韓国のHanwha Groupに買収されたQ.Cellsは、中国メーカーなどとの価格競争が激化し、赤字体質に陥っていたが、倒産のきっかけの一つがドイツのRenewable Energy Actの改正で、4月1日から太陽光発電の買取価格(Feed-in-tariff)の大幅引き下げが実施された。
2000年に当時のシュレーダー首相率いる社会民主党と緑の党の連立政権は再生可能エネルギーの普及のため、太陽光や風力などで発電した電力を20年にわたり、地域の電力会社が固定価格で買い取る仕組みを導入した。
これにより太陽光発電は急速に拡大し、設備容量で世界一になった。
(太陽光発電はドイツの全発電容量の14.9%を占めるが、発電電力量では3.3%にしかならない。)
買取価格は電気料金に上乗せされるため消費者負担が政府の予想を超えて膨らんだ。
電力消費者が支払う再生可能エネルギー法上乗せ金は、2012年は140億ユーロ以上となっている。
2013年には、これが約200億ユーロに達する。
このため、4月1日以降の設置分について買取価格を引き下げ、太陽光発電の普及を事実上抑制する形に方針転換した。
(設置時の買取価格はその後も維持される)
屋根設置型の買取価格(ユーロセント/kWh)
2012/1/1 2012/4/1 ~10kW 24.43 19.50 発電量の80%分のみ支払 ~30kW 16.50 発電量の90%分のみ支払 30~100kW 23.23 100~1000kW 21.98 1000kW~ 18.33
13.50 10MW以上 不適用(一定の猶予期間あり)
買取価格適用外の電力は市場実勢価格の月平均値で買い取る。
新価格は2012年4月1日に遡って適用され、2014年1月まで有効。
これらの買取価格は7月から15ヶ月に渡って毎月1%ずつ削減され、2014年から1年単位の買取価格の削減が行われる予定。
ドイツ連邦経済省は2012年10月、ドイツ国内の電力系統運用者4社から報告を受け、再生可能エネルギー法にかかる2013年以降の上乗せ金が1キロワット時につき3.592セントから5.277セントに増額となることを公表した。
平均的な一般家庭(3人家族で年間3500kwh)の場合、電気代の増額分は付加価値税(19%)を加えると年間で7400円となる。 (5.277-3.592)ユーロセント x 1.19 x 3500=70.2ユーロ≒7400円
ドイツの家庭用電気料金とそのうちの再エネ法賦課金の推移は以下の通り。
2013年の平均的な一般家庭の電気代(予想)は、年間 102千円で、うち再エネ法賦課金は付加価値税込みで年間 23千円となる。
2013年は予想。発電・送電・配電コストは2012年分をそのまま適用し、再エネ法賦課金は上記を適用。
ユーロセント/kWh
2011 2012 2013
予想発電・送電・配電 13.80 14.05 14.05 公道使用料 1.79 1.79 1.79 19条賦課金 0.03 0.15 0.15 電力税(環境税) 2.05 2.05 2.05 再エネ法賦課金 3.53 3.592 5.277 (小計) (21.20) (21.63) (23.32) VAT(19%) 4.03 4.11 4.43 家庭用 合計 25.23 25.74 27.75
詳細は
国際環境経済研究所(IEEI)
ドイツの電力事情―理想像か虚像か― ①、②、③
http://ieei.or.jp/2012/07/expl120711/
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日本では、再生可能エネルギーの普及・拡大を目的に、2012年7月1日から「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が始まった。
2012/4/26 自然エネルギー買取価格
2012年度の育エネ負担金の単価は、例えば東京電力管内で、月々の電気の使用量が300 kWhの標準家庭では、
- 再生可能エネルギー賦課金:電気の使用量300 kWh/月×0.22円/kWh=月額66円
- 太陽光発電促進付加金:電気の使用量300 kWh/月×0.06円/kWh=月額18円
となり、育エネ負担金は月額84円となる。
ソース 政府広報オンライン
ドイツの場合もスタート時は0.2セント/kwhで、平均的な一般家庭(3人家族で年間3500kwh)の場合は、(現在のレートで付加価値税込みで)月額70円程度であった。
新規設置の買取価格は当初の50.6セントから20セント以下に下がっているが、買取電力量の急増により、2013年ベースでは月額1900円程度にまで増大している。
日本でも、やり方を間違うと、家庭の負担が急増する可能性がある。
上記のIEEIの資料では、
「ドイツの全発電容量の14.9%を占める太陽光発電も、発電電力量では3.3%にしかならない。この3.3%の発電電力量をまかなうために投じた費用との見合いが問題」、とし、
「再生エネとバックアップ電源の二重の設備投資を社会全体で負担せざるを得ないものであることは、認識しなければならないないだろう」としている。
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