日立製作所は10月30日、英国で原子力発電所の建設を計画している原発事業会社Horizon
Nuclear Power の全株式を、同社株主のドイツのエネルギー会社
No.1のE.ON及びNo.2のRWEから買収する契約を締結した。
買収額は6億7000万ポンド(約850億円)。
合わせて、建設プロジェクトの計画・推進に向け、英国で原子力業界有数のBabcock International、Rolls Royce、カナダの建設エンジニアリング会社SNC-Lavalin と協力覚書を締結した。
Horizonが保有する北ウエールズのAnglesey島のWylfaとSouth
GloucestershireのOldburyの2カ所で、1,300メガワット級の原子力発電設備をそれぞれ2~3基建設する予定で、最初の発電所は2020年代前半の運転開始を目指す。
同社が世界で唯一運転実績(浜岡原発5号機など)を持つ第三世代原子炉である改良型沸騰水型原子炉(ABWR)技術を用いる。
日立とGEのJVのGE Hitachi Nuclear Energyが高経済性・単純化沸騰水型原子炉(ESBWR:Economic Simplified Boiling Water Reactor)の設計認証を申請中だが、実績を優先した。
日立はグループの日立GE ニュークリア・エナジー、GE Hitachi Nuclear Energy、およびGE・日立 ・東芝3社による合弁会社Global Nuclear Fuelはもとより、世界中の原子力関連企業と協力体制を築き、新規建設プロジェクトを推進する。
日立は2012年6月にリトアニアから原発の受注に成功したが、国民投票や議会選挙の結果、最終決定が見送られる恐れがある。(下記)
日本での新設も難しくなった。
同社では、「原発を建設する場所がどうしても欲しかった」としている。
今後、原発運営のノウハウを持つ電力会社などの出資を募り、日立の出資比率を引き下げる。
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Horizonは2009年1月にドイツのエネルギー会社 No.1のE.ONとNo.2のRWEとが50/50で設立、2015年までに英国で150億英ポンドを投じて原発4〜6基(最大660万KW)を建設する計画であった。
既に北ウエールズのAnglesey島のWylfaとSouth
GloucestershireのOldburyに建設用地を取得しているが、
株主の両社が今年3月、売却を表明した。
両社は経済危機による両社の資金繰り悪化とともに、福島事故に伴うドイツ政府の脱原発の影響を理由に挙げた。
英国のエネルギー相は、両社の撤退は残念だが、両社とも撤退は両社の事情によるもので、英国の原発の将来については疑いも持っておらず、他社が関心を寄せており、事業は継続するとした。
Horizonには次の各社が名乗りをあげた。
・フランスのAreva / 中国広東核電集団公司 (China Guangdong Nuclear Power Group:CGNPC)
・Westinghouse(東芝)/ 中国核工業集団公司 (China National Nuclear Power Corporation)
1999年にWestinghouseの電力システム部門はSiemensに売却され、原子力部門は英国核燃料会社(BNFL)に売却されたが、後者の原子力部門がWestinghouse Electric の社名を継承した。
2006年に東芝は Shaw Groupと組んで、Westinghouseを54億ドルで買収した。
東芝 77%、Shaw 20%、IHI 3%。東芝はその後、カザフスタンのKazatompromに持分10%を売却した。
2011年9月、東芝はThe Shaw Group 保有の株式(20%)を取得し、持株比率を87%にすると発表した。
東芝 87%、Kazatomprom 10%、IHI 3%
・日立製作所 / SNC-Lavalin (カナダ)
日立製作所は原発事業でGEと提携している。
しかし、Areva
/ CGNPCは10月3日、本計画からの撤退を発表した。
また、Westinghouse(東芝)と組む中国核工業集団公司
も撤退の意向を示している。
中国陣の撤退は経済的な理由が中心とはされるが、英国の政界にはこの分野への中国の進出を懸念する意見も強い。
この結果、日立とWestinghouse(東芝)が残ったが、Westinghouse(東芝)は日立を上回る額の応札を見送った模様。
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英国では19基の原発が稼働している。
2009年11月、英国政府は原発拡大策を発表した。
「これはエネルギー安全保障のためにも必要だ。北海の原油埋蔵量は減少しており、多様化した、低カーボンの、燃料供給量の変動に左右されないエネルギーミックスが求められる 」としている。
10か所に原発を新設し、2025年までに全電力の25%を原発で賄う計画(当時は全電力の13%)。
新設立地は下表の◎印のもの。
Horizonはこのうち、OldburyとWylfaを選び、土地を買収した。
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なお、新規計画参加者のうち、Scottish Powerを所有するスペインのIberdrolaが、Sellafieldでの原発新設を計画するコンソーシアムから離脱を考えているとの報道がある。
さらにフランスのEDF が Arevaと共同でHinkley Pointに原発を新設する計画を持つが、事前設計認可取得に必要な包括的設計評価書作成に難航しているとの報道もある。
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日立製作所は2012年6月、リトアニアから原発の受注に成功した。
日立は同国北東部に建設予定のVisaginas原発計画について、130万キロワット級の改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を提案し、入札を経て2011年12月に仮合意を結んだ。
2012年6月21日にリトアニアの議会が建設事業権について、日立製作所と契約することを賛成多数で承認した。
リトアニアはソ連時代にIgnalina原発が稼働し、独立後も国内電力の7割以上をまかなっていたが、Chernobyl 原発と同型のため、EU加盟の条件として2009年末に完全閉鎖した。
代替措置として、ラトビア、エストニアと共同で隣接地に新たにVisaginas原発を建設するもの。
日立として初の海外受注案件で、同原発に出資するラトビア、エストニアからの合意を得た後、正式に契約する予定であった。
しかし、10月14日に原発建設の是非を問う国民投票が行われ、 反対票が約63%に達した。投票率は52%で、選管は投票を有効と判断した。投票結果に拘束力はない。
投票結果を受け、グリバウスカイテ大統領は「新政権は国民の考えを注意深く踏まえなければならない」との声明を出した。
更にリトアニアでは10月28日に議会選の決選投票が行われ、原発建設に慎重な野党3党が過半数を確保した。
Visaginas原発の建設計画の最終決定は、先送りされる公算が大きい。
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