英首相、EU離脱を問う国民投票実施を表明

| コメント(0) | トラックバック(0)


英国のDavid Cameron首相は1月23日、ロンドンで演説し、2015年に行われる次の総選挙で与党が勝利した場合、遅くとも2017年末までに、英国がEUに残るかどうか(in or out )の国民投票を実施すると述べた。

英国では国民の40%以上がEU離脱を望んでいるとの世論調査がある。英与党内では一部議員が国民投票の実施を求める圧力を強め、EUからある程度の権限を取り戻すべきだとの声も高まってい る。

首相は「国民投票ではEU残留を支持する」と語っており、 強気の演出により、今後行われるEU協定改定で英国の主張を通した上で、EUにとどまる筋書きを描いている。

これに対し、世論調査では優位に立っている野党労働党の党首は「Cameron首相の考えは国民の利益にかなっていない」と批判しており、欧州統合にどう関わるかが総選挙の争点になる。

ユーロ圏諸国は、ギリシャへの支援を再開し、財政規律の強化や銀行同盟など統合強化に動いているが、この動きに反対する英国が離脱の脅しで方向を変えようというもので、EUの将来に新たな不安要素となる。

ドイツのWesterwelle外相は、「"cherry-picking" (選り好み) という選択肢はない」と述べ、Merkel首相も、「英国の意向に関して話し合う準備はもちろんできている」としながらも、「他国にもそれぞれの希望があり、最終的に公正な妥協に落ち着く必要があることを忘れてはならない」とくぎを刺した。

フランスのHollande大統領は、「基本的には英国人が決めること」としつつも「EU脱退をめぐって英国と条件交渉する気はない」として、英国が行うであろう駆け引きを早くも牽制した。

Obama米大統領も1月17日、「強いEUの中の強い英国が大切だ」と再考を促した。

ーーー

スピーチの概要は以下の通り。

1)現在のEUの問題点

  前提として、英国は島国で、独立心があり、主権の維持に熱心である。
英国にとりEUは手段であり、目的ではない。
但し、英国の特長は independent であるとともにopenである。
     
  現在のEUは大きな問題を抱える。
一つは通貨Euro の問題。
大改革が必要だが、英国のEuro圏市場へのアクセスに障害が出るようなものは困る。
     
  第二は労働市場規制の複雑なルールなど、過剰な規制、規則によるEUの競争力の低下 。
欧州の生産のシェアは次の20年で約1/3減ると予想されている。
    このままなら、競争力が減り、成長がとまり、失業が増える。
     
  第三はEUとメンバー諸国の国民の乖離で、各国で国民の不満が増大している。
     
2)首相の考える 21世紀にフィットした新しいEUのビジョン
  第一は競争力の強化。
そのためには、各国の競争力強化を絶えず支援する効率的な、官僚的でないEUであることが必要。
     
  第二はフレキシビリティ。
    単一市場維持にはルールが必要だが、新たな展開に即応する必要がある。
硬直性ではなく、スピードとフレキシビリティが必要。
     
    EUの根源は単一通貨ではなく、単一市場である。
多様性があってよい。
     
     (英国は通貨統合や国境検問をなくす「シェンゲン協定」に参加していない。今回の 「新財政協定」にも参加していない)
     
  第三として、権限をメンバー諸国から取り上げるだけでなく、メンバー諸国に戻すことも認めるべきだ。
これは2001年の「EUの将来についてのLaeken 宣言」でも約束されたのに、実現していない。
EUが何をやるべきで、何をやめるべきかと十分検討する必要がある。
     
  第四は民主的な説明責任(democratic accountability)の問題。
EUにおいて、各国の議会が民主的な正当性と説明責任を持つ。
各国の議会にもっと大きな役割を与えるべきだ。
     
  第五は公平さ
Euro圏で決められたことは、Euro圏内外に公平に適用されねばならない。
単一市場の全てのメンバーの
integrityとfairness の保護が重要。
     
3)英国民の気持ち
    英国では現在、EUへの幻滅感がこれまでになく高い。
     不必要な規則で国民生活が阻害されている。
 EUが、英国人が我慢できる範囲を超えたレベルの政治統合に向かっていると感じている。
     
4)対応策
    ユーロ危機の解決のため、想像を超えた変革がなされ、現在と異なった形になる。
それには、上記のビジョンが織り込まれるのが最も望ましい。
     
    その交渉を待って、国民投票を行う。
これは国民の判断を仰ぐもので、英国にとって最善の未来であるかどうかを問うものである。
     
5)離脱ケース
    離脱は簡単なものではない。
     
    英国がEUを離脱しても、欧州から離れる訳にはいかない。
離脱しても、EUの決定は英国に大きな影響を与えるし、離脱すれば現在の拒否権を失い、EUの決定に関与できなくなる。
    EUという単一市場のメンバーでなくなることの影響を十分考えるべきだ。
     
6)結論
    EUにとっても英国を失うことは大きな痛手になる。
フレキシブルで適応可能でオープンなEUが英国の利益に適う。
また、英国がEUのメンバーであることは、そのようなEUの利益に適う。


演説全文は http://www.guardian.co.uk/politics/2013/jan/23/david-cameron-eu-speech-referendum

 

トラックバック(0)

トラックバックURL: https://blog.knak.jp/knak-mt/mt-tb.cgi/2080

コメントする

月別 アーカイブ