産構法30年(2) 産構法成立

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本年は産構法が施行されて30周年となる。
30年前をシリーズで振り返る。


1979年1月には第2次石油危機が発生し、3万円/kl程度であったナフサ価格は一気に6万円/klまで上昇、需要が激減し、不況が深刻化した。

塩ビ業界の赤字は、1980年には 323億円となり、危機的な状況となった。(1981年470億円、82年 407億円)

このため、塩ビ業界は他の業種に先行し、産構法によらず共販会社体制に移り、第一塩ビ販売が1982年4月にスタートし た。

2012/4/3  塩ビ共販誕生から30年

通産省は、産業構造審議会を中心に事態の打開策を検討していたが、1982年7月に同審議会化学工業部会に石油化学産業体制委員会、翌8月同審議会総合部会に基礎素材産業対策特別委員会を設置し、さらに具体策を深めていった。

石油化学業界では1982年10月、エチレンセンター13社の社長で編成された石油化学産業調査団が訪欧、石油化学事情を調査するとともに、不況の脱出策を協議した。

高杉良の「局長罷免 小説通産省」は以下の通り書かれている。

 石油化学工業の中核部門であるエチレンセンター13社の社長で編成された石油化学産業調査団が欧米に派遣されたのは、ランブイエ・サミットの7年後である。

 同調査団は、欧州の石油化学事情を調査することを目的としていたが、これはあくまでおもて向きで、不況の脱出策を協議することが本来の狙いであった。
 利害対立が激し
く、メーカー間の相互信頼関係が著しく損なわれていた中で、斎藤(内藤正久基礎化学品課長)は各社首脳を精力的に訪問し、調査団の必要性について説いた。斎藤の水際立った根回しの見事さを青山(通産省)はすぐ近くでつぶさに見ていたのである。

 住之江化学の堤
武夫社長(住友化学 土方武社長)を団長とする大型ミッションが最初の訪問地フランクフルトに向けて成田空港を発ったのは昭和57年10月2日のことだ。一行は随員を含めて総勢20名、副団長は光陵油化の吉岡正雄社長(三菱油化 吉田正樹社長)と昭栄化学の西本康之社長(昭和電工 岸本泰延社長)。通産省から斎藤ほか2名が参加した。

 斎藤の存在なくして調査団
はあり得なかったし、その後の石油化学工業の再生、収益改善など望むべくもなかった、といま青山は確信をもって断言できる。

 一行は2週間
にわたってフランクフルト、ブラッセル、パリ、ロンドンなどを回り、西独BASF社、オランダDSM社、CEFIC(欧州化学工業連盟)、EC委員会、フランス政府工業省、英BPケミカルズ、ICI社などの首脳と意見を交換する一方、円卓会議を頻繁に開催し、不況対策について話し合った。

 調査団の帰国後、各社の首脳間に相互信頼感が芽生え、過剰エチレン設備等の廃棄、ポリエチレン、ポリプロピレンなどポリオレフィンの共同販売会社の設立など抜本的な構造改善対策が次々に打ち出され、構造不況に陥っていた石油化学工業は急速に立ち直ってゆく。

ーーー

内藤局長は1993年に通産省内部の紛争に巻き込まれ、熊谷弘通産大臣に罷免された。
調査団メンバーはその後も同氏を囲むランブイエ会を開催していたという。


調査報告書の中で業界対応については以下の通り記載されている。

過剰設備の処理
  過剰設備の処理の進め方は、マスタープランを作成して進める方法のほかに、バイラテラルな形で進めていくことも現実的方法として有効であるとの見解が示された。
過当競争の排除
  不況の原因の本質は企業数過多、設備過剰に伴う過当競争にあるとの指摘が多く、事業の交換、限界企業の撤退などを通して企業数を半分程度にすることが必要であるとの見解が示された。基礎的石油化学製品については共同生産が有効であるとの見解も示された。
高品質、高付加価値化等のための技術開発の推進

1982年12月、石油化学産業体制委員会は、「石油化学工業の産業体制整備のあり方について」を通産大臣に具申した。

内容は、
 ①過剰設備の処理、
 ②投資調整の実施、
 ③生産・販売の合理化のための集約化、
 ④コスト低減対策の実施、
 ⑤海外プロジェクトヘの対応
の5項目を骨子とするものであった。

これらの構造不況対策を実施するため、政府は1983年2月15日に「特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案」を国会に提出、5月24日に「特定産業構造改善臨時措置法(産構法)」が、1988年6月30日を期限とする時限立法として施行された。

  1  特定産業の指定
石油化学工業などの7業種を法定候補業種として指定し、それら事業者の申出を受けて政令で特定産業に指定する。
  2  構造改善計画の策定
主務大臣は特定産業ごとに審議会の意見を聴いて構造改善基本計画を告示する。
同計画には①構造改善目標、②設備処理に関する事項、③設備新増設などの制限、禁止に関する事項、④事業提携など規模または生産方式の適正化に必要な事項、⑤雇用、関連中小企業などへの配慮事項を定める。
  3  共同行為
事業者が自主的努力のみでは設備処理などを実施できない場合には、主務大臣は公正取引委員会の同意を得て共同行為の実施を指示できる。
  4  事業提携計画の承認
事業提携につき独占禁止法との調整および税制上の特例措置を希望する者は共同して事業提携計画を作成し、主務大臣の承認を受ける。
  5  設備処理、事業提携、活性化投資について資金確保および課税の特例措置を行う
  6  雇用の安定、関連中小企業の経営安定のための措置を行う
  7  昭和63年6月30日を期限とする

石油化学関連では以下の製品で構造改善基本計画が作成された。

種名        特定産業
指定日
     構造改善基本計画の概要
目標年度     設備処理 構造改善の重点
処理目標 処理期
エチレン 1983/6/17 1988/6/30

229万t(36%)

1985/3/31 高効率設備への生産集約化
ポリオレフイン 1983/6/17 1988/6/30

90万t(22%)

1985/6/30 4共販会社の設立、これを核とした
生産流通等の合理化
塩化ビニル樹脂 1983/6/17 1988/6/30

49万t(24%)

1985/3/31 1982年4共販会社設立済
今後これ
を核に生産流通

の合理化
エチレンオキサイド 1983/8/30 1988/6/30

20.1万t(27%)

1985/6/30 高効率設備への生産集中
スチレンモノマー

1985/1

     1985/9/30  


エチレンオキサイドは、指示カルテルによらず業界各社が自主的に設備処理を行った。
スチレンモノマーは、遅れて1985年1月に産構法の業種指定となった。設備処理は各社が自主的に進めた。

 

 

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