2011年9月に倒産した米国の太陽電池メーカーのSolyndra は10月12日、中国太陽電池企業の尚徳電力(Suntech Power)、天合光能(Trina Solar)、英利緑色能源(Yingli Green Energy)の3社を相手取り、独禁法違反を理由に15億ドルの賠償を求め、 San Franciscoの連邦裁判所に訴えた。
被告らは定期的に会合を開いて共謀し、太陽電池パネルをコストを下回る価格で米国市場にあふれさせ、同社を破産に追いやったとしている。
3社の米国価格は4年で75%も低下したとしている。
Suntechでは、Solyndraが競争力ある価格で製品化できなかった失敗の スケープゴートを求めるもので、根拠はなく、徹底的に争うとしている。
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Solyndraはかつて米国のエネルギー革新のモデル企業とされ、2009年に環境・エネルギー分野で雇用創出を目指すオバマ大統領の「Green New Deal」政策の一環として535百万ドルの融資保証を受け、2011年5月にはObama大統領も訪問した。
Solyndraの製品は、ビルや商業施設に設置する円筒状の太陽光パネルで、直射日光だけではなく散乱光・反射光もすべて捉え、風や光を通すことが最大の特徴だった。
光吸収層の材料として、シリコンの代わりに、銅(Cu)、インジウム(In)、
ガリウム(Ga)、セレン(Se)などを用いた CIGS型太陽電池である。
しかし、同社は2011年9月6日に破産法(Chapter
11)を申請した。
同社の役員は、「低価格の中国製太陽電池が大量に米国に流れ込み、当社は2008年に発表した取引総額が12億ドルに達する契約を履行できなかった」と
述べた。
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米国商務省は10月10日、中国製の太陽電池およびモジュールにダンピングおよび補助金の行為が存在するとする最終判決を下した。
2012/10/13 米国商務省、中国製太陽電池のダンピングを最終認定
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10月15日付のForbesには、この訴訟は"Entire Nonsense"であるという投稿が載っている。
共謀はあったかも知れないし、中国政府の支援を受けているかも知れない。Solyndraが米政府の支援を受けていたように。
Solyndraの例の通り、米国の企業も融資保証などを受けている。
本年6月28日には米太陽光発電パネルメーカーのAbound Solarが米連邦破産法の適用を申請する方針を発表したが、同社も「Green New Deal」政策の一環として、米エネルギー省から受けた4億ドルの融資保証枠のうち7000万ドルを利用していた。
しかし、Solyndraの倒産はそのためではなく、技術面でSolyndraのとった選択によるものだ。
選択が誤りであったというのではなく、「結果論」(シリコン価格が下がったことによる)。
Wall Street Journalも同じことを述べている。
2008年頃に太陽発電用シリコンは供給不足で、価格が高く、この結果中国製パネルの価格も高かった。
Solyndraはシリコンを使わないCIGS型に賭け、高価な工場を建設した。しかしその後の4年で、新しいポリシリコン製造工場への投資が増え、価格はkg当たり400ドルから20ドルにまで下がった。
この結果、シリコンを使った中国製のパネルの価格が下落した。
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Solyndraの破産法申請直後に、FBIは会計上の不正行為の疑いなどで同社を捜査した。
これについては米議会でも問題となり、最初から収益を上げる見込みのない同社に多額の融資をした政府の責任を追求するべく、裁判所からホワイトハウスに関係書類提出令状を発令させた。
しかしオバマ政権は、これは政治目的によるもので、実際の捜査とは関係ないので協力するつもりはないと全面的に拒絶した。
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Solyndraはこのたび、裁判所に対し、破産から離脱するための再建策を申請した。
再建策では、Solyndra自体は清算し、親会社の360 Degree Solar Holdingsが存続することとなっている。
政府は貸付金142.8百万ドルの19%程度を回収できるが、残りの債務保証からの債権の385百万ドルについてはほとんど回収できない。
政府はこれに反対している。
投票権のある債権者のうち、再建策に反対しているのは政府だけとされる。
一方、税務当局(Internal Revenue Service)は再建策の目的は租税回避にあるとして、これを認めないよう主張している。
親会社には975百万ドルの税務上の損失が引き継がれ、この結果、親会社のオーナーであるArgonaut Ventures I LLC とMadrone Partners LP は300百万ドル以上の税金を免れることとなる。
Delaware破産裁判所は10月17日に再建策について5時間にわたり、双方の証言を聞いた。
10月22日に最終弁論を行う。
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これとは別に、米リチウムイオン電池メーカーのA123 Systems, Inc は10月16日、破産法11条の適用を申請した。
同時に、自動車関連の技術、製品、ミシガン州にある2工場、中国のcathode powder製造工場、上海汽車とのJVのShanghai Advanced Traction Battery Systemsの持分などを、自動車部品メーカーのJohnson Controls, Inc.に1億2500万ドルで売却することで合意したことを明らかにした。
Johnson ControlsはA123の破産法申請後の運営資金(debtor in possession financing)として7250万ドルの資金を援助する。
破産法11条の申請は、この売却をスムースに進めるためとしている。
(破産法363条では、通常の商行為をこえる財産の処分は、裁判所の許可なければできない →
許可があれば出来る。)
A123 Systems は8月16日、中国の万向集団(Wanxiang Group Corporation)が、A123 Systemsの株式の過半数を、465百万ドルで取得する契約を結んだと発表した。最終的に万向集団は、A123 Systemsの株式を80%まで買い進める計画であった。
しかし、A123はこの取引が中止になったと発表した。
取引の条件の米国の外国投資委員会(CFIUS)の承認が得られなかった。 軍事用の先進的なバッテリー開発計画がある。
また、議会からも、税金で開発した重要な知的財産を外国に売り渡すのかとの批判が相次いだ。
同社は、オバマ政権が打ち出したGreen
New Deal 政策を通じ、2億4900万ドルの助成金を受けていた。
同支援プログラムを受けていた企業で破綻した企業に提供された支援額は少なくとも8億1300万ドルに上り、大統領選で問題となっている。
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