イラン産天然ガスをパキスタンに輸出するパイプライン(Peace Pipeline)の起工式が3月11日、両国国境に近いイラン南東部Chabaharで両国大統領が出席して開かれた。
パイプラインはイラン南部のAsaluyehからパキスタン南部Nawabshahまでの約1880kmを結ぶもので、日量2150万立方メートルのSouth Pars ガス田の天然ガスを輸出する。
South Pars ガス田は世界最大のガス田で、イランとカタールの領海にまたがっている。(カタール側はQatar North Field)
イラン側はほぼ完成しており、未着工のパキスタン側の約780kmをイランとパキスタンの企業が2014年末までに完成させる予定。
総工費は75億ドルで、パキスタン側の建設費は約15億ドル。このうち3分の1をイランが融資する。
イランの最高指導者ハメネイ師は2月下旬にパキスタンのザルダリ大統領と会談し、5億ドルを融資することを約束した。
残りの5億ドルは中国からの融資、5億ドルは電力料金値上げで賄う計画とされるが、実際に手当てできるかどうか、疑問との声もある。
パキスタンは米国に配慮し、また資金不足もあって、自国内でのパイプライン建設をためらってきたが、国内の電力不足の解消のため容認に転じた。東部パンジャブ州では停電が多発し、工場の支障が出ている。
パイプラインが完成すれば、核開発を巡って欧米の制裁下にあるイランが外貨を獲得する手段となり得る。制裁が骨抜きになる可能性があるため米国は強く反発しており、パキスタンとの間の火種となる可能性がある。
米国務省報道官は3月7日の記者会見で「パキスタンがエネルギー需要を満たすうえで解決方法はほかにある」と発言。イランとの計画を断念し、トルクメニスタンやアフガニスタンからガスを調達するよう促していた。
米国務省報道官は3月11日の記者会見で、「この計画が実際に前進すれば、制裁の引き金になるという深刻な懸念を持っている」と述べ、パキスタンへの制裁発動の可能性もあると警告した。
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パイプラインの交渉はイランとパキスタンの間で1994年に始まり、1995年に予備契約が締結された。
その後インドへの延長構想が生まれ、1999年にはイランとインドの間で予備契約が締結された。
イランは中国やバングラデッシュにも参加を呼びかけている。
インドは2008年10月に米国との間で原子力協力協定を署名した後、2009年に価格問題と安全保障問題を理由に、この計画から撤退した。
既報の通り、中国はパキスタン南西部のGwadar港の港湾管理権を取得した。
Gwadar港からパイプラインでカラコルム・ハイウェイを通って新疆ウイグル自治区の喀什市(カシュガル、Kashgar)まで結ぶKashgar
Corridor構想があり、将来これが実現すると、イランの天然ガスを直接中国に受け入れることも可能となる。
2013/2/20 中国、パキスタンのグワダル港の運営権を取得
中国はイランの天然ガス開発にも参加している。
2009/6/12 中国CNPC、イランで天然ガス開発
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