EUは3月5日、ENIに対し、合成ゴムカルテルでEU普通裁判所が認めなかった重犯理由の罰金50%増しを行い、追加で90.75百万ユーロを科す旨の通告を行った。
欧州委員会は2006年11月、ブタジエンゴム(BR)とエマルジョンSBR(ESBR)の価格カルテルで合成ゴムメーカー5社に519百万ユーロの罰金支払いを命じた。
1996年から2002年までの間、価格カルテルを結んでいた。ESBRは全社が、BR は Eni, Bayer, Shell、Dowが生産していた。
罰金の内訳は以下の通り。
社名・国 | 減免率 % |
減免額 euros |
罰金 euros |
2011/7 General Court |
|
1. | Bayer, Germany | 100 | 204,187,500 | 0 | |
2. | Dow, USA | 40 | 43,050,000 | 64,575,000 | |
3. | Eni, Italy | 0 | 0 | 272,250,000 | 181,500,000 |
4. | Shell, Netherlands | 0 | 0 | 160,875,000 | |
5. | Unipetrol, Czech Republic | 0 | 0 | 17,550,000 | 0 |
6. | Trade-Stomil, Poland | 0 | 0 | 3,800,000 | |
TOTAL | 247,237,500 | 519,050,000 |
2006/12/5 EC、合成ゴム価格カルテルで5社に約800億円の罰金支払い命令
Eniについては、Eniと子会社のVersalis S.p.A.(当時はPolimeri Europa )の行為が対象となり、以下の2つの前科があるため、重犯として50%(90.75百万ユーロ)増しとなっている。
1986年のPPカルテル:Anicが摘発された。
1994年のPVCⅡカルテル:Enichemが摘発された。
しかし、EU普通裁判所(General
Court )は2011年7月13日、同一主体が違反行為を繰り返したという十分な証拠を出していないとして、50%増し分の罰金を減額する判決を行った。
(チェコのUnipetrolについては、カルテル参加の証拠が不十分として罰金を取り消した。)
今回、EUは普通裁判所の指摘した問題点を正すため、異議申立書のなかで以下の点を明らかにした。
Eniは上記2つのカルテルの時点で、AnicとEnichemの株式をほぼ100%所有していた。
Anicはその後 Enichemに引き継がれ、そのEnichemはその後Versalisに引き継がれた。
このため、EniとVersalisの合成ゴムカルテル参加は重犯になり、罰金は50%増しとなる。
こんな簡単なことを、裁判の過程で説明できず、しかも判決から1年半もかかったのは、何故だろうか?
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欧州委員会は2007年12月、クロロプレンゴムの市場棲み分けと価格操作を理由に5社に総額
243.2百万ユーロの制裁金支払いを命じたと発表した。制裁金支払いを命じられたのは、バイエル、電気化学、旧DuPont Dow Elastomers、ENI、東ソーの5社。
1993年から2002年の間、各社はクロロプレンゴムの市場棲み分けと価格操作を行なったというもの。
Bayerからの情報提供で、2003年3月と7月に各社に立ち入り調査を行なった。
各社の罰金は以下の通り。(単位:千ユーロ)
本来の罰金 | 減額 | 実際の罰金 | |
Bayer | 201,000 (重犯 50%増) |
100% | 0 |
東ソー | 9,600 | 50% | 4,800 |
DuPont/Dow (うちDow) |
79,000 (64,900) |
25% |
59,250 (48,675) |
ENI | 132,160 (重犯 60%増) |
132,160 | |
電気化学 | 47,000 | 47,000 | |
合計 | 243,210 |
EU普通裁判所は2012年12月17日、Eniへの制裁金を106.2百万ユーロに減額した。理由は「当事者からの要請」で明らかにしていない。
前年のカルテルがあるため、重犯での割増には異論はない筈で、別の理由と思われる。
2007/12/11 欧州委員会、クロロプレンゴムのカルテルで 243.2 百万ユーロの制裁金
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