BPはJVの50%を譲渡し、現金171億ドルとRosneftの株式 12.84%
を取得する。
BPは同時に、ロシア政府からRosneft株式 5.66%を48億ドルで買収する。(BPはネットで123億ドルを受け取ることとなる。)
BPは既にRosneft株式 1.25%を保有しており、この取引で合計19.75%を保有することとなり、Rosneftの取締役会に2人の取締役を出す。
Rosneftにはロシア政府が75%出資し、残りは上場している。
他方、Alfa-Access-RenovaはJVの50%を280億ドルでRosneftに譲渡する。
覚書を締結した段階で、詳細は今後詰める。
付記
BPとAARは11月23日、両社の間の全ての争いを解決することで合意したと発表した。
両社ともTNK-BPのRosneft への売却を進める。
TNK-BPは Rosneft とLukoilに次ぐロシア第三位の石油会社で、これの買収により、Rosneftは生産能力日量450万バレルとなって、ExxonMobil(420万バレル)を抜き世界最大の石油会社となる。
TNK-BPは西シベリア(Tyumen、Khanty-Mansiysk、Yamal-Nenetsk、Novosibirsk 地域)、ヴォルガ・ウラル(Orenburg、Saratov地域)、東シベリア(Irkutsk 地域)で活動しており、2011年の生産量は石油換算で日量199万バレルであった。
Rosneftの2011年の生産量は245万バレルで、開発済み確認埋蔵量は原油換算99.6億バレル、未開発確認埋蔵慮は83.9億バレルとなっている。
BPは、これはロシアの石油事業からの撤退ではなく、むしろそれを進めるものだとしている。
Rosneft株式は長期的に保有し、大株主として同社の今後の成長を支えるとしている。
後記の通り、BPは2011年1月に、Rosneftとの間でグローバルな戦略的提携で合意した。但し、これはAARの反対で白紙となった。
Rosneft のCEO
は22日に本件をPutin大統領に報告、大統領は、これはロシアの石油産業にとってだけでなく、ロシア経済全体にとって重要な good big deal だと述べた。
付記 TNK-BPは以下の構成となっている。
RosneftはBP及びAARとTNK-BP International の株式購入の交渉をしている。
一般株主については、Rosneft は交渉する気はないとしており、見放された形になっている。
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TNK-BP の株主のAlfa Access Renova は下記の3社の連合。
Alfa Group ロシアの新興財閥で、ロシア最大の金融産業コングロマリットのひとつ。
Mikhail Fridman と German Khan が50%ずつ保有。Access Industries ロシア生まれの Len Blavatnik が設立し所有する米国の投資会社で、Basellを買収した。 Renova Holding ロシアの長者番付では第5位のViktor Feliksovich Vekselberg (SUALの大株主)のベンチャーキャピタル。
2003年、BPと Alfa Access Renova はロシアとウクライナにそれぞれが所有する石油資産を共同で所有する戦略的パートナーシップの設立を発表、50/50所有の TNK-BP が設立された。
Alfa Access Renova はTyumen Oil Co.(TNK)株の97%とSidanko株の56%を新会社に移管、
BPはSidanko株の25%、サハリン5の事業権益、モスクワのガソリンスタンドを新会社に移管した。
2004年1月、Alfa Access Renova の持つSlavneft の持分をJVに移管することが合意された。
これにより、TNK-BP はロシアとウクライナで上流部門から下流部門まで一貫操業を行ない、生産子会社15社、精製子会社5社(うちロシア国内は4社)、販売子会社11社を保有する。
埋蔵量及び生産量で、Rosneft とLukoil に次ぎ、ロシアで第三位となった。
しかし、CEOの任命権をBPが持ち、多くの経営幹部や技術者がBP出身であるなど、BP主導で運営してきた。
このため、ロシア側株主は、TNK-BPという会社がBPの利益ための会社であって、ロシアの為の会社でないという不満を持っていた。
そもそもロシア側には、双方の貢献面から、50/50が不公平との感があった。
BPは 2008年9月、TNK-BPの経営問題でロシア側株主に譲歩し、和解した。
2008/9/9 BP、ロシアの石油JV 経営問題でロシア側に譲歩
BPとロシアのRosneftは2011年1月、グローバルな戦略的提携で合意した。
Rosneft はBPの株式5%を購入、見返りにBPはRosneftの株式 9.5%を購入する。
(BPがRosneftに発行する株式の価値は現在の株価で約78億ドルになる。)
両社はロシアの北極海大陸棚にある3つの鉱区を共同で開発する。
2011/1/17 BP、ロシアのRosneft と戦略的提携
しかし、TNK-BPの株主のAlfa Access Renovaを構成する4人の新興財閥が、BPとRosneftとの取引がTNK-BPを除外しているのは、BPとTNK-BPの株主契約に違反するとして反対し、ロンドンの高等法院に訴えた。
裁判所は調停での問題解決を命じた。
2011/8/31 BPとTNK-BPの争い、仲裁へ
調停委員会は2011年5月1日、下記の決定を下した。
・TNK-BPは Rosneft
の同意を前提に、北極海開発に参加する。
・これを条件に、BPとRosneftの株交換を認める。
これに対しRosneft はTNK-BPの北極大陸棚での事業参加には難色を示した。
このため、AARの持ち株をBPと Rosneftが買い取る交渉が進められたが、AARは拒否し、この結果、BPとRosneftの契約は5月16日に時間切れで白紙となった。
2011/5/18 BPとRosneft との提携、白紙に
この後、Rosneftは2011年8月30日にExxonMobilとの間で北極海と黒海の開発、技術協力、米国その他での共同事業の実施で合意した。
2011/9/1 Rosneft、石油開発でExxonMobil と提携
この直後には、TNK-BPのロシアの少数株主のAndrei Prokhorovが TNK-BPの役員でもあるBPの役員を、Rosneftの交渉を知っていたに違いないとし、この情報をTNK-BPに伝えなかったために、TNK-BPが北極海開発の機会を失い、約870億ルーブル(約2,970百万ドル)の損害を被ったとし、訴えるということもあった。
BPはこれらに嫌気を示し、JVからの離脱を検討した。
BPは2012年7月に、Rosneft との間でTNK-BP持分の売却の交渉を行うとし、TNK-BPの契約に基づき、7月19日にAlfa Access-Renovaとも売却交渉を開始したことを明らかにした。
AARはBPに対し、BP持株の半分(25%)を100億ドルで購入するという提案を行ったとされる。
しかし、BPにとっては25%を残しても意味がなく、また25%分で100億ドルは少くな過ぎ、成立しなかった。
AARは実際には、BPにTNK-BP の持株を買ってもらい、代わりにBPの株式を10%程度取得するのが狙いであったとされる。
しかし、BPはAARがトップ株主になるのを好まなかった。また、Rosneft側が金融機関に圧力をかけ、AARは買収資金を得られずギブアップしたともされる。
問題は、TNK-BPの株を買いたいという会社が少ないことで、西側の石油メジャーは関与するのを嫌った。中国の石油会社は政治的に問題であり、結局、買収資金を持つRosneftが残ることとなった。
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