アラビア石油、油田開発から撤退

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AOCホールディングスは12月27日、連結子会社のアラビア石油が会社分割により新たに設立する子会社をJX日鉱日石開発に譲渡する契約を締結したと発表した。

新会社は2013年4月に設立の予定で、石油上流事業に携わってきた過程で蓄積した技術と豊富な経験を有する人員と、AOCグループが保有する日本オイルエンジニアリングの全株式を承継する。(日本オイルエンジニアリングの他の株主はコスモ石油)

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アラビア石油は1958年2月に設立された。

サウジとクウェートの旧中立地帯で、1957年に(前身の日本輸出石油が)サウジの採掘権を、1958年にクウェートの採掘権を取得、1960年1月にカフジ油田を発見して 1961年2月に生産を開始した。1963年11月にはフート油田を発見した。

アラビア石油はここで日本の石油消費量の5%に相当する日量27万バレルを生産して日本に持ち込み、エネルギーの安定調達に大きく貢献してきた。(原油累計生産量は約39億バーレルに達し、その内、約28億バーレルを日本向けに供給)

しかし政府の全面的な後押しを受けて臨んだサウジとの権益更新交渉に失敗して2000年2月にサウジの利権協定が終了、2003年1月にはクウェートとの利権協定も終了した。
利権協定の期限は当初から決まっており、それに対して手を打ってこなかった後継首脳に対する批判がある。

コスモ石油子会社のアブダビ石油が単独で権益を保有し1973年から操業しているアブダビ沖合のムバラス油田は、2012年に45年間の期限を迎えたが、30年の更新が認められた。

新利権協定は2012年12月6日に発効、アブダビ石油が操業中の既存3油田(ムバラス油田、ウルアルアンバー油田およびニーワットアルギャラン油田)の利権が今後30年にわたり更新されるとともに、3油田と同程度の生産規模が見込まれる既発見・未開発の新鉱区(ヘイル油田)について、新たに30年の権益が確保された。

   
2009/1/23 アブダビ石油の油田権益 20年延長へ

その後はカフジの操業は両国の国営石油会社子会社の共同操業に移行し、アラビア石油はKuwait Gulf Oil との技術サービス契約で、人員を派遣、技術、経営管理等のサービスを提供する形で共同操業に参画してきたが、この契約の更新が出来 ず、2008年1月4日、クウェート・カフジ油田の操業から撤退、半世紀に及ぶ元祖「日の丸油田」の役割を終えた。

クウェート石油公社との間では2023年1月まで、最低日量10万バーレルのカフジ原油・フート原油あるいはクウェート原油の売買に関する取り決めを結んでおり、これは今後も継続する。

2008/1/5 アラビア石油、カフジ撤退

なお、アラビア石油と富士石油は2002年10月に事業統合で合意、2003年1月、株式移転によりAOCホールディングスを設立した。

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アラビア石油はこのほかに2か所で石油開発を進めているが、いずれも諸問題の発生で操業開始が大幅に遅延、巨額な損失が発生している。このため、同社では権益売却を模索する。

(1)ノルウェー領北海・イメ油田再開発プロジェクト

ノルウェーにおける石油・天然ガスの探鉱・開発プロジェクト実施のための現地法人として1988年に100%子会社Norske AEDC ASを設立した。

ノルウェー領北海2/1鉱区のギダ油田(オペレーターはTalisman Energy)に5%の権益を保有している。1990年6月より原油生産を開始し、日量約4千バレルの水準で原油を生産している。

2009年2月に、新たなプロジェクトとしてイメ油田とそれに隣接する2 つの探鉱鉱区の権益をそれぞれ10%取得した(オペレーターはいずれもTalisman Energy)。

イメ油田は、Talismanによる開発作業が行われているが、海上生産設備の不具合等により生産開始が大幅に遅れており、生産開始の目途は立って いない。

(2)エジプト・スエズ湾ノースウェスト・オクトーバー鉱区

アラビア石油は2005年2月、スエズ湾北部のノースウェスト・オクトーバー鉱区の国際入札に成功し、同年7月にエジプト政府およびエジプト石油公社と生産分与契約を締結し、2006年9月に商業量の原油の賦存を確認した。

プロジェクト推進のため、2008年10月に100%子会社のAOCエジプト石油(株)を設立し、開発作業を進めた。

現在、エジプトの政治情勢を注視しつつパートナーのエジプト石油公社と協議を続けて いるが、同国の情勢はなお安定に至っておらず、今後は権益の売却を模索する。

石油上流事業のポートフォリオを整理し同事業から実質的に撤退することも視野に入れ、アラビア石油が半世紀以上にわたり石油上流事業に携わってきた過程で蓄積した技術と豊富な経験を新たな形でわが国石油開発業界において活用する ため、今回の決定を行った。

移籍する社員の半分の約40人が技術系。うち10人はノルウェーとエジプトの現場で腕を磨いている。

現行の上記2件のプロジェクトと、クウェイト石油公社との原油売買契約に基づく原油の購入・販売は引き続きアラビア石油が行 う。

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一方、JX日鉱日石開発は、2020年を目途に原油換算で日量20万バーレルの石油・天然ガスの生産体制を確立するべく、新規事業案件の獲得および既存プロジェクトの価値の最大化を推進している。

この達成を確実なものとした上で、更なる発展を図るためには、上流事業についての高度な専門技術と幅広い知見を有する人材を拡充することが必要にな るが、昨今の資源開発ブームの影響により、石油開発業界の人材は世界的に不足しており、その確保は難しい状況にある。

このため、承継される人材のアラビア石油時代に培った技術・知見を存分に活用し、同社の事業基盤の更なる強化を図る。

 



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