スターバックスの移転価格税制問題

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英国のStarbucks は12月6日、2013~2014年に利益があるかどうかに関係なく、「法の求めを超えて」、かなりの額の法人税を支払うことで英当局と合意したことを明らかにした。
同社の計算では2年で2千万ポンド(約26億円)程度という。

この問題は、10月15日付でロイターが「Special Report: How Starbucks avoids UK taxes」で以下の通り報じたことから起こった。

Starbucksは投資家に対しては英国で儲かっているとしているが、継続して赤字決算となっている。
これは租税回避による。

同社は1998年に英国進出して以来、30英億ポンド(3900億円)以上の売り上げがあり、735店を持つが、この間15年間で一度だけ法人税を860万ポンド(11億円)支払っただけである。
この3年以上にわたり、同社は英国で13億英ポンドの売り上げがありながら、赤字の報告で、法人税を一切払っていない。

一方、McDonald'sは英国での36億英ポンドの売り上げで8千万英ポンド以上の法人税を払っている。
Kentucky Fried Chickenも11億英ポンドの売り上げで3600万英ポンドの税金を払っている。

Starbucksはこの12年にわたり、投資家への報告では英国事業は儲かっているとしている。
2011年のannual reportでは、「特にカナダ、日本、英国、中国が海外事業の売上高と収益の大きな部分を占めている」としている。

これが英国の議会で大問題となり、国民の間でStarbucksのボイコット運動が広がった。

議会の委員会は、Starbucks、Google、Amazonのようなグローバル企業が、英国で多くの売り上げがありながら、ほとんど法人税を払っていないと批判した。

財務相は国税局に対し、租税回避を調査するため、特別予算(2年間)を与えた。


StarbucksのCFO はその後、グループ内の取引に関する2つの要素が関わっていることを明らかにした。

1)知的財産に対するロイヤリティ

Starbucks の英国や他の海外子会社は商標やノウハウなどの知的財産についてロイヤリティを支払っている。
同社の場合はこれが売上高の6%になっており、英国の所得から控除される。

McDonaldも同様だが、4.5%となっている。Kentucky Fried Chickenはロイヤリティを払っていないとしている。

Starbucks CFO の証言では、Starbucksの欧州子会社のロイヤリティは欧州本部のアムステルダムのStarbucks Coffeeに支払われるが、これについてStarbucksはオランダ政府との間の交渉で税務上特別扱いすることになっている。

移転価格税制ではグループ内取引では市価基準(arm's length principle)での取引が求められるが、Starbucksではこの原則を守っていると主張している。
しかし、今回の取り決めで、Starbucksは今後、ロイヤリティを損金として落とさないことにしたとされる。

2)コーヒー豆の取引

英国子会社は原料のコーヒー豆をスイスのStarbucks Coffee Trading から購入し、オランダの別の子会社でローストしている。

英国子会社では、スイスとオランダの当局から、移転価格税制に基づき、利益を両国の子会社に落とすよう求められているとしている。
その後、Starbucksはスイスに20%の口銭を落としたこと、スイスでの税率は英国の半分の約12%であることを明らかにした。

なお、英国Starbucksによると、2009年と2010年に移転価格の調査を受けたが、問題にはならなかったとしている。

3)このほかにグループ内借入金の利用の可能性がある。

英国Starbucksは資金を借り入れに頼っており、昨年にグループ会社に200万英ポンドの金利(利率Libor plus 4%ポイント)を払っている。
(英国McDonald'sのグループ会社への金利支払いは100万英ポンドで利率はLibor plus 2%ポイント)。

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今回の解決策はおかしい。

Starbncksのやり方が英国の税法上、違法であれば、本来の税金を徴収すればよい。
税法の抜け道を狙ったものなら、相応の対策を取ればよい。

そうでなければ、一般国民の感情とは切り離した措置が必要であ り、税務当局はきちんと国民に説明するべきである。

日本でも、 銀行が大儲けしていながら税金を払っていなかっとことや、子会社からの受取配当が無税であることなども、一般国民の感情からの批判はあるが、前者は過去の損失の繰り延べであり、後者は二重課税排除の考えに基づいたものである。

異なる国にある関係会社間の取引については、移転価格税制があり、恣意的な取引で利益を不正に移管している場合には、その取引を市価基準(arm's length principle)に置き換えて計算された利益について税金を計算する。

双方の国で税務当局の認識が異なった場合には、二重課税の排除を求め、両国の税務当局の相互協議を求める道が開かれている。

今回の場合、高いロイヤリティを支払ったために継続的に赤字になるということであれば、ブランド名その他の知的財産が十分な効果を生まなかったということで、そのロイヤリティが高過ぎるということとなり、その分を否認すればよい。

それをせずに、どんぶり勘定で、しかも2年だけ、法人税を払うというのは理解しがたい。
その間に別の理由で大きな損失が出た場合でも、それに無関係に払うのであろうか。
2年経過後はどうするのであろうか。正当な額のロイヤリティも、損金算入をしないのであろうか。

これが前例になれば、他の企業も、税務上では正当なやり方をしていても、国民感情を勘案して、不当な税金を払わされることになりかねない。法治国家のやることではない。

Starbucks側も、税法上払う必要のない税金を払うと、株主から訴えられるリスクもあるのではないだろうか。

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移転価格が問題となるのは、国により法人税率が異なるためである。
全体の法人税支払いを減らすために、利益を税率の安い国に不当に移転するのが問題となる。

これが進めば、事業場所の移転が行われる。

多額の負債を抱え再建中であった英国のINEOSは2010年に本社をスイスに移転した。

同社では、業績が回復してきたが、英国では増税が検討されており、税金の負担が増えるとし、英国よりももっと低税率の国に本社を置く他の主要化学会社と競争していくためにスイスに本社を移すとした。

2010/3/5  INEOS、節税のためスイスへの移転を検討

英国はその後方針を変更、2011年4月に、それまでの法人税率 28%を26%に引き下げ、2012年4月に24%に引き下げた。
英国の財務相は2012年12月5日の演説で、法人税率を2013年に1%、2014年に2%下げて、21%にすると発表した。


日本は 2011年11月の改正、法人税率が30%から25.5%に下がり、実効税率が40.69%から35.64%に軽減された。

但し、2012年4月から3年間に限り、年税額の10%が復興特別法人税として上乗せされ、38.01%となる。
   (法人住民税には震災特別税は付加されない)



ソース  http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/084.htm
 スイスのみ別資料(州により税率が異なる)







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