紙おむつと日本国債

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米国のヘッジファンドが日本の大人用紙おむつに関心を示している。

Financial Timesが11月29日付で伝え、人民網日本語版が「日本経済 紙おむつのターニングポイントが到来か」でこれを引用している。

Financial Times:
何故ヘッジファンドマネジャーが日本の大人用紙おむつに関心を持つのか? 
それは多くのヘッジファンドが次の稼ぎどころと見る日本の国債バブル破裂の手掛かりになるからだ。

日本では本年に大人用おむつの販売が乳幼児用を初めて上回る。
空売りを狙う業者は、これを数か月後に起こると予想する危機の原因の一つと見ている。

Hayman Capital Managementの創始者のKyle Bassが需要家へのレターで、これを取り上げ、日本国債は暴落するので売りだとしている。

大人用紙おむつが乳幼児用を上回るということは
、介護を必要とする高齢者数が新生児数を上回るということで、日本の社会保障のコストは今後どんどん増えていき、歳入不足のなかで国債を増やしてきた報いを受けることになるとする。

別のヘッジファンドマネジャーは、衆院選が変化のきっかけになると見ている。

安倍晋三が首相になるのは確実だが、彼は物価上昇率2%を目指して日銀に無制限の金融緩和を求めている。
そうなれば、国債利回りは2%に上がり、国債の大幅値下がりで空売り業者は莫大な利益を得るとしている。

Kyle Bassも同じことを述べている。
「2011年度の日本の税収はざっと41兆円。これに対して国債の利払いが11兆円 。日本国債の金利が今の水準より1%上がるだけで、その利払いは20兆円以上で、税収の半分を金利に取られてしまうことを意味する。日本の財政が持続できなくなり、実質的に破綻することもあり得る。」

* この問題については、日銀白川総裁の講演「物価安定のもとでの持続的成長に向けて」が分かり易い。

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人民網は、日本と中国を比較して、以下の通り結論付けている。

20数年間に渡る低成長と高齢化により、日本が高度成長期に蓄えた優勢がほぼ消耗し尽くされており、米国式の「財政の崖」が間近に迫っている。

中国は安価な人件費による優勢が失われているが、これは実際には低所得層の所得増、中国の内需成長を促すことになる。内需主導型の経済成長方式は、産業構造のアップグレードを促し「中等収入の罠」を乗り越えるだろう。その際に、中国に対して空売りを仕掛ける身の程知らずはいなくなるに違いない。

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紙おむつなど衛生用品を扱うメーカーでつくる日本衛生材料工業連合会は、大人用紙おむつが数年後に乳幼児用を上回るとの予測を明らかにした。

少子高齢化により、2011年の生産数量は大人用が288千トンとなり、296千トンの乳幼児用に肉薄した。
乳幼児用が停滞しているのに対し、大人用は安定的に伸長。今後も高齢化が進むことから、日衛連では2015年までに大人用は生産数量で現在比15%増となるとみる。

政策研究大学大学院の松谷明彦・名誉教授によると、日本の今後の少子高齢化と人口減少の割合は他の諸国よりもはるかに大きい。

これは過去の2つの政策(当時は止むを得なかった)による人口構造の歪みによるもので、対策はない。

第一は戦前(1920~40年前半)の「産めよ増やせよ」政策で、出生数が急増している。
この年代は現在70歳~90歳で、今後人口急減の原因となる。

第二は1948年の優生保護法である。
1947~49年に復員や外地からの引き揚げ等で第一次ベビーブームが起こった。
食料不足のなか、餓死を避けるため優生保護法がつくられた。
産児制限により、年間270万人の出生数が160万人にまで減少した。

この結果、次の世代、その次の世代の出生数が激減することとなった。


        http://www.mhlw.go.jp/english/database/db-hw/dl/81-1a2en.pdf
    * 特殊出生率は一人の女性が一生に産む子供の平均数
 

松谷名誉教授は、現行の年金制度などは継続不可能で、少子高齢化・人口減を前提にした別の社会保障政策を検討すべきだとする。

例えば、100年債を出して、国有地に100年住宅を建設、住宅コストを大幅に下げるなど。





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