三菱ガス化学と三菱商事は4月9日、トリニダード・トバゴ共和国において、同国政府及び同国のNeal
& Massy Holdingsとともに、メタノール年産能力100
万トン、ジメチルエーテル(DME)年産能力10 万トンの製造事業を検討することに合意したと発表した。
4月8日に現地でNational Gas Company of Trinidad and Tobago (NGC) とNational Energy
Corporation of Trinidad and Tobago (NEC)も加わり、Project Development Agreement
を締結した。第一段階実施のため、Caribbean Gas Chemical が設立された。
投資額は850百万ドル程度と見積もられており、
本年度中に最終投資判断の上、2014年第2四半期にLa BreaのUnion
Industrial Estateで建設を開始し、2016年度中の生産開始を目指す。
メタノールを世界中で販売すると共に、同国政府と協力し、同国
と周辺カリブ諸国において、DMEのディーゼル燃料代替促進に向けたプロモーションを行う。
Neal & Massy は卸売、不動産、自動車販売・メンテナンス代理店、産業用ガス製造供給、ホテル経営等、幅広い事業をカリブ全域で展開 している。
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Trinidad Tobagoには同国の天然ガスを利用する合計7つのメタノールプラントがPoint Lisasにあり、能力合計は660万トンに達する。
国営 Trinidad and Tobago Methanol Company
1999年に子会社を統合した。
下記のメタノール5工場のほか、アンモニア/尿素プラントを持つ。
子会社
統合Trinidad and Tobago Methanol Company (TTMC) 1984年 TTMC I 46万トン 1996 TTMC II 55万トン Caribbean Methanol Company Limited (CMC) 1993 50万トン Methanol IV Company Limited (MIV) 1998 55万トン M5000
(5000T/D+既存プラント排ガスで400T/D)2005 184万トン 合計 400万トン
Methanex 及び Atlas Methanol
工場 能力 備考 Methanex 85万トン Atlas Methanol 170万トン BP 36.9%/Methanex 63.1%
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SABICとSinopecは2012年2月、Trinidad and
Tobago に共同で53億ドルを投じてメタノールコンプレックスを建設する件で同国政府との交渉を開始した。
同地の天然ガスを原料とするもので、立地はPoint Lisas。具体的な計画は明らかにしていないが、地元紙はMethanol-to-olefins (MTO) と Methanol-to-petrochemicals (MTP) が含まれていると報じた。
しかし、SABICは本年3月3日、この計画を取り止めると発表した。同国政府との間で原料の天然ガスの価格と供給条件で合意に達せず、交渉を中止することで合意した。
これについては以下の問題が噂された。
・野党議員も、Sinopecが参加することを知らなかった。
・米大使は政府に書簡を送り、米国企業などの競合相手を抑えてSABICを選ぶことに懸念を表した。・SABICはNYMEXでの天然ガス価格が当時 100万BTU当たり2.48ドルであるのに対し、1ドル以下を要求していると伝えられた。
・SABIC/Sinopec側は政府が十分な量の天然ガスを供給できるのか疑問を持ったとされる。
この入札には、三菱ガス化学とNeal and Massyが米国のIntegrated Chemicalsと提携して参加していたほか、サウジのSaudi International Petrochemical (三井物産等のJapan-Arabia MethanolとSipchemのJV)も参加していた。
SABICとSinopecが選ばれた際には、日本大使館も懸念を表する書簡を送ったとされる。
今回の三菱ガス化学と三菱商事の同国政府との合意は、SABIC/Sinopec 撤退に伴う代替案と思われるが、Methanol-to-olefins (MTO)などは含まれていない。
メタノールをそのまま海外に輸出するのではなく、これを原料にMethanol-to-olefins (MTO)
、Methanol-to-petrochemicals (MTP) により付加価値の高いプラスチック産業の基礎をつくるという同国政府の戦略は先送りされる。
2008年9月、LyondellBasell はNational Gas Company、National Energy Corporation、Lurgi AGの各社にTrinidad and Tobago 政府も参加して、Methanol、Methanol-to-Propylene、PP(490千トン)プロジェクトのProject Development Agreement に調印したと発表したが、その後の進展は報道されていない。
2007/12/25 Basell など、Trinidad and Tobago で PP 事業
三菱ガス化学と三菱商事は一切触れていないが、Neal & Massy 側の発表では、第二期計画として、Methanol-to-olefins (MTO)でエタンからエチレン、MEGを、またプロパンからアクリロニトリルを生産し、更にメタノールと合成ガスから追加のMEGと酢酸を生産するとしている。
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三菱ガス化学のメタノール事業は以下の通り。(単位:千トン)
同社によると、世界需要は年6千万あり、今後も年率4-5%の成長が見込まれている。
場所 | 能力 | 出資比率 |
中国重慶 |
ー |
MGC 51%/重慶化医49% 2009/10/13 三菱ガス化学、重慶のメタノール計画撤回 |
ベネズエラ | ① 750 ② 850 |
2006/12/27 三菱ガス化学、ベネズエラのメタノール合弁増設 2010年②生産開始 |
ブルネイ | 850 | 2007/4/23 三菱ガス化学、ブルネイのメタノール事業決定 2010年生産開始 |
サウジ | 3,300 1,700 |
2006/3/31 サウジ・メタノール計画 2008年 No.5 1,700千トン生産開始 |
合計 | 7,450 |
三菱ガス化学は日本の各社が操業停止する中、生産を継続したが、1995年7月に新潟の
264千トンを操業停止し、設備は中国内蒙古の伊克昭盟化工集団総公司に売却した。
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