三菱ケミカルホールディングスは12月25日、医薬品カプセル製造で世界シェア2位の奈良のクオリカプス(Qualicaps)の全株を取得し、子会社化するための株式売買契約をカーライル・グループとの間で締結したと発表した。
クオリカプスの有利子負債を含む買収金額は558億円で、三菱ケミカルは金融機関からの借り入れで賄う方針。
クオリカプスは1965年の設立以来、医薬品・健康食品用カプセルならびに製剤関連機械の開発・製造・販売を日米欧の3拠点を軸に展開するグローバル企業で
、2011年の連結売上高は176億円、海外売上高比率は64%。
高品質・高機能のハードカプセルの提供とともに、長年培ったカプセル製造技術のノウハウを活用した製剤関連機械の設計・開発、製作・据付け、技術サービスの提供というトータルなアプローチで、カプセル市場において確固たる地位を築いてい
る。
三菱ケミカルの推定では、
世界のカプセル市場の規模は約1,000億円で、年率数%の安定的な成長が見込まれる。
そのうち医薬品用は半分以上を占めており、クオリカプスは医薬品用カプセル市場において20%を超える世界シェアを有している。
今後年率10%以上の成長が予想されるセルロース系カプセル市場において、クオリカプスは技術・品質の優位性によってリーディングカンパニーとしての地位を確立して
いる。
三菱ケミカルは石化事業の収益環境の悪化を受け、好調な医薬品事業を強化する。
但し、世界の医薬品メーカーは目指す分野に投資を集中させ、それ以外の分野を売却しているなかで、本件のカプセル事業は医薬関連であるとはいえ、医薬品の補助材料であり、競合する医薬品メーカーを需要家とする。
三菱ケミカルでは、クオリカプスのグローバルな顧客ネットワークは同社の医薬品原体・中間体事業との補完性が高いとしているが、高いノレン代(クオリカプスの2011年営業利益は30億円に過ぎない)を払って買収する意義があるのか、疑問がある。
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塩野義製薬と米国イーライ・リリーが1965年に50:50の合弁で「日本エランコ」を設立した。
1992年に塩野義100%となり、その後「シオノギクオリカプス」と改称した。
1995年に米国とスペインにカプセル工場を建設した。
2005年10月にThe Carlyle Groupをスポンサーとして、マネジメント・バイアウト(MBO)方式で塩野義製薬から独立した。
塩野義製薬は医療用医薬品への経営資源集中を進め、カプセル事業はノンコアビジネスであった。
クオリカプスは当時、日本市場では業界首位の地位にあったものの、海外市場では各国法人が個別に経営されており、大手医薬品メーカー顧客獲得に苦戦していた。
Carlyleは以下の方針で立て直しを図った。
・グローバル化する顧客ニーズに対応するため、グローバルなカプセルメーカーとしてグループ経営を確立すること。
・日米欧連携により製造品質の改善を行い、米国大手医薬品メーカーの顧客を獲得すること。
・植物性カプセルの早期投入による業界におけるリーダーシップを確立
・日本における機械事業をグローバルに展開。
・カーライルのグローバルネットワークの活用
独立後、2007年1月に、カナダのハード・カプセル製造会社Pharmaphilの買収した。
そして同年5月には世界的なカプセル製造機械メーカー、カナダのTechnophar
Equipment and Service を買収した。
同社はカナダとルーマニアにカプセル機械の製造工場を有しており、さらに、ルーマニアでハード・カプセル工場を建設中であった。
この結果、現在の拠点は下記の通り。
現在はCarlyle group 3社が全株式を保有している。
Carlyleは以上の戦略で企業価値を向上させ、2010年末にクオリカプスの売却を試みた。
しかし、Pfizerによる子会社のカプセルメーカーCapsugel の売却と重なったため、その時は失敗に終わった。
Pfizerは2011年4月1日、Kohlberg Kravis Roberts (KKR)との間でCapsugel を23億75百万ドルで売却する契約を締結したと発表した。
Capsugelはハードカプセルで世界一で、2010年の売上高は約750百万ドル。
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