公正取引委員会は9月21日、電力会社が一体運営している発電、送配電と小売りの3部門を、分社化などの形で切り離すよう求めた報告書 「電力市場における競争の在り方について」を発表した。
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/12.september/12092101.pdf
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2012年4月3日の閣議で、「エネルギー分野における規制・制度改革に係る方針」が決められた。
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/publication/240403/item240403.pdf
これに基づき、各省庁は割り当てられた項目について検討を行うこととされた。
公取委関連は以下の通り。
エネルギー分野における規制・制度改革に係る方針 | |||||||||||||||||||
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公取委は電力市場の現状について調査を行うとともに、競争政策の観点から検討を行い、考え方を整理した。
公取委によると、主な「現状と問題点」は以下の通り。
小売分野 | |
新電力のシェアは約3.5%と小さい(自由化分野)。特に産業用におけるシェアが業務用に比して小さい。 | |
・ | 新電力は、変動費用の高い電力を電源としており 、夜間の電力使用量が大きい需要家との関係等で有利な料金の設定や大量の電力の安定的な供給が困難 |
・ | 高圧の需要家は数が多く、また、小規模な需要家が多いことから、営業及び顧客の管理に費用が掛かる |
一方、一般電気事業者(以下 電力会社)による供給区域外への供給事例は1件のみである。 |
・ | 自社の供給区域内の需要への対応に最適化しており、営業範囲を拡大するインセンティブがない |
・ | 連系線及び周波数変換装置の容量の制約 |
発電・卸売分野 | |
・ | 新電力は電力の大半を自家発業者等に依存している。また、新電力は変動費用の高い電源のウエイトが大きい。 |
・ | 新電力は、変動費用の低い発電所の新規建設が困難である。 |
・ | 発電設備の償却期間が長いこと等から、公営企業体を含む自家発業者等は、長期契約によって電力会社に電力を供給している。 |
・ | 電力会社は、新電力と競合していることから、新電力に電力を供給するインセンティブがない。 |
・ | 卸電力取引所は、流動性が小さいなど、新電力が電力調達先として依存することができない。 |
送配電分野 | |
・ | 託送料金について、算定方法が規制され、電力会社において会計分離もなされているが、 外部からは、電力会社が過大な託送料金を設定することにより新電力を不利に扱うインセンティブがあるようにみえる。 |
・ | 電力会社は自己の小売部門に係る実際のインバランスを把握しておらず、一定量をインバランス相当量とみなして、託送収支を計上している。 (公平でない) |
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競争政策上の考え方に基づく提言
(1) 電力会社の発電・卸売部門と小売部門の分離
新電力に対する電力供給者である発電・卸売部門と
新電力と競争関係に立つ小売部門を分離して、別個の取引主体とすることが考えられる。電力会社が新電力への電力供給を行うインセンティブを確保
分離された発電・卸売部門が、自社グループ内の小売部門の競争事業者に対して差別的な取扱いを行った場合には、独禁法に違反する可能性。
(2) 電力会社の送配電部門の分離
送配電網を発電・卸売部門及び小売部門から分離
電力会社の送配電網は、新電力を含め、電力供給に関わる事業者が共通して利用する設備であるから、利用者に対する開放性・中立性・ 無差別性を確保することが必要。
独占の弊害に対応するため、託送料金の水準については一定の規制が必要同時同量義務とインバランスに伴う負担は、競争関係にある電力会社と新電力の間で公平でなければならない。
(電力会社も実際のインバランスの量に基づいたインバランス料金を負担する)
(3) インフラの整備
(1) 連系線・周波数変換装置の増強
行政機関等の中立的な立場からの一定の介入・規制も必要(2) 卸電力取引所の活性化
参加者にとって更に使い勝手の良い商品設計や取引ルールの見直し(3) スマートメーターの仕様等
小売事業者間の競争が阻害されることのないような制度設計
(4) 小売分野における交渉力格差の考慮
(1) 複数の小規模な需要家による電気事業者との一括交渉
中小規模の事業者が構成する事業者団体による電力調達に係る一括交渉は独占禁止法上問題とならないと考える。(2) デフォルト・サービス約款の策定・公表の義務付け等
最低限の取引条件を定めた約款(デフォルト・サービス約款)の策定と公表を義務付けし、
それよりも需要家にとって不利な条件での契約を禁止することが考えられる。
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