公取委、ビール卸に警告

| コメント(0) | トラックバック(0)

公取委は8月1日、酒類卸売の三菱食品、伊藤忠食品、日本酒類販売の3社に警告した。

本件の問題点は既報 
  
2012/7/28   イオン、ビール価格問題で公取委要請を拒否 

合わせてビール類製造業者等及び特定の酒類小売業者(イオン)に対し、「不当廉売となる行為が行われることのないよう、酒類卸売業者から取引条件の変更について申入れがあった場合には、十分な協議を行うことを要請した」。

卸売業者3社は、それぞれ、イオンに対し、ビール類のうち一部の商品をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することにより、当該酒類小売業者が運営する各店舗の周辺地域に所在する他の酒類小売業者の事業活動を困難にさせるおそれを生じさせている疑いがあるというもの。

ビール類の販売に関するリベートを見直した結果、酒類小売業者向けリベートを削減したこと及び酒類卸売業者が削減されたリベートの相当額を特定の酒類小売業者への納入価格に反映することができていなかったことが、その原因の一つとなっていたものと認めている。

イオンによると(下記)、公取委はイオンの販売で、同社店舗周辺の他の酒類小売業者の事業活動を困難にさせるおそれのある事実は認められなかったことを確認しているという。

リベート廃止については国税庁指導となっているが、公取委も「裁量的なリベートの適正化に向けての働きかけをしてきたことは事実であります。」 (2004/12/15 事務総長定例会見)

イオンは7月23日に「見解」を発表し、以下の通り述べている。
 ・原価を下回る価格での納入を要請した事実はない。
 ・公取委から、独禁法違反(優越的地位の濫用)の疑いで調査を受けたが、その事実は認められなかった。
 ・公取委から事実上の値上げ要請があっても、取引条件を変更し、仕入れ価格の値上げに応じる意向はない。

同社は今回、以下の通り発表した。

1.   公取委の調査において、当社店舗周辺の他の酒類小売業者の事業活動を困難にさせるおそれのある事実は認められなかったことを公取委に確認した。
2.   イオンの「優越的地位の濫用」については、以下理由で違反行為がなかったことを公取委が判断した。
  従来から、値上げ要望の理由と要望内容の根拠が明確に示されれば、真摯に値上げ交渉に対応するという方針。
  卸売業者に支払われていたリベートの詳細が明らかにされず、
卸売業者の販売価格が供給に要する費用を著しく下回っているものかどうか判断できなかった。
  販売価格の引上げ要求において、ビール類製造業者及び卸売業者は、リベート削減の理由等を十分に説明しなかった
  卸売業者との協議を重ね、物流コストの削減や他の商品の取引を拡大などを行い、一方的に不利益な条件を押し付けたとはいえない。
3.   公取委からの要請の有無に関わらず、今後も、これまで通り卸売業者と協議を続ける。


前回の見解と合わせると、協議は続けるが、理由と根拠の明らかでない値上げには応じないということ。

逆に、公取委の調査で、資料作成や事情聴取に多大な時間及び労力を費やしたこと、事情聴取で1日8~9時間に及ぶ事情聴取があり、社会通念上合理的な程度を超えるとし、公取委に厳重な抗議をしたことを明らかにしている。


公取委警告を受け、三菱食品は「法令順守を徹底し、再発防止に努める」とし、伊藤忠食品は「警告を受けた事について真摯に受け止め、より一層の適正取引を推進し、コンプライアンスの遵守に努めてまいります」と発表した。

自主的な値下げでなく、やむを得ないものであり、(イオンによると)周辺の他の酒類小売業者の事業活動を困難にさせるおそれのある事実は認められなかったのに、どうして反論しなかったのだろうか?

イオンが値上げを呑まない以上、「再発防止」にはビールメーカーに値下げを要請するしかない。

ビール各社はなにも発表していない。

リベート廃止に当たり、「当然これまでのリベート分を考慮しながら、交渉がなされ」なかったのが原因であり、「不当廉売となる行為が行われることのないよう、酒類卸売業者から取引条件の変更について申入れがあった場合には、十分な協議を行うこと」という公取委の要請にどう応えるのだろうか?



トラックバック(0)

トラックバックURL: https://blog.knak.jp/knak-mt/mt-tb.cgi/1906

コメントする

月別 アーカイブ