安徽省合肥市の合肥國軒高科動力能源有限公司 (Hefei Guoxuan High-tech Power Energy) は上海市松江区で自動車用のリチウムイオン電池工場の建設を計画していたが、反対運動を受け、5月15日に事業計画を撤回すると表明した。用地を当局に返還、補償は求めないとしている。
この企業は当初、約10億元(約167億円)を投じて工場を建設する計画であった。
しかし環境汚染を心配する地元住民が工場建設に反対、4月21日に続き、5月に入り何度も数百人が計画撤回を求めてデモ行進した。
5月11日には1000人以上がデモした。
これに対し地方政府は、電池の工程には材料(anodeとcathode)製造とバッテリーセルの製造、組み立ての3工程があるが、今回の工場は材料製造を含まず、後の2工程のみであり、廃水やガスを正しく処理すれば環境汚染の懸念は全くないと説明した。
上海化工研究院は昨年9月に環境評価報告を発表し、環境汚染の可能性はほとんどないとした。
報告では廃水は出さないとしているが、地方政府は毎日5トンの廃水を出すと述べている。
このため、住民はこの報告の信頼性を疑っている。
昨年末には上海化工研究院がアンケートを取り、68%が計画に賛成との結果を得ており、計画に賛成する住民は、デモに参加した数百人は近くの住民8万人のほんの一部であり、公聴会を開催すべきだと主張していた。
しかし、計画に反対する住民は逆に、このアンケートの対象は8万人の住民のうちのたった150人に過ぎないと反論し、公聴会を求めた。
工場側は住民の反対を受け、計画を撤回した。
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中国では環境汚染を懸念する工場建設反対運動が相次いでいる。
雲南省昆明市では5月4日、PetroChinaの石油化学工場の建設に反対する住民約1千人が市中心部の広場に集まった。
5月16日にも数百人がデモを行った。
PetroChinaは本年2月、昆明市郊外での精製事業について中国国家発展改革委員会(NDRC)から承認を受けたと発表した。
NDRCへの提出資料ではガソリンなどのほか年産50万トンのパラキシレン(PX)も生産するとなっている。
新華社によると、昆明市の市長は、市民の反対が多ければ計画を中止する方針を表明した。
中国ではパラキシレンは非常に毒性の高いものとの認識があり、各地で反対運動が起こっている。
2006年11月に台湾資本のDragon Group(騰龍グループ)が福建省厦門の海滄投資区で芳香族とPTAプラントの建設に着工した際に、「事故が起こると何千トンもの毒物が放出される」といった内容の記事がインターネットに次々掲載され、反対運動が広がったのが始まりである。2007/6/11 中国のインターネット反対運動が石化計画を止める
2011/8/15 中国・大連で化学工場の撤去求め デモ
2012/10/30 寧波で大規模デモ受け、SinopecのPX増設取り止め
四川省成都市でも5月4日、PetroChina が建設中の成都彭州石油化学に反対するデモが呼びかけられたが、地元当局が「地震対策訓練」に名を借りて警察官を大量動員し、抑え込んだという。
成都彭州石油化学はPetroChinaが75%、成都石化(PetroChina と成都市のJV)が25%出資する。
80万トンのエチレンコンプレックスに加え、10百万トンの製油所を建設するもの。
住民は空気と水の汚染を懸念するとともに、地震の巣である地域での建設に反対している。
彭州市は、2008年に死者行方不明9万人を出した四川大地震(中国では汶川大地震)の震源地の汶川県と同じ断層帯にある。
PetroChinaでは、この計画は中国の環境当局とNDRCの承認を得ており、地震に対しても評価を受けているとし、空気と水の問題は重視しており、もし環境問題が発生すれば工場を停止すると約束した。
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2012年7月には江蘇省南通市にある王子製紙の工場から出る排水が環境汚染を引き起こす恐れがあるとして、住民1万人以上が抗議デモを始めた。
南通市政府が経済技術開発区に王子製紙などを誘致する際、廃水を南通市が建設する約100kmのパイプラインで黄海に排出すると約束していた。完成後、王子製紙の工場から1日15万トンが排水される予定だった。
住民の反対を受け、南通市政府はパイプライン建設計画を「永遠に」取り消した。
2012/8/1 王子製紙の排水に抗議、中国江蘇省でデモ
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