コスモ石油は9月14日、 千葉製油所で6月28日に発生した屋外タンクからのアスファルト流出事故について「事故調査委員会」の報告を発表した。
6月28日午前7時18分頃、タンクが破裂してアスファルト 437キロリットル(15℃換算)が 漏洩し、一部が海上に流出した。
海上への流出量は約72キロリットル(15℃換算)、海上へ流出したアスファルトはオイルフェンス内に留まって回収したが、この内約2キロリットルがオイルフェンスの外に漏洩したと推定。
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千葉製油所は東日本大震災でLPGタンクの火災・爆発事故が起き、法令違反(緊急遮断弁3基をピンで「開」状態で固定していた)も発覚した。
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2011/7/2 経産省、東日本大震災の火災事故でコスモ石油に行政処分
今春に一時的に生産を再開したが、トラブルや今回の事故などで再び停止したままとなっている。記者会見した松村取締役は、「再開時期は見通せない」と述べた。
停止1カ月あたりで15億~30億円のコスト押し上げ要因になる。
同社は2013年7月の坂出製油所の閉鎖を決めたばかり。
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アスファルトタンク (505番タンク、容量:1,000キロリットル)は1967年に製造・設置され、10年ごとに検査することになっていたが、2007年の調査を見送ったため、1996年を最後に検査されていない状態が続いていた。
しかし、2011年3月の東日本大震災で同製油所の石油タンクが爆発、炎上する事故があったため、同製油所はすべてのタンクの稼働を停止させ、安全検査を実施。今回のタンクは2011年10月に約15年ぶりに検査された。
屋根板に腐食開孔があり、開孔部については、応急処置した。
今回、同タンクの点検および腐食開孔部の補修を目的に、常温であったアスファルトを6月14日から加温し、他のアスファルトタンクに移送する準備をしていた。
事故発生の直前にアスファルトタンク上部の通気口から多量の水蒸気が目撃され、事故発生時には鈍い破裂音が確認されている。
「アスファルト漏洩事故調査委員会」によると、事故原因は以下の通り。
(1)本タンクの屋根板が外面腐食により相当期間開孔し、雨水が浸入する状態になっていたこと
検査計画の策定および確認の手順に不備があり、本タンク屋根板の検査が適切に実施されず、屋根板が腐食により開孔した。
(2)本タンク内部に水が浸入した状態で本アスファルトを常温から加温したこと
本タンク屋根板の腐食開孔部については、応急処置を行っていたため、「本タンク内に水が浸入していたとしても少量であり、加温中に蒸発する。」と判断した。
(推定)
外面腐食による開孔部から雨水がタンク内に混入したが、タンク内のアスファルトは製品アスファルト(1.02~1.04g/cm3) を生産する際のブレンド材として使用するもので、水よりも密度が小さい(0.97g/cm3)ため、水はアスファルト内に沈み込んだ。
(タンクは通常170℃を保持しているが、精製装置の稼働停止に伴い1年以上常温期間があったため蒸発せず)今回、加温によりその水が沸騰し、水蒸気によってアスファルトが上部へ押し上げられ、タンク上部が開口し、水蒸気とともにアスファルトが流出した。
(3)本アスファルトの海上流出を防ぐ体制が不十分であったこと
アスファルトタンクの敷地に囲いを設置していたほか、本アスファルトが漏洩してもアスファルトタンクの敷地内に留まる量の在庫運用を計画していた。
計画実行の前段階である移送作業の準備中に今回のアスファルト漏洩事故が発生し、本アスファルトの一部が囲いを越えて近くの排水溝に流入したため、海上へ流出した。
アスファルトタンクの敷地内にある油水分離槽の入口弁が開状態であったため、本アスファルトの一部が排水溝に流入し、海上に流出した。
再発防止策
(1)の再発防止策
アスファルトタンク屋根板の寿命予測を厳格に実施し、補修基準に達する前に検査を実施する計画を策定
検査履歴を整備し、保全計画が遺漏なく管理されるよう、より具体的な「手順・要領・役割分担」を策定
(2)の再発防止策
アスファルトタンク内に水がある状態で加温する危険性について、運転管理基準等に反映、周知・教育を徹底
今後常温まで冷却された本アスファルトを再加温する際には、水の沸点を超えない運用とし、他のタンクへ移送
(3)の再発防止策
油水分離槽等の設置目的および運用方法を周知徹底
万が一、本アスファルトが漏洩してもアスファルトタンクの敷地内に留まる容量で在庫運用を実施
アスファルトが海上に流出させないよう対策を実施
アスファルトタンクの敷地内に人がいた際に同様な事象が発生した場合でも、速やかに避難できるように歩廊を増設
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