キプロス議会は3月19日夜、銀行預金に課税する法案について採決し、反対36、賛成0、棄権19、欠席1で否決した。
法案内容:
2万ユーロ未満の預金は課税対象外
2万~10万ユーロ預金への課税率は6.75%
10万ユーロ以上の課税率は9.9%
EUはキプロスが預金課税を受け入れない限り、100億ユーロの支援を行わない方針を示しており、キプロスは財政破たんの瀬戸際に立たされた。
キプロスの財務相はモスクワを訪問し、金融支援について協議している。
ロシアはキプロスに対して25億ユーロの融資を行っているが、2016年の返済期限を延長する方向で準備しているとされる。
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ユーロ圏財務相会合は3月16日、財政危機に陥るキプロスに対して、銀行預金への課税(「預金税」)という前例のない措置を盛り込んだ100億ユーロ規模の救済計画に合意した。
必要とされる支援は170億ユーロとみられていたが、100億ユーロの支援を決め、残りは「預金税」で賄う
もので、10万ユーロ以上の預金に9.9%の課税、10万ユーロ未満の銀行預金には6.75%の課税(1回限り)を実施し、58億ユーロ
を確保しようというものであった。
2013/3/17 ユーロ圏、預金課税を条件にキプロス支援を決定
しかし、これに反発した預金者が課税前にATMから預金を引き出す動きが拡大、信用不安が再燃し、通貨ユーロの下落を招いた。
キプロス議会は臨時に開会して17日に課税法案を通し、19日の営業再開前に税金として徴収する予定であったが、開会できず、キプロス政府はすべての銀行を20日まで休業させることを決めた。
ユーロ圏財務相は電話で対応を緊急協議し、「少額預金者は大口預金者と異なる」との表現を盛り込んだ声明を出し、10万ユーロ未満の預金は全額保護することを認めた。
但し、金融支援の前提として預金課税全体で58億ユーロを徴収するとの立場を崩さず、少額預金を保護する分、大口預金者の税率を10%超とするなど、課税の具体策の作成はキプロス政府に任せた。
これに対しアナスタシアディス大統領は、10万ユーロ超の預金に10%超の課税を行うことには断固として反対、(10万ユーロ未満ではなく)2万ユーロ未満の預金のみ保護する内容とした。
しかし国民の反発は強く、野党は「銀行経営の失敗のツケを国民に回すものだ」「EUの脅しには屈しない」などと課税そのものに強く反発し、否決した。大統領の中道右派政党も棄権に回った。
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キプロス島は1974年以来、南北に分断されており、島の北部約37%をトルコ系住民による北キプロス・トルコ共和国(トルコのみが承認)が占めている。
南側のギリシャ系住民が住むのがキプロス共和国で、EUに加盟している。
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