ロシア、サウスストリームパイプライン計画着工

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ロシアのGazpromとパートナーは12月7日、南ロシアの黒海東岸の Anapa市でSouth Stream pipeline の着工式を行った。

South Streamはロシアと中央アジアの天然ガスを欧州に送るもので、黒海の湖底を通って対岸のブルガリアに渡り (900km)、その後、2手に分かれる。
北西ルートはブルガリア、セルビア、ハンガリーを通ってスロベニア、オーストリーに通じる。
南西ルートはギリシャからイタリアに通じる。

式典にはPutin大統領のほか、ブルガリアの大臣、パートナーのイタリアのENI、フランスのElectricite de France、ドイツのBASFの代表が出席した。

Gazprom とパートナー各社は11月に投資計画を確定、実行会社のSouth Stream Transport BV の本社をアムステルダムに置くことを決めた。

本計画は当初、GazpromとENIとの均等出資で計画された。
2011年にBASF子会社のWintershallとフランスの
Electricite de France SAが15%ずつ参加し、ENIの比率は20%となった。

Wintershallは、ロシアのもう一つの欧州向けの天然ガスパイプライン、Nord Stream計画にも参加している。

2011/3/30  BASFがロシアの South Stream 天然ガスパイプライン計画に参加

欧州への天然ガス供給は2016年第1四半期にスタートする予定。

プーチン大統領は第1段階の供給先としてブルガリア、セルビア、スロベニア、ハンガリー、イタリア、クロアチアの6カ国をあげた。

既に完成しているバルト海を通るNord Streamに並び、ウクライナを迂回して欧州にガスを輸出するルートを確保する。

ロシアから欧州向けの天然ガスパイプラインは従来はベラルーシ(Belorussia)からポーランドを経由するもの(Yamal Pipeline)と、ウクライナを経由するものがある。

ロシアとベラルーシは2007年に石油抗争を起こしたが、和解した。
  
2007/1/10 ロシア・ベラルーシ 石油抗争
  2007/1/15 ロシアーベラルーシ石油抗争 解決

ベラルーシはロシアが主導する旧ソ連諸国の経済統合を支持しており、ロシアはその見返りとして2011年11月に天然ガスの値下げに応じた。
Gazpromが、ベラルーシの国営パイプライン運営会社ベルトランスガスの株式の5割を保有するが、残りの株式5割を25億ドルで取得し完全子会社にすることでも合意した。

これに対し、ロシアとウクライナの関係はよくない。

Gazprom は2009年1月1日、ウクライナへの天然ガス供給を完全に停止した。 (2006年に続くもの)
ロシアは欧州向けのガスをウクライナが抜き取っているとして、1月6日から欧州向けの供給も停止した。

その後、プーチン首相とウクライナのティモシェンコ首相がガス価格の引き上げに大筋で合意、1月19日に今後10年間のヨーロッパ向けガス輸送と、ウクライナへのガス供給を確認する合意文書に調印した。

2009/1/2 ロシア、ウクライナ向け天然ガス供給停止

ロシアとしては、EUへの加盟も視野にいれるウクライナに欧州向け天然ガスパイプラインを抑えられるのは問題で、この対策として北側のNord Streamを建設したが、今回、南側のSouth Streamを建設する。

Nord Streamからは欧州を縦断するOPAL natural gas pipeline(Baltic Sea Pipeline Link)と接続している。

  2011/8/27 Nord Stream Pipeline、欧州ネットワークに接続

 

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これに対し、トルコはSouth Stream計画には参加しないとしている。
トルコは、South Nabucco 計画とTransanatolian (TANAP) 計画を重視している。

Nabucco計画はEU主導で、カスピ海地域の天然ガスをトルコ、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー経由でオーストリアまで輸送する延長3300kmのガスパイプラインプロジェクト 。
EUはロシアの天然ガス依存度を減らしたい意向。

2005年にオーストリアのOMV、ハンガリーのMOL、ルーマニアのTransgaz、ブルガリアのBulgargazとトルコのBotasが各16.67%出資のJVNabucco Gaspipeline International を設立した。

2010年6月、トルコとアゼルバイジャンがアゼルバイジャン産天然ガスの供給をトルコが受けることで覚書に署名した。
アゼルバイジャンのカスピ海沖で
Shah Deniz天然ガス田の第2期開発で生産するガスを、トルコが欧州など他国へ再輸出する権利を持つことを明記した。

2013年のパイプライン建設着工、2017年の完成が計画されているが、予定通り実現するかは不透明。

アゼルバイジャンとトルコは2011年12月26日、Transanatolian (TANAP) を共同で建設することで基本合意した。
両国は天然ガス供給に続き、輸送手段でも「同盟」を結び、欧州への本格的なガス輸出を目指す。

TANAPが実現する場合には、Nabuccoを西部(バルカン諸国を通りオーストリアに至る欧州部分)だけを残し、TANAPに接続する案も出ている。

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なお、石油については、アゼルバイジャンとトルコを結ぶBTCパイプラインがある。

2006/6/7 BTCパイプライン完成

 




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