バージニア州 Richmondの米連邦地裁は8月30日、韓国のKolon Industriesに対し、今後20年間、アラミド繊維を製造販売することを禁じる命令を出した。
ーーー
DuPontとKolonは長期間争っている。
DuPontは2007年に、同社を2006年初めに退職し、その後Kolonのために Aramid Fiber Systems LLCを設立した技術者の行動に疑念を持ち、FBIと商務省に懸念を伝え、共同で調査を続けた。
問題の技術者は秘密情報を自宅のパソコンに入れており、これをKolonに渡したとされる。
技術者は2009年12月に罪を認め、2010年3月に懲役18ヶ月の判決を受けた。
DuPontは2009年2月にKolonを商業秘密盗用で訴えた。
これに対し、KolonはDuPont技術の盗用を否定、自社技術で生産していると反論していた。
Kolon は2010年7月、DuPontが米国の需要家にKolonのアラミドを購入しないよう、圧力をかけているとして、連邦裁判所に訴えた。
2010/8/7 韓国Kolon、アラミドの独禁法問題でDuPontを訴え
バージニア州Richmondの連邦裁判所の陪審は2011年9月、Kolonに対し、DuPontのアラミド繊維(Kevlar)に関する商業秘密と秘密資料を盗んだとして、919.9百万ドルの損害額を認定した。
米地裁は11月22日、懲罰賠償として35万ドル、合計920.3百万ドルの支払いを命じた。
2011/9/21 DuPont、アラミド繊維の技術盗用裁判で韓国のKolonに勝訴
ーーー
今回の判決で裁判官は、Kolonに対し、20年の間、世界中であらゆるパラアラミド製品の製造、使用、マーケティング、販売促進、販売、流通、販売提案、勧誘を禁じた。
同時にDuPontから盗んだ秘密情報の利用を永遠に禁止した。
また、10月1日までに秘密情報をDuPontに返還することを命じた。
裁判官は、Kolonの役員がKevlarの秘密情報を意図的かつ不当に利用し、違法行為を行ったと陪審員が結論付けたとし、盗んだDuPontの秘密情報はKolonのHeracronの製造に肝要で不可欠のものであるとみなした。
更に、Kolonが今後もDuPontの秘密情報を使い続け、DuPontが損害を受けるとすれば、さきの920百万ドルの損害賠償だけでは充分な解決にはならないと述べた。
Kolonは、「アラミド技術を開発するため、過去30年間注いできた努力を水の泡にする結果であり、わが社の従業員の働き場を奪う横暴な判決だ」と、遺憾の意を表明、直ちに控訴手続きに入るとし、その間、この命令を停止するよう求めた。
Kolonは自社のアラミド繊維Heracronは、DuPontのKevlarと製品特性は似ているが、生産工程などは完全に異なる製品だと主張している。
同社は1979年に韓国科学技術研究院の故・尹漢殖博士のアラミド繊維国産化研究を支援し、本事業に進出した。
「DuPontの元社員とコンサルティング契約を結んだのは事実だが、DuPontの営業秘密を侵害した事実は全くない」としている。
米裁判所は全世界での生産・販売を禁止するとの判決を下した。
各国が必ずしもそれに従わなければならないわけではないが、Kolonは控訴審での攻防を念頭に、亀尾工場(年産能力5,000トン)の操業中断に踏み切った。
Kolonの昨年の売上高は約2,810億円で、うちアラミド繊維の売上高は約620億円。
過去 5年間に米国で販売したアラミド繊維は約23億円とされる。
付記
米バージニア州の連邦地裁は9月4日、Kolonに対しDuPontの営業秘密に関する全ての書類を10月1日までにDuPontに渡すほか、コンピューターに関連ファイルが残っている場合は全て削除するよう命令した。
裁判所の許可を受けDuPontが雇用した専門家がKolonのコンピューターとコンピューターネットワークに接続し、営業秘密の関連資料が完全に削除されているか確認するよう指示した。
さらに、DuPontの営業秘密を知る社員や営業秘密が保管されている場所、営業秘密について言及した全ての事案を特定し、DuPontに知らせる義務も課した。
これに対し「企業のコンピューターへのアクセスを許可することは、もう一つの営業秘密の侵害ではないか」との批判が出ている。
ーーー
アラミド繊維については9月1日の記事参照。
コメントする