関西電力、BPシンガポールとLNG購入契約に関する基本合意書

| コメント(0) | トラックバック(0)


関西電力は11月19日、BPシンガポールとの間でLNG購入契約に関する基本合意書を締結したと発表した。

2017年度から15年間、年間約50万トンのLNGをBPシンガポールから購入するもので、原油価格ではなく、天然ガス価格を指標価格とする。

また、従来のようにLNG供給源を特定したものではなく、BPグループがトリニダード・トバゴやエジプトを始め、世界各地に保有する複数のLNG供給源から、BPシンガポールを通じてLNG供給を受けるポートフォリオ契約となっている。

LNG基本合意書の概要

売主 BPシンガポール
買主 関西電力
受渡開始 2017年4月
契約期間 15年間
契約数量 年間約50万トン(合計約750万トン)
受渡形態 Ex-ship(売主がLNG船を手配し輸送)

契約数量は2011年度の同社の年間輸入量の約7%に相当する。現時点で関電が保有するLNG火力発電所全16基の燃料として使用する。

ーーー

原油価格ではなく、天然ガス価格を指標価格とするのは2件目。

大阪ガスと中部電力は7月31日、米国のFreeport LNG Development との間で、天然ガス液化加工契約に関する契約を締結した。

Freeport LNGはFreeport LNG受入基地に、液化設備を新たに3系列(1系列あたり年間約440万トン)を建設することを計画しており、2017年に液化事業を開始することを目指している。

大阪ガスと中部電力は、同基地の第1系列の液化設備においてそれぞれ年間約220万トンずつの天然ガス液化能力を確保した。
これにより、シェールガスをはじめとした米国産天然ガスを自ら手当し、 同基地での液化を経て、LNGとして調達することが可能となる。

米国は現在、LNG輸出を自由貿易協定(FTA)締結国向けに限定しており、Freeport LNGは日本などFTA未締結国向け輸出許可を申請中。

但し、米国の日本向け輸出許可の取得は簡単ではない。

DowのAndrew Liveris CEOは、貴重な資源をそのまま輸出するのではなく、加工して付加価値をつけて輸出すべきと主張している。

また、米国にとっては戦略資源であり、中国に輸出する考えはなく、中国への輸出を避けるためにはFTA締結国に限定するというのは良い案ということになる。

2012/2/24 米国からのLNG輸入問題 

大阪ガスは2012年6月22日、米国テキサス州のPearsall Shale ガス・オイル開発プロジェクトに参画することを決め、Cabot Oil & Gas Corporationとの間で、権益35%を250百万米ドルで取得すること等を定めた権益売買契約を締結した。

所在地:米国テキサス州南部(イーグルフォード地区)
参加者:Cabot 65%(オペレーター)、大阪ガス 35%
開発対象:ピアソール層
主な産出資源:天然ガス、軽質原油、NGL

Freeport LNGがFTA未締結国向け輸出許可を 取得できれば、自社枠の天然ガスをLNGにして輸入することも可能となる。

両社は、米国産LNGの調達を通じて、供給ソースの分散化および調達方法の多様化を図るとともに、引き続き安定的かつ経済的な原燃料の調達を目指すとしている。

ーーー

LNG価格は、LNGプロジェクト毎に売主・買主間の引き取り契約交渉で決定される。

日本・韓国・台湾等の極東地域では主力燃料である輸入原油価格にリンクするフォーミュラで形成される。

極東向けLNG価格は現在、原油価格をJapan Crude Cocktail(全日本輸入原油平均CIF価格)を指標とし、これに傾き係数、フレート、環境プレミアム要素等を加味した定額を加えた基本フォーミュラが主流となっている。

現時点での価格は100万BTU(英国熱量単位)あたり約17ドルに達する。

日本は当初、LNGを原油の代替品として使用した。このため、価格は原油価格にリンクした。

これに対し米国では、天然ガスは原油とは別物として扱われ、天然ガスの価格はその需給で決められる。

従来は、原油100ドル/bbl天然ガス10ドル/100万BTUであったが、米国の天然ガス市況はシェールガス増加で大幅に下がった

天然ガス価格は一時2ドル近辺まで下がっていたが、値下がりにより発電燃料が石炭からガスへの移行が進み、本年9月下旬には3ドル台に定着した。11月20日には先物価格が一時3.83ドルをつけている。

Cheniere Energy がルイジアナ州Sabine PassのLNG受入基地に天然ガスのLNG化設備を建設しており、2016年から輸出を行う予定で、既に韓国の韓国ガス公社(Kogas)等と売買契約を締結済である。

それによるとLNGのFOB価格は、原料ガスコスト(「Henry Hub」x 115%)+固定費(ガス化費用など)。
15%は天然ガスのトレーダーとしてのマージン で、固定費はKogas向けが
百万BTU 当たり3ドルとなっている
天然ガス価格を3ドルとすると、LNG価格はF0Bで6.45ドルとなる。

「Henry hub」はSabine Pipe Line LLC.が所有するルイジアナ州Erathの天然ガスパイプラインのハブにおける取引価格。

ちなみに、WTI原油の市場取引の大部分は売買差額のみの決済で、現物の受け渡しはほとんど発生しないが、現物はオクラホマ州Cushingにある貯蔵庫のみで受渡がされることとなっている。

今回の関電の契約は、米国の主要な天然ガス指標価格である「Henry Hub」を用いる。

日本向けLNG運賃は以下の通りで、米国Gulf Coastの場合、約3ドル。

  Kirimat(カナダ西海岸)   1.24 $/百万BTU 
  US Gulf Coast        2.96  
  Cove Point(東海岸)   3.07  
         
  Gordon(豪)   1.17  
  Gladstone(豪)   1.21  
  Ichthys(豪)   1.23  
    資料:Platts LNG Forum, Tokyo 2012/9/25  

関電の契約では、液化や輸送のコストを加えても12ドル前後で済むとみられ、現在の原油価格ベースの約17ドルと比べ、大幅な値下がりとなる。     

上記のCheniere Energy の韓国の韓国ガス公社(Kogas)の例では 、天然ガスが3ドルの場合、CIF価格は10ドル以下となる。

ーーー

政府は本年9月20日、LNGの消費国と産出国が集まる「LNG産消会議」を開催した。

枝野経産相は、シェールガスの生産やロシアやアフリカといった新たな供給源の参入などで大きな変化が起きており、原油価格に連動する方式の「合理性は薄れてきている」と強調し、現在の価格水準だと、「アジアの国々では、石炭や原子力の利用を増やさざるを得ない」と生産国関係者をけん制した。

参加国は、主要輸入国で割高となっているLNG購入価格の決定方式の見直しが必要との認識で大筋合意した。

 

 

 


トラックバック(0)

トラックバックURL: https://blog.knak.jp/knak-mt/mt-tb.cgi/2009

コメントする

月別 アーカイブ