課徴金減免制度の特殊事例

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公正取引委員会は2月4日、愛知電線の請求に基づく審判で、愛知電線の審判請求を棄却した。

 

公取委は2011年7月22日、VVFケーブル(主に建物内のブレーカーからコンセント等までの屋内配線として使用)の製造業者及び販売業者に対し、排除措置命令及び課徴金納付命令を出した。

これを受け、愛知電線は課徴金納付命令の取り消しを求めるとともに、予備的請求として、課徴金の30%の減免を求めていた。

  VVFケーブル カルテル
排除
命令
課徴金
  (千円)
 備考
矢崎総業 2,460,670 30%減額
富士電線工業 1,617,180  
弥栄電線 688,950  
協和電線工業 499,100  
愛知電線 326,960  
カワイ電線 323,070  
菅波電線 50,220  
協和電線 0 課徴金100万円未満
住電日立ケーブル(日立電線、住友電工、タツタ電線) 203,520 50%減額
古河エレコム(古河電工) 53,190 30%減額
昭和電線ケーブルシステム ―  最初に自主申告
合計 8社 6,222,860  

 

本件の調査に当たり、公取委は2009年12月17日に同社以外の4社に立入検査を行った(一次立入検査)。
その後、2010年4月13日に、同社ら7社に立入検査を行った(二次立入検査)。

愛知電線では同社への立入検査(二次立入検査)の当日に、課徴金減免申請を行うため、公取委の担当に電話で事前相談を行った。
これに対し、20日間の期限を既に経過しているとして、申請は受け付けられない旨の回答があり、
立入検査の当日に事前相談を行ったにもかかわらず20日間の期限を過ぎているとの回答に疑問を抱いたものの、減免申請は行わなかった。

課徴金減免の要件としては、調査開始から20日以内に申請を行うこととなっている。

7条の2 12項
当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後公正取引委員会規則で定める期日までに、公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行つた者

課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則 第五条
当該違反行為に係る事件について・・・・処分が最初に行われた日から起算して20日(行政機関の休日に関する法律掲げる日の日数は、算入しない。)を経過した日とする。

愛知電線の主張:
1)期限を経過しているとして減免申請を不可とした公取委の対応は違法・不当なもので、適正手続の保障を定めた憲法第31条に違反。

一次立入検査、二次立入検査ともに、告知書には「建設・電販向け電線・ケーブル」となっていて、「特定VVFケーブル」の取引を対象としたものかどうかが明確ではないから、これに基づく立入検査は課徴金減免申請の認められる期間の起算日にはならない。

一次立入検査は建設用電線のうち3品種の取引について行われたものであって、特定VVFケーブルの取引を対象としたものではなく、一次立入検査を「調査開始日」とするのはおかしい。

従って、相談した時点では、調査開始から20日の期限は経過していない。

2)それにより課徴金減免申請の機会を逸した被審人には、課徴金減免申請の効果(30%減免)が認められるべき。

 

今回の審判では以下の理由でこれを却下した。

・特定VVFケーブルが「電線・ケーブル」に含まれることは明らか。
・一次立入検査と二次立入検査の留置物の双方に本件違反行為に関する書類が含まれている。
・一次立入検査は本件違反行為についての調査であるといえるから、
一次立入検査の日が「調査開始日」に該当する。
20日間の期限を既に経過しているとして、申請は受け付けられないとした回答には違法・不当な点はない。

・回答には違法・不当な点はないため、また、実際に課徴金減免申請を行っておらず、課徴金減免申請の効果が認められるべき理由はない。


 


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