iPS細胞技術に関する特許が日本、米国で成立

| コメント(0) | トラックバック(0)


京都大学iPS細胞研究所は9月18日、iPS細胞基本技術に関する特許が、日本で1件、米国で3件、新たに成立したと発表した。
この4件のうち、米国特許2件はすでに特許登録されており、残りの2件も、数ヶ月以内に特許登録される予定。

これらの特許4件が成立したことにより、日米両国において、iPS細胞研究や薬剤候補物質のスクリーニングなどの応用研究に、多くの企業が安心して取り組むことができる環境の構築に貢献できると考えているとしている。

ーーー

日本で成立した特許1件は、iPS細胞研究所(CiRA)の研究グループが世界で初めて樹立した人工多能性幹細胞(iPS細胞)の基本技術に関するもの。
今回の特許は、4件目の日本特許となる。

特許請求の範囲:

(A) 特定のOctファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子、Mycファミリー遺伝子およびSoxファミリー遺伝子を体細胞に導入する、iPS細胞の製造方法
(ただし、初期化される体細胞において、前記遺伝子のいずれかが発現している場合には、その遺伝子は導入する遺伝子から除いてもよい)
(B) 特定のOctファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子およびSoxファミリー遺伝子が導入された体細胞を、増殖因子bFGFの存在下で培養する、iPS細胞の製造方法
(ただし、初期化される体細胞において、前記遺伝子のいずれかが発現している場合には、その遺伝子は導入する遺伝子から除いてもよい)
(C) 前記(A)または(B)に記載の製造方法によりiPS細胞を製造し、分化誘導する、分化細胞を製造する方法


過去に成立していた日本特許3件では、いずれも導入遺伝子がOct3/4, Sox2, Klf4またはOct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycに限定されていた。
今回成立した特許では、導入遺伝子が特定のファミリー遺伝子まで広く認められた。

更に、その特定の初期化遺伝子が体細胞において発現している場合は、その遺伝子を除く初期化遺伝子を導入する方法も含めて成立した。

本特許は、上記で挙げたファミリー遺伝子を用いたiPS細胞の作製方法に加え、iPS細胞の作製および分化誘導の一連の工程により作製された分化細胞を用いた薬剤候補物質スクリーニング等まで、広範囲に権利が及ぶもので、日本国内でのiPS細胞技術を用いた医療応用の研究開発に拍車がかかることが期待できるとしている。


ーーー

米国で成立した特許3件のうち1件は、山中教授のグループが開発した技術に関する特許で、残りの2件は、2011年1月27日付けで、米国のバイオベンチャー企業iPierian社から京都大学に譲渡された特許。

今回の No.4 とiPierian社のNo.5 は、いずれもiPS細胞作製基本技術に関する特許で、作製方法が類似していたため、米国でインターフェアランス( 先発明主義による発明日の争い)に入る可能性があった特許出願で、iPierian社が保有していた米国特許が、京都大学に譲渡されたため、係争が回避された。

No.5は、No.4 のiPS細胞作製方法に、さらに特定の低分子化合物(特定の酵素の阻害剤)を加えた「選択発明」として成立した。

No.6は、Oct3/4, Klf4,Sox2の3遺伝子を含有するiPS細胞から分化させた細胞を、薬剤候補物質等のスクリーニングに使用できるという特許。

2011/2/3  京都大学、米社からiPS細胞関連特許を譲り受け

米国では、これまでに3件のiPS細胞に関する基本技術特許を成立させており、新たに成立した特許を加えると、合計6件の米国特許を取得したことになる。

京大は2011年8月11日、山中伸弥教授らが開発した新型万能細胞(iPS細胞)の作製技術に関する特許(特許番号8,048,999)が米国で成立したと発表した。

2011/8/15  京大のiPS細胞特許、米で成立

京大は2011年11月24日、iPS細胞に関する特許について、4つの遺伝子を用いてiPS細胞を作製する方法に関する米国特許(特許番号8,058,065)が11月15日に成立したと発表した。

京都大学iPS細胞研究所は2012年5月14日、山中伸弥教授らのグループによるiPS細胞の製造方法と分化誘導方法に関する特許(8,129,187)が、3月6日に米国で成立したと発表した。これは京都大学が米国で保有する3件目のiPS細胞関連特許となる。

2012/5/22 米国で3件目のiPS特許成立、iPS研究の現状

 

トラックバック(0)

トラックバックURL: https://blog.knak.jp/knak-mt/mt-tb.cgi/1952

コメントする

月別 アーカイブ