イタリア総選挙の結果、下院では中道左派が過半数を獲得したものの、上院では過半数を得られなかったため、ユーロ危機が再燃するとの懸念が高まった。
PIIGS諸国(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)に対する不安はまだ解消していない。
その中で、2013年2月15日付 英Financial Times は、ユーロ圏の中核諸国の基本的な成長展望に関する長期的な強い不安感から、PIIGSだけでなく、FISH(フランス、イタリア、スペイン、オランダ)が問題になっていると報じている。
主要国のなかで、これら4国はユーロ高と不況に悩んでおり、ドイツの独り勝ちとなっている。
2013年2月に発表されたEU各国の経済数値の予測では、以下の通りとなっている。
1)GDP:2012-13年はフランスがほぼゼロ、イタリア、スペイン、オランダはマイナス。
2)失業率:ドイツ、オランダ以外は10%超、スペインの失業率が高い。
3)財政赤字:ドイツ以外は全て赤字、特にスペインの赤字が大きい。
Morgan Stanley は2月4日のReport "Strategy and Economics"で、通貨ユーロの分析を行っている。
消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)を組み合わせたPurchasing Power Parity (PPP) による計算では、1ユーロは1.33米ドルとなり、現状の1.304ドルとほぼ近い。
Morgan Stanleyではユーロ各国それぞれのユーロの適正価値を、相対的な成長率、賃金コスト、輸出成長率という3つの指標を使って推定した。
それによると、以下の通りで、ドイツとアイルランド、オーストリアの3国以外は全体平均の1.33ドルを下回っている。(各国にとりユーロは過大評価となっている。)
ドイツは1.53ドルで13,2%の過小評価だが、FISH各国はそれぞれ、7.8%、12.1%、5.4%、9.1%の過大評価となっている。
現在のレートでは、ドイツはユーロ安の恩恵を大きく受けているが、逆に、他のFISH諸国はユーロ高で苦しんでいることが分かる。
このままでは格差は更に広がることとなり、現在PIIGSで進めている財政赤字削減策だけでは問題は解決できない。
なお、Paul Krugmanは "End this depression now" のPaperback版の序文で、IMF、欧州中央銀行とECのトロイカがギリシャなどに要求している緊縮策は最悪で、患者を殺す処方だとしている。
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