韓国の原発10基が稼動中断、夏の電力不足憂慮

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韓国の原子力安全委員会は5月28日、稼働中や建設中などの原発6基の安全装置に、性能確認試験の結果を示す書類が偽造された部品が使われ、一部は緊急時に十分機能しない不良品であることを確認したと発表した。

事故発生時に冷却装置を作動させる信号を送る「制御ケーブル」が、カナダでの性能確認試験の書類が偽造された不良品と判明した。

委員長は「問題になった制御ケーブルの原本の試験成績書を分析した結果、問題部品が試験を通らなかったにもかかわらず検査を担当した業者の職員がこれを偽造した」と説明した。

問題の6基は 、稼働中の新古里2号機と新月城1号機、点検停止中の新古里1号機、運転の許可審査中の新月城2号機、及び建設中の新古里原発 3~4号機。

安全委は稼働中の2基を停止させることを決めた。ケーブル交換には最低4カ月かかる見通し。
計画予防整備中の新古里1号機に対して整備期間を延長して不良部品を交換するよう、現在運営許可の審査段階である新月城2号機は運営許可前までに部品を交換するように 命じた。

  韓国の原発

韓国には原発が23基あるが、整備などで既に停止中の8基を含め10基の稼働が止まることになる。
この場合、原子力発電所全体の設備容量2071.6万キロワットのうち37%の771.6万キロワットを稼動できなくなる。

現在、古里1・2号機、新古里1号機、ハンピッ(もと霊光)3号機、月城 1・2号機、 ハンウル(もと蔚珍)4・5号機の計8基が停止中。
また6月8日には月城3号機の計画予防整備が予定されている。

韓国政府は、夏場の電力需要がピークに達する8月第2週に200万キロワットの供給不足が予想される「類例のない電力難」になると国民に節電を求めている。
産業部は今月末に国家政策調整会議を経て電力受給総合対策を発表する。



韓国の原発一覧 (ハンウルは元の蔚珍、ハンピッは元の霊光)

 

 

運転開始 原子炉形式 容量
 kW
 最近のトラブル

書類偽造

2012/11 今回
ハンウル

1

1988/9/10 加圧軽水炉 (PWR) 95万 2011/12 復水器の異常で停止
2012/8/23
異常を知らせる信号が点灯、停止
   
2 1989/9/30 加圧軽水炉 (PWR)  95万      
3 1998/8/11 加圧軽水炉 (PWR)  100万   稼働のまま交換  
4 1999/12/31 加圧軽水炉 (PWR)  100万 2011/9 定修で伝熱管の亀裂発見。
蒸気発生器自体の交換が必要と判明(1-2年要)
  停止中
5 2004/7/29 加圧軽水炉 (PWR) 100万     停止中
6 2005/4/22 加圧軽水炉 (PWR) 100万      
新ハンウル 1 2012/5 着工 KSNP (APR-1400) 140万      
2 2012/5 着工  KSNP (APR-1400) 140万      
3  計画 KSNP (APR-1400) 140万      
4  計画 KSNP (APR-1400) 140万      
ハンピッ

 

1

1986/8/25 加圧軽水炉(PWR) 95万      
2 1987/6/10 加圧軽水炉(PWR) 95万      
3 1995/3/31 加圧軽水炉(SYSTEM80)  100万   稼働のまま交換 停止中
4 1996/1/1 加圧軽水炉(SYSTEM80)  100万   稼働のまま交換  
5 2002/5/21 KSNP(OPR-1000)  100万 2012/10/2 蒸気発電機の水位低下し、停止 停止  
6 2002/12/24 KSNP(OPR-1000) 100万 2012/7/30 故障で自動発電停止 停止  
月城 1 1983/4/22 CANDU  67.8万     停止中
2 1997/7/1 CANDU 70万     停止中
3 1998/7/1 CANDU 70万     停止予定
4 1999/10/1 CANDU 70万      
新月城 1 2012/7/31 KSNP(OPR-1000) 100万 2012/8/19 制御棒制御系統の故障で停止(稼働19日目)   運転停止
2 試運転中 KSNP(OPR-1000) 100万      
古里 1 1978/4 加圧水型(PWR) 55.6万 2012/2/9 電源喪失で停止、1か月以上隠ぺい   停止中
2 1983/7 加圧水型(PWR) 60.5万 2011/6 継電器の設計ミスで停止   停止中
3 1985/9 加圧水型(PWR) 89.5万 2011/12  タービン発電機に過電圧で停止    
4 1986/4 加圧水型(PWR) 89.5万      
新古里 1 2011/2 加圧水型(PWR) 96万 2012/10/2 制御系統の故障で停止   停止中
2 2012 加圧水型(PWR) 96万     運転停止
3 建設中 加圧水型(PWR) 134万   交換  
4 建設中 加圧水型(PWR) 134万   交換  


韓国では昨年来、上の表のとおり、原発の停止が相次いでいる。

2012/10/6   韓国で原発停止相次ぐ

更に昨年にも品質保証書の偽造事件があった。

韓国知識経済部は11月5日、原発の部品供給業者8社が外国機関の発行する品質保証書を偽造し、原発事業者の韓国水力原子力に部品を納入していたことが分かり、光州地検に捜査を依頼したと発表した。

偽造保証書で納入された部品は、ヒューズやスイッチなどの消耗品で、全体の98.2%が霊光原発5・6号機に使用された。

韓国水力原子力は霊光原発5・6号機の運転を同日から停止し、該当部品を交換する。
霊光原発3・4号機と蔚珍原発3号機にも数十個ずつ使われたが、交換対象の部品が少なく、運転中に取り換えられる。

大統領直属原子力安全委員会の原発部品官民合同調査団は12月10日、「建設中の新古里原発3・4号機の消火水ポンプ用制御パネルの耐震試験成績書が偽造されたことを確認した」と明らかにした。 このパネルが不良品であれば火災が起きた時に消火水ポンプはまともに作動できなくなる。

「納品業者がこの部品に対する耐震性能試験検査を受けていないにもかかわらず、検査を受けたかのように試験成績書を偽造した」と話した。

ーーー

日本のハイテク企業が韓国に生産拠点や研究所を相次いで設置している。

地理的に日本と近く、人件費、電気料金、税金などのコストが日本より割安なことが理由だ。

特に3.11震災後は電気が大きな要因となっている。

東レは2011年6月に、韓国・慶尚北道の亀尾国家産業団地で炭素繊維工場の起工式を行ったが、日覚昭広社長は「日本では電気料金がどれだけ上がるか分からないので、積極的に韓国への投資を増やすことにした」と説明した。

エネ庁  電気料金 国際比較(グラフ内の数字は日本の料金に対する比率)
  

韓国の電気代が安い第一の理由は、発電単価の安い石炭と原子力で発電電力量の約8割をまかない、かつ韓国の寒冷な気候のため日本と比べて原子力の設備利用率が高い(95%以上)ことである。

これに加えて、韓国の電気料金は「政策的料金」という位置づけのもと、料金をコスト以下に設定している。
電気料金が原価割れしている国は、OECD加盟国のうち韓国だけである。

これ以外にも、韓国はいろいろの問題を抱えている。

2011/9/28  韓国の電力事情

今後、電気料金の大幅な引き上げや、大停電のおそれがある。



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