ユーロ問題が複雑化するなか、これまで近い将来のユーロ圏加盟を目指してきた各国が方針を変更しつつある。
ブルガリアはこのたび、ユーロの導入計画を無期限に凍結した。
ボリソフ首相とジャンコフ財務相は9月3日、Wall Street Journalとのインタビューで、歴代政権の長期的な戦略的目標だったユーロ導入計画の棚上げを決定したことを明らかにし、経済情勢の悪化とEUの見通しの不透明さの高まり、それに緊縮政策3年目に入ったブルガリアの世論の決定的な変化に対応したものだ、と指摘した。
「今ではユーロ導入の利益は何もなく、あるのは費用だけだと見ている」、「ブルガリアにとってリスクは大きすぎ、ルールが何であり、それが1年あるいは2年後にどうなってしまうのか、はっきりとしていない」と付け加えた。
現在、EU加盟国は27か国で、うち、17か国がユーロを採用している。
EC条約では、EU加盟国は、基本的に単一通貨ユーロを導入することが想定されている。
但し、適用除外規定(Opt out clause)があり、英国とデンマークは適用除外が認められている。
スウェーデンは適用除外は受けていないが、国民投票で加盟が否決された。
再度、国民投票を行い、その賛成を得て、加盟するとしているが、国民投票時期は明確でない。
その他の7か国は、これまで一定の経済収斂基準を満たしていないとして加盟が認められていなかった。
ブルガリアは賃金と年金の削減によって、2011年の財政赤字の対GDP比を2.1%にまで低下させることに成功し、基準を満たしたが、ブルガリア側からユーロの導入計画を無期限に凍結した。
各国の状況は以下の通り。
EU 加盟 |
ユーロ圏 | ||
参加 (記載なしは 1999/1) |
不参加 | ||
1952 | フランス、ドイツ、 イタリア、オランダ、 ベルギー、 ルクセンブルグ |
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1973 | アイルランド | 英国 | |
デンマーク | 2000年9月の国民投票でユーロ参加否決 自国通貨の対ユーロ変動幅を中心交換レートから 上下2.25%内の変動に維持 国民投票の実施は、欧州経済危機もあり適切な時期ではないとし、 先送り。 |
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1981 | ギリシャ (2001/1) | ||
1986 | スペイン、 ポルトガル |
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1995 | オーストリア、 フィンランド |
スウェーデン | 2003年9月の国民投票で否決 |
2004-05 | キプロス (2008/1)、 マルタ (2008/1)、 スロベニア (2007/1)、 スロバキア (2009/1)、 エストニア(2011/1) |
ラトビア | 2013年春にユーロ導入のタイムテーブルを決定 (これまでは2014年に導入するとしていた) |
リトアニア | 「欧州の準備が整った」時にのみ加盟する。 | ||
ポーランド | 2015年導入説を否定 「ユーロが2015年までに十分に安定した通貨になる可能性は ほとんどない」 |
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チェコ | 「早くても2017年以降になる」 | ||
ハンガリー | 2012年1月1日施行の新憲法に、公式通貨を「フォリント」とする旨 明文化 ユーロ導入には憲法改正が必要 |
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2007 | ブルガリア | 2012年9月、EUの将来をめぐる不透明性が高まっていることを理由に 無期限凍結 (2010年1月の時点では、2013年にユーロを導入する方針) |
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ルーマニア | 2015年のユーロ導入を目標とするが、今後のEU経済及び12年秋の 選挙結果を見つつ、再検討。 |
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合計 | 17か国 | 10か国 |
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