日本原子力発電の損益状況

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河野太郎代議士のブログ「ごまめの歯ぎしり」(2012年10月17日)に「あなたの電気代も流用されている」という記事が掲載されている。
http://www.taro.org/2012/10/post-1276.php

日本原子力発電という会社がある。東海第二原発と敦賀1号機、2号機を保有する原子力専業の発電会社だ。
敦賀1号機は2011年1月26日に運転を停止し、敦賀2号機は2011年5月7日に、東海第二は2011年5月21日にそれぞれ運転を停止した。
この会社の発電は全て止まった。

2010年3月期の発電量は136億kWh。
2011年3月期の発電量は170億kWh。
2012年3月期の発電量は10億kWh、そう10億kWh。

前々年の14分の1の発電量で、電力料収入はほぼ同じ。

なぜこんなことになるかというと、日本原子力発電は電力会社との契約で、発電しようがしまいが「基本料金」にあたるお金がもらえる。

東京電力は、おそらく年間400億円を超える金額を日本原子力発電に支払うことになる。
2011年4月から9月に、東京電力は232億円、関西電力220億円、中部電力195億円を支払っている。

いや、正確に言うと、東電が支払っているのではない。この年間四百数十億円は、東電管内の企業と世帯に東京電力が請求する電気代に含まれている。

東電の値上げのときに、さすがにこれを値上げに入れるのはおかしいだろうという議論が出たが、枝野経産大臣はすんなりと、お認めになった。

本来ならば、売るものがない日本原子力発電が破綻して、株主である電力会社がその損失を負担すればよいだけの話だ。
(途中 略)


同社の事業報告にも以下のように記されている。

当社におきましては、福島第一原子力発電所事故以降、全国的に原子力発電所が再起動できない状況が続く中、当年度は、東海第二発電所及び敦賀発電所1号機が年度を通して停止したほか、敦賀発電所2号機につきましても、燃料集合体からの漏えい事象の発生やその後の定期検査によって昨年5月以降運転を停止することとなり、その結果、当年度の全発電所の平均設備利用率は4.6%、総発電電力量は10億65百万キロワット時と、当初計画を大きく割り込むこととなりました。

同社の決算は以下の通り。

2011年度の発電量は前年度の6%しかないのに、売上高は1453億円で、前年の1743億円から17%の減に止まっている。

「支出面では,業務各般にわたり徹底した合理化,効率化の推進による諸経費の縮減に努めました結果、経常費用合計は1,394億34百万円となりました」としているが、
個別決算でみると、大きく減っているのは燃料費と使用済燃料再処理費等と原子力発電施設解体費引当で、停止に伴う当然の減である。

経常損益は前年度からは下回っているが、2007年度~2009年度と比べると、大幅増となっている。

「経常利益は75億98百万円となりましたが、災害特別損失など特別損失として108億42百万円を計上したことにより、税引前当期純損失は32億44百万円となり、法人税率の変更に伴う繰延税金資産の取崩しによる法人税等102億57百万円を控除後の当期純損失は135億1百万円となりました。」

同社は1957年5月に、電力会社の社長会で、電力会社9社が出資して日本初の原子力発電の会社を設立する案が打ち出され、電力会社9社80%、電源開発20%の出資によって設立された。

現在の株主は以下の通り。
  電力9社合計 85.04% (うち東京電力 28.23%)
  電源開発    5.37%
    一般(142人)   9.58%  (日立 0.92%、みずほコーポレート銀行 0.71%、三菱重工 0.64%)

ーーー

日本原子力発電は日本で最初の原発を建設・運営するために電力9社が中心で設立したもので、発電した電力は電力9社が引き取っており、恐らく出資比率=引取比率となっていると思われる。

このような製造合弁会社の場合、ある引取会社の引取不足による原価高を他の引取会社に影響させないよう、Take or Pay の形をとる場合が多い
実質的に、各電力会社が引取比率で分けた分工場を持つ形となる。

この意味では、通常のケースでは仮に引取電力量が前年の6%になっても、各電力会社が固定費分は100%支払うのはやむを得ないこととなる。 (電力会社にとっては、どの工場を止めるかだけの問題)

しかし、休止が長期間続く場合や再稼働が認められない場合は異常事態であり、負担をどうするかは日本原子力発電と株主電力会社の協議で決めることとなろう。

そして、仮に東電が負担するとしても、発電に寄与していないので、それを電気代に含めて需要家に求償することにはならない 筈である。

「東電の値上げのときに、さすがにこれを値上げに入れるのはおかしいだろうという議論が出たが、枝野経産大臣はすんなりと、お認めになった。」(上記)

 

「ごまめの歯ぎしり」の続き:

東京電力の原子力関係の費用のうち、固定費は3489億円。ほぼこれにちかい費用が、原発が全く動いていない2013年3月期にも費用に計上される。

そして東電は胸を張って、この費用をあなたに請求する。

原子力規制委員会が安全基準を作り直し、それに沿った審査が行われ、必要なバックフィットを実施していたら、まず当分は動かないだろう。

ということを認めれば、東電の持つ原子力関係設備は発電に寄与していないので、その維持にかかる費用は当然総括原価には盛りこまれない。

しかし、東電の計画には原発再稼働が盛りこまれているので、原発の維持コストも総括原価に盛りこまれ、あなたの電気代にそれを盛りこんで請求される。

なぜ、動かせないはずの柏崎刈羽を盛りこんだ計画が認められたかと言えば、やっぱり枝野大臣がお認めになったからだ。
(途中 略)
 




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