米国の発電会社のDominion は10月22日、ウイスコンシン州 Carltonにある556千kwのKewaunee 原発を2013年第2四半期に停止し、閉鎖すると発表した。
米原子力規制委員会が2011年2月に、2033年までの20年間の操業延長を承認したばかりであったが、電力販売価格の低下で採算に合わないと判断した。
停止後は電力供給先の2つの電力会社には、2013年12月の契約期限までは買電により供給を続ける。
米国には、Kewauneeを含め合計104基の原発があるが、閉鎖は1973年12月のコネティカット州のMillstone 1 原発以来となる。
エネルギー需要の伸び悩みと天然ガス価格低下により、中西部で古い石炭火力の廃止が続いているが、これが原発にまで及んできたとみられている。
Kewaunee原発は1974年の運転開始で、2005年7月に同社が購入した。Dominion は2011年4月に採算面から売却を決定、買い手を探していたが、買い手を探すことが出来なかった。
同社は「運転状況が良かっただけに苦渋の決断だった。純粋に経済性に基づく判断だ」とのコメントを発表した。
Kewaunee 発電所(下の地図参照)は556千kwという最大クラスの原発の半分の能力で、かつ同地には1基しかなく、通常2基でセットになっている他の原発と比較し、間接費が高いという問題がある。
同社では中西部でいくつかの原発を購入し、間接費を薄めようとしたが、うまくいかなかった。
また、同原発購入時に、売り手との間で電力の売買契約を結んだが、この契約が切れた。
中西部では電力供給は入札制となっており、シェールガスの普及で天然ガス発電のコストが下がっているため、 現在の市場価格である従来よりかなり安い価格で売るしかない状況となっている。
原発は運転開始後の経費は安いと言われてきた。だが、米国では、原発がコスト面での優位性を失いつつある。また、東京電力福島第一原発事故を受けてNRCが3月 に追加の安全対策を指示し、コスト増の要因になるとの見方もある。
New York Timesによれば、地域によっては売電平均価格は50$/Mwh以下となっているが、ある調査では原発全体の1/4の高コストグループのコストは2008-2010年で平均 51.42$となっており、現在は更に上がっているという。
業界団体のNuclear Energy Instituteでは、これはDominion特有の理由によるものであり、原発は依然として頼りとなる、コスト面で有利な電力であると述べ、閉鎖のショックを和らげようとしているが、New York Timesは、それでは何故、もっと有利な立場にある会社がこれを買いに来なかったのかと疑問を呈している。
General ElectricのCEOのJeff Immelt は、シェールガス革命で天然ガスが豊富に供給され、再生可能エネルギーの選択肢も増えたことから、原子力発電を正当化することは難しくなったとしている。
2012/7/31 原子力発電の正当化困難にーGE会長
米電力大手Exelonは8月28日、テキサス州Victoria
County Stationの原発申請を取り下げた。
同社は、シェールガスの増産で天然ガスが値下がりし、予想しうる将来にわたって競争力がなくなったと判断した。
2012/9/6 米電力大手Exelon、原子力発電所の申請を取り下げ
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Dominionはエネルギー会社で、主な事業は3つに分かれる。
1) Dominion Virginia Power:Virginia 州での電力供給
2) Dominion Energy:天然ガス輸送・販売
3) Dominion Generation:発電
・Utility Generation 上記 1) 用の発電 19,000MW
・Merchant Generation 売電用の発電 8,500MW
Utility Generationの発電所
原子力発電所 North Anna 2基 1,647MW Surry 2基 1,678MW
三菱重工業は2010年5月7日、DominionがNorth Anna発電所3号機向けに、三菱重工業の170万kW級加圧水型原子力発電プラントUS-APWRの採用を内定したと発表した。
Merchant Generation の発電所
原子力発電所 Kewaunee 556MW
Millstone 2 878MW Millstone 3 1,138MW
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