三井化学は4月4日、ドイツのHeraeus Holdingsから
歯の修復材などを製造・販売する歯科材料事業 Heraeus Dental
を買収すると発表した。
買収額は、有利子負債を含め4億5000万ユーロ(約543億円)。
Heraeus は19世紀半ばに白金の産業用途向けに酸水炎で2kgの白金溶解に成功、以来、高温技術を駆使した貴金属の素材、工業用センサー、歯科、医療用製品、石英ガラス、そして特殊光源を世界中で製造販売している。
Heraeus Dental は歯科材料ではトップの供給者の1社であり、多種類の材料を供給しており、次の利点を持つ。
① 長い歴史を通じて獲得した歯科材料事業に関する豊富な知見と業界でのプレゼンス、
② 歯科材料市場におけるHeraeus Dentalの確固たるブランド力、
③ 世界20ヶ国以上に拠点を有するグローバル販売ネットワークとグローバル経営ノウハウ
しかし、最近は新しい材料や治療方法が導入されており、同社の伝統的な貴金属材料の使用は劇的に減少している。
他方、三井化学は、同社が70%、歯科材料・歯科模型・歯科教育関係商品・ネイル関係商品を扱う(株)ニッシンが30%出資するサンメディカルで歯科材料に進出している。
1981年に当時の三井石油化学とニッシンが歯科材料などの製品を製造・販売することを目的に設立、以来、接着材料「スーパーボンド」 を主製品として接着歯学の進歩に寄与してきた。
1996年にISO9001の認証を取得し、医療機器の品質管理マネジメントシステムISO13485の認証を取得し、世界標準での製品設計、生産、品質管理を行っている。
石油化学の不振のなか、三井化学は景気変動の影響を受けにくいヘルスケア材料事業の拡大を目指しており、そのなかで歯科材料は需要が安定しているほか、世界的な高齢化で成長が期待できると判断し ているが、グローバル展開が課題となっていた。
これに加え、歯科材料市場においては、貴金属から樹脂等の他の素材へのシフトが起こっており、ポリマー技術等の化学領域に強みを持つ同社がHeraeus Dentalを譲り受けることにより、今後の成長を一層加速させることができると判断した。
今回の買収対象は株式取得対象が17社、資産取得対象が9社、計26社に及び、取得対象は下記各国にある。
欧州:ドイツ、オランダ、フランス、英国、イタリア、オーストリア、ハンガリー、スウェーデン、スイス
米大陸:米国、メキシコ、ブラジル
アジア:日本、中国(北京、上海)、韓国(51%出資JV)
オセアニア:豪州日本にはHeraeus Holdingsの子会社ヘレウスがあるが、歯科関連はヘレウス・クルツァージャパンが、予防・保存・修復・補綴分野の歯科治療器材を包括的に提供しており、これが今回の買収対象に含まれている。
三井化学は100%出資の持株会社を設立し、同社が取得の上、統括・管理するとしている。
Heraeus発表では、今後も本社はドイツのHanauに置き、現在の経営陣はそのまま残り、現在の戦略も継続するとしている。
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Heraeus Dentalの2012年12月期の売上高は3億5360万ユーロで、営業利益は1,620万ユーロ(20億円)となっている。
これから見ると、買収額 4億5000万ユーロ(約543億円) は高過ぎる感もあるが、世界中のこれだけの国で、確立している有力ブランド力と販売ネットワークを一挙に確保出来ると考えると高くはないかも知れない。
Heraeus Dental のシェアは減少しており、早急に市場のニーズに合った製品を供給できるかどうかがキイである。
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