塩野義製薬、HIV治療薬JVの枠組み変更

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塩野義製薬は10月29日、HIV治療薬JVの枠組み変更を発表した。

同社はViiV Healthcare との50/50JVのShionogi-ViiV HealthcareでHIVインテグレース阻害薬ドルテグラビル(Dolutegravir)の開発を行っている。

HIV治療薬には、
・核酸系逆転写酵素阻害剤、非核酸型逆転写酵素阻害剤(いずれもウイルスのRNAをDNAに変える逆転写酵素を阻害)、
・プロテアーゼ阻害剤(ウイルスのタンパク質を作る過程を阻害)、
・インテグラーゼ阻害剤
(インテグラーゼの動きを止め、ウイルスDNAがヒトDNAに侵入することを防止)、
・CCR5阻害剤(HIVとCCR5受容体との結合を邪魔する)
などがあり、それぞれ作用が異なる。

既存のインテグレース阻害薬は、ウイルスの耐性化や1日2回投与またはブースター(薬剤を代謝する酵素を阻害する薬剤)が必要という服用の煩雑さ等があるが、ドルテグラビルは、1日1回投与でブースターが不要、優れた耐性プロファイルを示すなど、次世代のインテグレース阻害薬とされる。

非核酸系逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、およびインテグラーゼ阻害剤を含む3剤以上を用いる多剤併用療法は、強いウイルス増殖抑制効果を示す。

今回、同社のJVの50%持分をViiV Healthcareに譲渡し見返りにViiV Healthcareの10%の権利を取得する。
塩野義は、
知的財産の権利(50%持分)は継続して保持し、ViiV に供与、ドルテグラビル及び関連製品の販売高に応じ、平均10%台後半、一部地域では20%台前半のロイヤリティーを得る。

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塩野義は2001年9月に、GlaxoSmithKline plc.(GSK)との間で、両社の所有する複数の疾患領域における開発化合物を開発・販売することを目的とした合弁会社Shionogi-GSK Healthcare を設立した。

2002年8月に、両社はこのJVでHIV インテグレース阻害薬に関する共同研究を開始した。

塩野義は海外拠点獲得を視野に入れており、JVのGSK持分全部を買い取るオプションを持った。

契約では、米国とEU5か国ではJVが、日本と台湾では塩野義が、その他地域ではGSK製品を販売することとなっていた。

2009年10月に、GSKとPfizerは両社のHIV 治療薬を供出し、英国にViiV Healthcareを設立した。(GSK:85%、Pfizer:15%)
GSKはShionogi-GSKHealthcareの持分をViiVに譲渡し、名称をShionogi-ViiV Healthcareと改称した。

今回の枠組み変更の理由は以下の通り。

① 今後のHIV 治療では複数のメカニズムを持つ配合剤が主となることが予想される。
 インテグレース阻害薬のみをアセットとするJV では、配合相手の選択等において複雑な取扱いが必要となる。

② 塩野義はその後Scieleを買収したため、このJVを米国販売拠点とする必要がなくなった。

塩野義製薬は2008年10月、米ナスダック上場の中堅製薬会社Sciele Pharmaを総額で14億2400万ドルを投じ、完全子会社にした。
2010年1月11日付けで、Shionogi Pharma, Inc. に改称、その後米国の他の子会社と統合し
Shionogi Inc.となった。

③ 米国子会社のShionogi Inc.の販売はプライマリケア領域がメインであり、高度な専門性が要求されるHIV 治療薬とは販売形態が違う。


2012年中にドルテグラビルの新薬承認申請を行う予定であるため、今回の決定となった。

塩野義製薬の狙いは以下の通り。

ViiVの経営に参画し、ドルテグラビル及び関連製品の価値最大化に引き続き貢献し、ロイヤリティー収入の最大化を図る

ViiVの所有する他のHIV薬のアセットからも10%株主として、配当を得る

開発にかけていたR&Dリソースを他の自社開発品に振り分けることが可能
 将来の成長ドライバーとなる自社製品の研究開発を加速

ViiVの業績は次の通り。

  2010年12月期 2011年12月期
売上高 1,566 百万ポンド 1,569 百万ポンド
営業利益 851 百万ポンド 824 百万ポンド

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塩野義によると、世界のHIV市場の状況は以下の通り。

グローバルでの販売高は、今後も年1-2%成長し、2017年には約200億ドルに達すると期待されている。
  Gilead Sciences(76億ドル)、ViiV Healthcare(24億ドル)、Bristol-Myers Squibb(18億ドル)の3社で約70%のシェアを占める。

・ ViiVは、HIV薬として、Epzicom(10億ドル)、Combivir(5億ドル)をグローバルに販売。

その他のHIVにおける主要製品としては、Atripla、Truvada(Gilead)、Reyataz(BMS)、Isentress(Merck)などがある。
 今後、ドルテグラビル(ViiV)、Stribild(Gilead)の販売開始、現行品の特許切れで、主要製品の変化が予想される。

・ 今後のHIV市場においては、配合剤が市場全体の半分以上を占めると予想される。




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