エネルギー供給構造高度化法、進展

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コスモ石油は8月28日、2013年7月に坂出製油所を閉鎖し、その後はオイルターミナル等として事業を継続すると発表した。

省エネルギーの推進や次世代自動車の登場はじめ少子高齢化などの社会構造の変化により石油需要は減少に転じ、将来においても同じ傾向が続くと想定されているとみている。

国内の環境変化に加えて、中東・アジア地域で新たな製油所が建設され石油製品の供給能力が増加する状況を勘案すると、製油所の集約による供給体制の再構築が必須であるという認識に至ったとしている。

坂出製油所は1972年10月操業開始で、原油処理能力は14万バレル/日。

この結果、同社の製油能力は下記の通りとなる。

製油所

能力(万バレル)

現状 処理後
千葉 24.0 24.0
四日市 17.5 17.5
8.0 8.0
坂出 14.0
合計 63.5 49.5

同社の認識はその通りで、坂出製油所の閉鎖もリーズナブルである。

しかし、本件には裏がある。

2009年7月1日にエネルギー供給構造高度化法が成立した。

電気やガス、石油事業者といったエネルギー供給事業者に対し、非化石エネルギー源の利用を拡大するとともに、化石エネルギー原料の有効利用を促進することを目的とするもの。

これに基づき、経済産業省は2010年7月5日の「告示」で、エネルギー供給構造高度化法の基本方針の一つに重質油分解能力の向上を挙げ、重質油分解装置の装備率の目標を決めて、業者に対して重質油分解装置の新設若しくは増設又は常圧蒸留装置の削減により適切に対応することを求めた。

基本方針
1.
事業者が講ずべき措置に関する事項   石油精製業者は、石油をめぐる諸情勢を勘案し、重質油分解能力の向上、コンビナート連携の促進、関連技術の開発の推進等を通じて、原油等の有効な利用に取り組むこととする。    

2. 施策に関する事項  
国は、石油をめぐる諸情勢を踏まえ、石油精製業者による原油等の有効な利用に係る取組が適切かつ円滑に進むよう、
重質油分解装置の装備率の向上に係る基準を定め、着実に運用するとともに、石油精製業者による重質油分解能力の向上のための設備の運転面の改善等を促し、コンビナート連携の促進、関連技術の開発の推進等に係る所要の環境整備を進めることとする。    

原油等の有効な利用に関する石油精製業者の判断の基準  
  我が国の重質油分解装置の装備率を2013年度までに
現状の10%から13%程度まで引き上げることを目標とする。

これによれば、今回の重質油分解装置の装備率の向上に係る基準に従い、重質油分解装置の新設か 、常圧蒸留装置の削減をしなければ、経産相は勧告を行い、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができることとなる。

重質油分解装置の新設は考え難く、実際には常圧蒸留装置の削減を求めるものである。

   2010/7/7 エネルギー供給構造高度化法で重質油利用促す新基準、石油業界の再編圧力に

本ブログでは、重質油分解能力の向上は望ましいとしても、各企業の判断事項であり、これを基準に実質的に設備削減を強いるのは、闇カルテルであるとして批判した。

2010/7/21 エネルギー供給構造高度化法は第二の産構法か?

これが理由かどうかは分からないが、「供給事業者は達成のための計画を作成し、経済産業大臣に提出する」となっているが、同年10月末の提出資料は非公開となった。

その後、各社は自社の判断として、順次設備処理を発表している。

METIによる各社別の削減義務量と現時点での削減計画は以下の通り。(万bbl/d)

  トッパー
処理能力
改善達成
のための
トッパー
能力
トッパー
能力削減
義務量
トッパー能力削減計画
和シェル石油グループ 51.5 44.8 6.7 12.0  京浜・扇町 2011/9停止
JXグループ 179.22 137.9 41.4 31.65  2012/8 時点 能力
 うち 11.5 
PetroChinaとのJV化
出光興産 64.0 55.7 8.3 12.0  徳山製油所 2014/3停止
コスモ石油 63.5 43.8 19.7 14.0  坂出製油所 2013/7閉鎖
東燃ゼネラル石油 66.1 45.6 20.5    
太陽石油 12.0 10.4 1.6    
富士石油 19.2 14.8 4.4 5.2  第1常圧蒸留装置 2010/11廃棄
極東石油工業 17.5 15.2 2.3    
合計 473.02 368.2 104.9  74.85  



JXグループの内訳は以下の通り。
同社は、「2013年度末までに60万バレル削減」と発表している。

 

トッパー
処理能力

2012/8時点の実績  
室蘭 18    
仙台 14.5    
根岸 34 -7  
大阪 11.5    -11.5  PetroChinaとのJV化
水島 25 -9  
麻里布 12.7    
大分 16 -2.4  
合計 179.22 -31.65  


問題は東燃ゼネラル石油である。削減義務量は20.5万バレルとなっている。

 

トッパー
処理能力

川崎 33.5
15.6
和歌山 17.0
合計 66.1


堺も和歌山も存在意義があり、仮にどちらかを止めても、まだ不足する。

和歌山県知事は県議会で、「東燃ゼネラル石油和歌山工場は、本県の製造品出荷額ベースで約20%、有田市においては90%、さらに製造業だけじゃなくて周辺の経済に及ぼす影響などを考えますと、大変高い割合で有田市の経済、それから県の経済に貢献をしているというか、影響を及ぼす存在であるということだと思っております」と述べ、和歌山工場の廃止に対し反対している。

東燃ゼネラルは「株主の皆さまへ」で以下の通り述べている。

当社は、(METIの)この指針に対応するためさまざまな可能性について徹底的に検証しました。
2010年10月末に提出した計画には、
常圧蒸留装置の削減および重質油分解装置の能力増強も含んだ複数のケースが盛り込まれています。
2014 年3月31日の期日までに約3年あることから、今後も厳密な検討を続け、従業員、地域社会、顧客および株主の皆さまにとってどのような影響があるのかを十分に考慮した上で判断したいと考えています。

本来、METIの告示で設備処理を強制するのはおかしく、従う義務はないと思われる。


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