中国商務部は4月22日、丸紅による米穀物大手Gavilonの買収を厳しい条件付きで承認した。公告22号で明らかにした。
米欧の規制当局は承認済みで、中国の審査が長引いていた。
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丸紅は2012年5月29日、北米で穀物・肥料・エネルギーのトレーディング事業を展開するGavilon
Holdings の持分すべてを取得すると発表した。
買収価額は36億ドルだが借入金が20億ドル程度あり、合計で56億ドル程度となる。
丸紅はこれまでに北・南米に穀物供給ソースを確保し、アジアを中心に販売力を強化してきたが、Gavilonが全米に持つ140を超える穀物集荷関連拠点を取り込み巨大な穀物集荷流通網を確保し、更に、Gavilonのブラジル、豪州、ウクライナなどの拠点を丸紅の持つ資産と組み合わせ、活用する。
世界の穀物貿易における2012年度の取扱量は、丸紅 25百万トン、Gavilon 30百万トンで、合計55百万トンとなる。
肥料分野では、Gavilonは、肥料受け出しターミナル・倉庫・肥料混合設備を、米国内の戦略拠点として59 ヵ所保有している。
丸紅は1987年にBayerから30百万ドルで米国第2位の農業資材ディストリビューターのHelena
Chemicalを買収し、リテール事業を行っているが、リテール事業とホールセール事業を有することになり、相乗効果を狙う。
Gavilonはメキシコ、南米、アフリカ等にも15 ヶ所の輸入ターミナル・倉庫・肥料混合設備を保有し、世界20 ヵ国以上において肥料販売を行っている。
Gavilonは原油・天然ガス等を中心にエネルギー事業も展開しており、北米において約8百万バレルの原油在庫施設、約100億立方フィートに及ぶ天然ガス在庫施設および約50万バレルの石油製品在庫施設などの物流ネットワークを活用し、トレーディング事業を行っている。
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中国が厳しい条件を付けた背景には食料確保への懸念があるとみられる。
商務部による分析では、中国は世界最大の大豆輸入国で2012年の輸入は全世界の貿易量の60%を占める。
2012年の中国の大豆輸入は5,838万トン、うち丸紅の輸入量は1,050万トンで第一位であった。Archer Daniels Midland(ADM)やCargill、Bungeなどの大手は丸紅よりもはるかに少なかった。
丸紅の輸出の99%が中国向けであり、Gavilonは北米の大豆の集荷、保管、輸送の巨大能力を持つため、両社の統合で大きな強みを持つことになるとしている。
このため、2社の合併は「中国の大豆輸入市場への支配力を強め、競争を排除あるいは抑制する」可能性があるとし、
(1)中国向け輸出・販売業務を分離独立すること
(2)例外を除き、丸紅はGavilonから大豆を買い付けてはならない
(3)市場情報を交換してはならない――といった義務を課した。
これにより丸紅は、買収の狙いであったGavilonの大規模な米国のネットワークを利用できず、独自に大豆を購入しなければならない。
買収の狙いは主に中国向け輸出のためと思われ、高額での買収の意義が失われることにもなる。
米大豆協会では、丸紅とGavilonの連合が中国のような大規模な市場で供給を管理したり、価格操作を行うことは不可能であり、中国が課した条件は驚きだとしている。
商務部は同日、GlencoreによるXstrata買収も承認したが、XstrataのペルーのLas Bambas銅鉱山の売却を条件にしている。 (下記)
丸紅の大豆の場合もGlencoreの銅の場合も、中国でのシェアはEUの独禁当局が問題とする30~35%を下回っており、非常に厳しい規制である。
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中国商務部は4月22日、スイスの商品取引大手Glencoreと鉱山大手Xstrataの合併を厳しい条件付きで承認した。公告20号で明らかにした。
EUは欧州の資産を売却して事業を縮小することを条件に2012年11月に承認、南アも本年1月に条件付きで承認しており、中国の審査が長引いていた。
Glencore Internationalは2012年2月7日、同国の資源大手Xstrataを260億ポンドで買収し、対等合併すると発表した。
しかし、Xstrataの株主のカタールの政府系ファンド Qatar Holdingなどが合併条件の見直しを求めた。
Glencoreは9月7日、Xstrataの買収案を引き上げた。
Glencoreはまた、株主による承認を得やすくするため、合意の仕組みを変更する可能性についても提案した。両社は2012年11月にそれぞれ株主総会を開き、合併案を承認した。
2012/11/26 Glencore とXstrataの合併
中国商務部は合併会社は世界最大の銅の生産者になるため、中国企業が値上げを呑まされるのを恐れた。
これに対し、Glencore側からXstrataのペルーのLas Bambas 銅鉱山を売却する案を提示した。
今回の承認に当たり、この鉱山の売却の手続きが細かく決められている。
このほか、Glencoreは中国のメタル不足の懸念を緩和するため、2020年12月31日まで中国企業に対し最低量の銅、亜鉛、鉛を供給する。
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