い込まれる例が相次いでおり外国企業による投資にも影響が出る可能性がある。

四川省什邡市で7月2日、化学工場建設に反対する住民2万人による抗議デモが発生した。警官隊が催涙弾を放ち、一部の住民が負傷した。

亜鉛精錬大手の四川宏達グループが6月29日、金属モリブデンなどの精錬工場の建設を始めたのが発端。7月1日の夜、建設に反対する住民約1万人が抗議デモを起こし、翌日には2万人に膨れ上がった。

工場が完成すれば、年間 モリブデン4万トン、銅40万トン、硫酸180万トンを精錬する見通しだった。

モリブデンや銅などの精錬は汚染リスクが高く、住民らは「死神が近づいている」と不安を募らせた。

当局が工場建設の中止を発表したため、騒ぎは沈静化した。

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2011年8月には大連市で化学工場の移転を求める大規模デモが起き、地元当局が即日、工場移転を約束した。

2011/8/15 中国・大連で化学工場の撤去求め デモ

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雲南省曲靖市陸良県では化学会社 陸良化工実業公司が2011年4月から6月までの間、重金属であるクロムを含む汚泥を曲靖市内3カ所で、計5000トンを不法投棄したことが明らかになった。

雲南省曲靖市の不法投棄事件を受け、中国の環境保護部は9月1日、曲靖市がクロムのスラグを処分し、汚染された土壌を浄化するまで、曲靖市の全ての新産業計画の審査を中止すると発表した。

2011/9/7    中国政府、環境汚染対策を本格化 




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