日本触媒・姫路製造所で爆発事故

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9月29日午後2時30分すぎ、日本触媒・姫路製造所で爆発があり、消火活動中だった消防隊員1人が死亡し、工場従業員1人が意識不明の重体となった。ほかに従業員ら34人が重軽傷を負った。


同社によると、アクリル酸の入ったタンクの温度が上昇し、爆発したという。

爆発したのは、アクリル酸の貯蔵タンク(高さ5.6メートル、直径4.2メートル、容量70トン)で、南北に3基並んだタンクのうち一番南側。

午後1時前、タンク内の温度が異常に上昇しているのに従業員が気付き、同社の自衛消防隊が放水。しかし、温度は下がらず、「発火につながる重合反応が起きるかもしれない」と消防に応援を要請した。

消防隊員らが駆け付け、放水準備をしていたところ、約30分後に爆発し、北隣のアクリル酸のタンク(容量100トン)、トルエンのタンク(同50トン)に延焼したとみられる。

アクリル酸は重合反応で熱を出すため、タンク内は、常時、窒素を注入して酸素濃度を下げ温度を60℃前後で管理しているという。

タンク内のアクリル酸(液体)がゲル状に変化していたことが分かった。県警は、何らかの原因で異常な化学反応が発生し、爆発した可能性があるとみている。

付記

タンク内の温度管理について、管制室での監視ではなく、タンクに付いている温度計を目視するシステムであることが分かった。
「爆発前は温度計を読んでいない。アクリル酸の臭気で近づけなかったのではないか」という。

姫路市消防局は、現場の火災は9月30日午後3時半、爆発から約25時間ぶりに鎮火したと発表した。


同社は姫路製造所でアクリル酸と、それを原料にしたアクリル酸エステル、吸水性樹脂(SAP)を製造している。
SAPは紙おむつの生産に使用される。


アクリル酸の製法

  一段目  プロピレン(C3H6) + O2 →アクロレイン(CH2=CHCHO)+H2O

  二段目  アクロレイン(CH2=CHCHO)+1/2 O2→アクリル酸(CH2=CHCOOH)

ーーー

日本触媒のアクリル酸、SAPの能力は以下の通りで、日本では姫路製造所のみで生産している。(千トン)

  アクリル酸 SAP
現   状 2013末 現   状 2013末 2014末
日本 姫路 460   +80 320    
US ヒューストン 60   60    
ベルギー アントワープ     60    
インドネシア チレゴン 60 +80   +90  
シンガポール ジュロン島 40        
中国 張家港     30   +30
Total 620 780 470 560 590

日本触媒は2012年1月31日、中国の能力を倍増すると発表した。
2014年3月末完成、7月から商業運転を開始する予定。


事故があったのはアクリル酸などの貯蔵設備で、SAPなどの生産設備には損傷はなかったが、姫路市の石見市長は29日付で消防法に基づく危険物施設の緊急使用停止命令を出した。安全が確認できるまで、危険物施設すべての使用ができなくなり、同製造所の操業は事実上ストップする。
再開には 事故調査や原因究明、再発防止策の策定まで「半年かかる可能性が高い」とされ、長期の製造休止は避けられそうにない。

同社のSAPの生産能力は世界シェアの3割にあたる年47万トンで、日本では32万トンを姫路製造所のみで生産している。
在庫はSAPが0.8か月、アクリル酸が2週間程度。
しかし、いずれも構内にあるため同命令の解除まで出荷が不可能という。

日本触媒のSAPの最大需要家はプロクター・アンド・ギャンブルで、アジア向け紙おむつについて日本触媒から全量調達している。
同社は代替品調達などの対応策を固める方針だが、 SAPの各メーカーは紙おむつ需要拡大でフル生産が続き、代替生産する余地が少ないとされる。

また、紙おむつメーカーによってSAPに求める吸収スピードや保水力などが異なり、調達先をすぐに切り替えることは難しい。

オムツ・メーカーとSAPメーカーの組み合わせは、下記の通り。

P&G   日本触媒、BASF
キンバリー・クラーク   三洋化成、Evonik
ユニ・チャーム   住友精化、三洋化成(サンダイヤ)
花王   内製

 

SAPメーカーは下記の通り。

日本触媒:上記の通り、中国で+3万トン→59万トン
BASF:
ブラジルのCamaçariに60千トンプラントを建設(生産開始は2014年末)→59万トン

2011/8/4 日本の各社、高吸水性樹脂を増強 

Evonik:サウジJVで8万トン生産を決定。

2011/8/31 Evonikも高吸水性樹脂を増強


アクリル酸メーカーは下記の通り。(2010/10)

B社はBASFC社はDowD社はArkema(元 Atofina)と思われる。


日本触媒と住友化学は2002年に、住化のアクリル酸事業、日触のMMA事業を、シンガポール事業を含めそれぞれ相手に譲渡した。事業交換により夫々がコア事業に経営資源を投入することとしたもの。

日本触媒は住友化学・愛媛工場のアクリル酸製造プラント(年産8万トン)と製品の営業を譲り受けたが、愛媛プラントは2007年末に停止し、姫路に同能力のプラントを建設した。




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