米財務省、日本に通貨安競争の回避を要求、中国は為替操作国とせず

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米財務省は4月12日、議会に為替報告書(Semi-Annual Report on International Economic and Exchange Rate Policies)を提出した。

特にアジアの多くの国での為替レート管理を問題にしている。

日本に関しては、日銀の金融緩和策が円安・ドル高につながったことに関連し、「競争的な通貨切り下げを慎むよう引き続き迫っていく」と明記した。

中国については
「為替操作国」との認定は見送った。財務省は1992-94年に中国を為替操作国と認定したが、それ以来、どの国に対してもこうした認定は行っていない。

1)日本

日本は経済を復活させ、成長させるために、国内経済で競争を不当に制限している規制を緩和することにより、国内経済を活性化するための抜本的で徹底した手段をとることが必要である。

マクロ経済の刺激策は短期的には有効でも、構造改革の代わりにはならない。

日本に対して、G-7とG-20で合意した約束、即ち、国内の手段を用いて国内目的の達成を目指す姿勢を維持し、通貨安競争を避け、競争目的のために為替相場を目標としないよう求める。

財務省は日本の政策をきっちりと見守っていく。


参考

G7財務相・中央銀行総裁会議は本年2月12日、緊急共同声明を発表、各国の財政・金融政策は「国内目的の達成に向けられており、為替レートを目標にはしないことを再確認する」と初めて明記し、「通貨安競争」をしないことを申し合わせた。

2月16日のG20財務相会議は2月16日、「競争的な通貨安を回避する」、「金融政策は国内の物価安定や景気回復を目的とすべき」などを明記した共同声明を採択、日本を名指しすることは避けながらも、世界的な通貨戦争の観測の抑制に努めた。

G7、G20で各国が日本を名指しで批判しなかった理由について、竹中平蔵氏が田原総一朗氏との対談(3月24日:東京プレスクラブ)で次のように述べている。

リーマン・ブラザーズの倒産のときに、まずアメリカが金融緩和して、言ってみればドル安政策打った。 (田原)
 

米国、英国も、欧州全体が金融緩和をやっており、「日本は一番遅れてやったわけで、その一番遅れて、しかもその程度はまだアメリカよりも充分じゃないわけで、日本だけが批判されるという風に考える方がおかしい」

(その時、日本がやらなかったのは)「それは白川さんだからやんなかったんじゃないですか。----基本的には、(民主党政権が)経済成長に対して関心を払わなかったっていうのが一番大きいです。分配のことばっかりやった」

ダボス会議でドイツのメルケル首相が円安を批判したが、「そのとき皆なんて言ったかっていうと、『ドイツが言うなよ』って言ったわけですよね。ドイツはギリシャとスペインのせいでユーロが下がりましたと。そうすると漁夫の利を得たような形で輸出力が強いドイツがわーっと、 一人勝ちになっちゃったわけでしょ。だからそんなこと言うのはおかしい」 

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2)中国

人民元は4月初め時点で、2010年6月の弾力化前と比べ、米ドルに対し10.0%引き上げられた。(グラフの通り、その後もさらに上昇)
両国の物価の差を勘案すると、人民元は2010年6月から2013年2月までで実質16.2%上がったことになる。

中国の経常収支黒字は2007年にはGDPの10.1%あったが、2012年には2.3%に減っている。

中国政府は資本の動きの自由化に向かっていろいろの手を打っている。

これらを勘案し、財務省は中国を為替管理国とは見做さない。

しかしながら、人民元は依然として著しく過小評価されており、介入も再開されたように見える。人民元の更なる切り上げが必要である。

財務省は今後も、人民元の動きを注視し、通貨変動の幅を広げ、透明性を高め、強く、バランスの取れたグローバル経済を支えるよう中国政府の政策の変更を求めていく。


付記

中国人民銀行の易綱・副総裁は4月17日のIMF春季会合のパネルディスカッションで、近い将来、人民元の変動幅を拡大する計画であることを明らかにした。また、今後数年かけて人民元の自由化を着実に推し進めていく方針も示した。




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