アルジェリアの石油と石油化学産業

| コメント(0) | トラックバック(0)


アルジェリアは天然ガス生産量でアフリカ最大で、世界でも9位。石油もアフリカ2位の生産国。
なかでも天然ガスは地中海の海底パイプラインでイタリア、スペインに送られており、欧州の経済を支えている。
2010年のイタリアの天然ガス輸入でアルジェリア産は37%、スペインでは33%を占める。

今回の事件で一部の欧州系石油大手は従業員の避難を指示した。
原油・ガスの生産、輸出が滞るのは必至で、消費国にも打撃を与える可能性がある。

2013/1/17     速報 アルジェリアで日揮従業員らを拘束 


アルジェリアの原油、ガスはいずれも内陸部にある。
原油とガスはパイプラインで沿岸部に送られる。
   パイプライン詳細マップ http://www.sonatrach.com/en/PDF/transport_par_canalisation.pdf

ガスはLNG、LPGにして出荷されるとともに、ガスのままでパイプラインでイタリアとスペインに輸送される。


製油所は4か所にある。

  年間能力 増設中
Algiers 2,700千t   3,450千トン
Skikda 15,000千トン 16,500千トン
   +5,000千トン
Arzew 2,500千トン   3,800千トン
Hassi Messaoud 1,100千トン  

他に、Biskra、Tiaret、Ghardaia、Hassi Messaoud の4か所に、各500万トンの製油所建設計画がある。

ガス処理設備は以下の通り。

    既存 増設中
LNGコンプレックス
 (輸出用)
Arzew 3基 年間440億m3 1基 470万トン
Skikda 1基 1基 450万トン
LPGコンプレックス Arzew 2基 年間10.4百万トン  



欧州向けのガスパイプラインは2本が稼働中で、2本が建設中。
他に、ナイジェリアのガスをこれらのパイプラインで欧州に輸出するために、ナイジェリアとアルジェリアを結ぶパイプラン建設の計画がある。

1) Trans-Mediterranean Gas Pipeline

Hassi R' Mel 大ガス田の天然ガスを、イタリアへ供給するガス・パイプラインで、チュニジアを通過し、地中海を渡り、シシリー島、メッシナ海峡、バグナラ、ローマを経由し、イタリア北西部のラ・スペチアまでの全長 2,800km にも及ぶパイプライン。

Sonatrach(アルジェリア国営石油会社)、チュニジア、ENI の分割所有となっている。

1984 年 6 月に、年間120 億m3、25 年間の供給が開始された。

2)Galsi Pipeline(建設中)

アルジェリアのEl Kalaから地中海をSardinia島を経由してイタリアのCastiglionne Della Pescaiaまで結ぶ。


3)Maghreb Burrop Gas Pipeline (MEG)

アルジェリアからモロッコを経由し、スペインと結ぶ。

4)Medgaz Pipeline(建設中)

アルジェリアのBeni-SafからスペインのAlmeriaまで地中海の深さ2160mの海底200kmを結ぶ。

新日鉄住金と三井物産は共同で、高強度・深海用途UO鋼管(大径溶接鋼管)を受注した。


5)Trans-Saharan Gas Pipeline(TSGP) (計画)

ナイジェリア~ニジェール~アルジェリア間の総延長4300kmのパイプラインを建設し、ナイジェリアのガスをアルジェリアから欧州向けパイプラインを経て欧州へガス輸出しようというもの。


ーーー

石油化学

Sonatrachの子会社 ENIPがSkikdaにエチレンコンプレックスを持っている。

エチレンは東洋エンジニアリングが1978年に120千トンプラントを完成させた。
(現在は220千トンに増強)

誘導品は以下の通り。
 VCM   40千トン
 PVC   35千トン
 LDPE   48千トン
 HDPE   130千トン
    可塑剤   70千トン


Sonatrach とフランスのTotalは2007年12月、アルジェリアのArzew での石油化学コンプレックス建設の基本契約を締結した。

南アルジェリアのガス田のガスを原料に、Arzew に 140万トンのエタンクラッカーを建設、年産110万トンのエチレン、2系列合計80万トンのポリエチレン、55万トンのMEGを生産する。製品は一部国内市場で販売、大部分は輸出する。

2007/12/10 アルジェリアの石油化学計画スタートへ

しかし、この計画は、原料エタンをHassi R'meil のガス田から送る予定であったが、エタンの輸送に問題が生じ、遅れている。

その間にアルジェリアで「51/49 法案」が成立し、JVでアルジェリア側が51%を占めることが必要となった。
 このため、新たにQatar Petroleumの出資を求め、出資比率を以下の通り変更した。

  当初 変更後
Sonatrach 49% 51%
Total 51% 39%
Qatar Petroleum 10%

現在の事業計画は以下の通り。

エチレン  110万トン
LLDPE 45万トン
HDPE 35万トン
MEG 41万トン

アルジェリアの第二の石化プロジェクトはメタノール計画で、同じくArzewに年産100万トンプラントを建設するもの。
国際コンソーシアムの
Almet (Algerian Methanol Company) が 51%Sonatrach 49% 出資する。
(これも出資比率が問題になっている)

Almet consortium のメンバーは、Kuwait のQurain (Dow/PICのEquate に出資する民間会社)、ドイツのLurgi、TrinidadのPPSL、日本の三井物産、アルジェリアのSotraco である。



トラックバック(0)

トラックバックURL: https://blog.knak.jp/knak-mt/mt-tb.cgi/2075

コメントする

月別 アーカイブ