JX日鉱日石エネルギーは11月2日、室蘭製油所 での原油処理(日量18万バレル)を2014年3月末で停止すると発表した。
同社は、現行中期経営計画における基本戦略のひとつとして、内需減退に先んじた国内トップの競争力を備えた製油所体制を構築すべく、精製能力の削減に取り組んで
いるが、更なる競争力強化に向けて、様々な観点から総合的に検討した結果、決断したとしている。
同製油所では新たに設備投資を実施のうえ、二次装置を活用して、SKグループと合弁で韓国に新設するパラキシレン製造設備用の原料となるアロマ基材等の製造・輸出を行う。キュメンも引き続き製造する。
参考 2011/8/9 JXエネルギーとSKグループ、韓国でパラキシレンと潤滑油ベースオイル製造のJV設立
また、石油製品の物流拠点としての油槽所機能は存続し、引き続き北海道地区への灯油をはじめとする石油製品の安定供給に向け、万全の体制を確保 する。
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経済産業省は2010年7月、エネルギー供給構造高度化法の基本方針の一つに重質油分解能力の向上を挙げ、重質油分解装置の装備率の目標を決めて、業者に対して重質油分解装置の新設若しくは増設又は常圧蒸留装置の削減により適切に対応することを求めた。
実際には重質油分解装置の新設はあり得ず、常圧蒸留装置の削減を求めるものである。
本ブログは重質油分解能力の向上はよいが、それを強制するのはおかしく、実質的に国による設備カルテルであるとして批判した。
2010/7/7 エネルギー供給構造高度化法で重質油利用促す新基準、石油業界の再編圧力に
2010/7/21 エネルギー供給構造高度化法は第二の産構法か?
石油精製各社は、「エネルギー供給構造高度化法」による重質油分解装置の装備率の新基準について2010年10月末に経済産業省に計画を提出したが、その内容は非開示であるという。
その後、各社は順次、常圧蒸留装置の削減計画を発表している。
2012/8/30 エネルギー供給構造高度化法、進展
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JX日鉱日石エネルギーの今回の室蘭製油所の原油処理停止はこの一環。
同社の当初のトッパー処理能力は1,792千バレルで、METIによる能力削減義務量は414千バレルである。
同社はこれまでも能力削減計画を発表してきたが、今回で義務量を達成する。
原油処理能力(千バレル) 008/12 2014/3 削減量 室蘭製油所 180 0 -180 今回発表 仙台製油所 145 145 - 根岸製油所 340 270 -70 2010/10 第2トッパー廃止 大阪製油所 115 0 -115 大阪国際石油精製に移管
PetroChinaとのJV化水島製油所 455 345 -110 2010/6 A工場第2ストッパー廃止 麻里布製油所 127 127 - 大分製油所 160 136 -24 2010/5 第1トッパー廃止 鹿島石油 210 189 -21 2010/5 第1トッパー能力削減 日本海石油 60 0 -60 2009/3 原油処理停止 合計 1,792 1,212 -580
METIによる各社別の削減義務量と現時点での削減計画は以下の通り。(万bbl/d)
トッパー 処理能力 |
改善達成 のための トッパー 能力 |
トッパー 能力削減 義務量 |
トッパー能力削減計画 | ||
昭和シェル石油グループ | 51.5 | 44.8 | 6.7 | 12.0 | 京浜・扇町 2011/9停止 |
JXグループ | 179.22 | 137.9 | 41.4 | 58.0 | 上記 |
出光興産 | 64.0 | 55.7 | 8.3 | 12.0 | 徳山製油所 2014/3停止 |
コスモ石油 | 63.5 | 43.8 | 19.7 | 14.0 | 坂出製油所 2013/7閉鎖 |
東燃ゼネラル石油 | 66.1 | 45.6 | 20.5 | ||
太陽石油 | 12.0 | 10.4 | 1.6 | ||
富士石油 | 19.2 | 14.8 | 4.4 | 5.2 | 第1常圧蒸留装置 2010/11廃棄 |
極東石油工業 | 17.5 | 15.2 | 2.3 | ||
合計 | 473.02 | 368.2 | 104.9 | 101.2 |
問題は東燃ゼネラル石油である。削減義務量は20.5万バレルとなっている。
トッパー
処理能力川崎 33.5 堺 15.6 和歌山 17.0 合計 66.1
堺も和歌山も存在意義があり、仮にどちらかを止めても、まだ不足する。
和歌山県知事は県議会で、「東燃ゼネラル石油和歌山工場は、本県の製造品出荷額ベースで約20%、有田市においては90%、さらに製造業だけじゃなくて周辺の経済に及ぼす影響などを考えますと、大変高い割合で有田市の経済、それから県の経済に貢献をしているというか、影響を及ぼす存在であるということだと思っております」と述べ、和歌山工場の廃止に対し反対している。
東燃ゼネラルは「株主の皆さまへ」で以下の通り述べている。
当社は、(METIの)この指針に対応するためさまざまな可能性について徹底的に検証しました。
2010年10月末に提出した計画には、常圧蒸留装置の削減および重質油分解装置の能力増強も含んだ複数のケースが盛り込まれています。
2014 年3月31日の期日までに約3年あることから、今後も厳密な検討を続け、従業員、地域社会、顧客および株主の皆さまにとってどのような影響があるのかを十分に考慮した上で判断したいと考えています。
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