本年は産構法が施行されて30周年となる。
30年前をシリーズで振り返る。
塩ビ業界は他の業種に先行し、産構法によらず共販会社体制に移り、第一塩ビ販売が1982年4月にスタートした。
2012/4/3 塩ビ共販誕生から30年
産構法で構造改善基本計画が作成され、年産能力201万トンの24%にあたる49万トンの設備処理や、既に設立済みの共販会社を中心に生産の共同化、生産品種の専門化、EDCなどの原料購入の共同化を行うことなど、生産、販売、流通各分野における合理化を行うことが決まった。
これに基づき、1983年11月に業界21社は
下記の設備処理と5年間の新増設禁止を主な内容とする協定を結び、通商産業省の承認を受けた。
また、事業提携では4共販会社を核とした生産、流通の合理化を進めるための計画が承認された。
設備処理は重合槽の容量の減により行われた。
通産省によるPVCの生産能力の管理はトン数ではなく、重合槽の容量で行われていた。
PVCの生産はバッチ式で、プロセスにより、またグレードにより、特に重合後の「冷却」ー「後処理」の時間に差があり、実際には重合槽1m3当たりの生産能力は大きく異なる 。(1m3当たり月産10トン強程度から30トンを超えるものまで)
しかし、プロセス改良による能力アップはメリットとして認められていた。下記の処理後能力(千トン)は諸資料からの推定
共販会社
参加企業
工場
重合槽 m3
処理後
能力
千トン処理前 処理 処理後 第一塩ビ販売
住友化学工業 愛媛
348
193
155
16 千葉
338
0
338
47 計
686
193
493
63 呉羽化学工業
錦
840
270
570
85 サン・アロー化学
(徳山曹達)徳山
432
20
412
88 日本ゼオン
水島
670
170
500
96 高岡
456
148
308
53 計
1,126
318
808
149 計
;
3,084
801
2,283
385 日本塩ビ販売
鐘淵化学工業
高砂
416
20
396
85 大阪
106
0
106
24 鹿島
334
0
334
63 計
855
20
835
172 電気化学工業
渋川
126
111
15
8 青海
294
150
144
28 千葉
430
100
330
64 JV *
-
+123
123
27 計
850
238
612
127 東亜合成化学工業
徳島
319
209
110
18 川崎有機
川崎380
0
380
46 計
699
209
490
64 三井東圧化学
大阪
649
257
392
75 JV *
-
+185
185
41 計
649
72
577
116 計
;
3,053
539
2,514
479 中央塩ビ販売 旭硝子
早月
54
0
54
10 化成ビニル
早月
16
16
0
0 四日市
577
71
506
94 水島
672
140
532
102 計
1,265
227
1,038
196 信越化学工業
南陽
240
80
160
26 鹿島
1,016
127
889
196 計
1,256
207
1,049
222 計
;
2,575
434
2,141
428 共同塩ビ販売
東洋曹達
四日市
560
35
525
113 南陽
87
0
87
15 計
647
35
612
128 チッソ
水俣
371
241
130
25 水島
224
0
224
43 千葉
264
54
210
40 計
859
295
564
108 セントラル化学
;
0
0
0
27 日産塩化ビニール
千葉
414
84
330
64 徳山積水
(積水化学/東曹)徳山
298
33
265
61 計
;
2,218
447
1,771
388 合計
;
10,930
2,221
8,709
1,680
電気化学と三井東圧のJVは日本ビーヴィシー(1982年設立 三井東圧化学60%、電気化学40%)
セントラル化学は東亜合成(川崎有機)に製造委託している。日産塩化ビニールは日産化学が1977年に千葉のVCM、PVC事業を分離して設立したもの。
1983年に東洋曹達とのJVの千葉ポリマーとしたが、1989年に解散し、PVC設備は東洋曹達四日市工場に移管した。
上記の処理のうち、信越化学鹿島工場の127m3のみが廃棄でなく休止であった。
1988年のカルテル終了後、需要の急増により日本全体が能力不足になり、通産省が「要請」した形で再稼動し、同社はこれにより有利な立場となった。
産構法による設備処理は、他の業種ではすべて自己負担で行われたが、塩ビ業界のみ、経済的負担の公正を期するため調整金を設けて各社別の処理量を決めた。
調整金は廃棄m3 に対し2,000千円(基準を超えて廃棄する分は4,000千円)を支給することとし、合計4,360百万円を支給、残存m3数比で各社負担した。
基準分 1,856m3x2,000=3,712百万円
基準超 162m3x4,000= 648百万円
合計 4,360百万円
なお、呉羽化学は270m3の廃棄となっているが、実際は128m3多い398m3を廃棄している。
これを申告して調整金をもらわなかったのは、カルテル期間中にその能力分だけ自由に増設できるというメリットを享受しようとしたと思われる。実際には規制期間中にはこの権利能力を利用しなかったため、損をしたこととなる。
ーーー
エチレンオキサイドとスチレンモノマー
エチレンオキサイドは、指示カルテルによらず業界各社が自主的に設備処理を行った。
処理前能力 743千トン 処理 122千トン 処理後能力 621千トン
日本触媒化学と三井石油化学は製品融通の事業提携計画を作成した。
三井石油化学は1985年5月にエチレンオキサイド・グルコールの営業を三井東圧化学に移管した。
スチレンモノマーは、産構法の業種指定は1985年1月に行われ、設備処理は各社が自主的に進めた。
スチレンモノマー 設備処理(単位:千トン)
処理前 処理 処理後 旭化成
川崎
65
:
:
水島
330
:
:
計
(395)
( 50)
(345)
出光石化
千葉
160
160
電気化学
千葉
160
160
三井東圧
大阪
90
90
0
新日鐵化学
戸畑
18
18
大分
150
150
計
(168)
( 0)
(168)
東洋曹達
四日市
91
91
三菱油化
鹿島
169
:
:
四日市
241
:
:
計
(410)
(100)
(310)
住友化学
千葉
100
100
0
日本オキシラン
千葉
225
225
合計:
1,799
340
1,459
追って、産構法終了後の動向を述べる。
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