欧州、揺れる緊縮路線

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イタリアの中道左派、民主党のエンリコ・レッタ前副書記長は4月27日、ベルルスコーニ前首相率いる中道右派の政党、自由国民などと大連立による政権樹立で合意し、ナポリターノ大統領に閣僚名簿を提出、大統領は承認した。

イタリアでは議会が解散した昨年12月以降、約4カ月にわたりモンティ前首相が選挙管理内閣の首相を続けていた。

イタリア下院は29日、上院は30日にレッタ新内閣を信任し、 新政権は正式に発足した。

レッタ氏は29日の下院での所信表明で、「財政規律は重要」としながらも、イタリア経済は10年以上に及ぶ景気低迷から脱却できておらず依然深刻な状況にあるとし、「財政再建だけではイタリアは死んでしまう。成長政策をこれ以上先延ばしにすることはできない」と言明 、EUが進める緊縮路線一辺倒の流れから成長・雇用促進に軸足を移す考えを示した。

同氏は広範な不動産税改革を行う方針を示し、7月に予定されていた付加価値税の引き上げも先送りすることを望むと述べた。
福祉制度の強化や、若者や失業者を雇用する企業への給与税減税、女性の労働参加促進など、一連の改革に意欲を示した。

レッタ新首相は4月30日夕、ベルリンでドイツのメルケル首相と会談した。

その後の記者会見では メルケル首相に一定の配慮を示し、「危機克服のため、ドイツと高度な協調関係を築きたい」と連携の重要性を強調し、「財政健全化も確固とした我々の義務だ」と述べた。

メルケル首相も これに応じ、成長と緊縮は相反するものではない、雇用創出が欧州の最優先事項となると述べた。

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多額の財政赤字を抱えるスペイン政府は、EUに対し、来年までに財政赤字をGDPの3%以内に抑えると約束し、付加価値税の増税や公務員の給与削減など財政再建を進めてきた。

しかし、財政緊縮策が景気の悪化を招き、本年の経済成長率はマイナス1.3%と大幅に悪化する見通しとなり 、財政赤字はGDPの6.3%になると予想され、来年までの目標達成はほぼ不可能となった。

このため、財政再建の達成時期をこれまでより2年遅らせて、2016年にすることを決めた。

欧州委員会はこれを理解できるとの立場を示したが、正式決定は5月29日となる。
IMFも緊縮路線を緩めるスペインの方針を歓迎している。

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各国が財政再建策に取り組んでいるが、スペインやギリシャでは4人に1人が失業しており、南欧を中心に不満が噴出している。

ユーロ圏の中核諸国の基本的な成長展望に関する長期的な強い不安感から、PIIGSだけでなく、FISH(フランス、イタリア、スペイン、オランダ)が問題になっている。
これら4国はユーロ高と不況に悩んでおり、ドイツの独り勝ちとなっている。

2013/3/5   ユーロ圏の不安、PIIGS からFISHに拡大

EUの欧州委員会は5月3日、実質経済成長率見通しを発表した。2013年、14年とも、2月の予測から下方修正した。

  2013年 2014年
EU -0.1 1.4
ユーロ圏 -0.4 1.2
ドイツ 0.4 1.8
英国 0.6 1.7
フランス -0.1 1.1
イタリア -1.3 0.7
スペイン -1.5 0.9
EUのバローゾ欧州委員長は4月22日の講演で「緊縮策は限界に達しており、政治や社会を支える対策が必要だ」との見解を示した。
レーン副委員長(経済・通貨担当)はこれまでの改革などで「財政再建のぺ一スを緩めることができる」とする。

ラカルドIMF専務理事は英国に関して「緊縮のぺースを調整する時期にさしかかった可能性がある」と指摘、ルー米財務長官も「財政余力のある国は、経済成長のけん引役である消費を刺激すべきだ」と緊縮策の緩和を訴えた。

一方、ドイツはこれら発言に反発、メルケル首相は「緊縮策には邪悪な響きがあ り、私は予算の均衡と呼ぶ」と規律重視を貫く。

欧州中銀は5月2日、政策金利を0.75%から過去最低の0.5%に引き下げた。ドラギ総裁は「金融緩和を必要な限り続ける」と述べた。
特に雇用悪化が目立つ南欧での企業向け融資拡大を促す。

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ドイツは債務国支援の条件に「倹約」を押し付け、「ドイツによるヨーロッパ」という上下構造が出来ているとの見方が現れている。

ウルリッヒ・ベックの「ユーロ消滅? ドイツ化するヨーロッパへの警告」(岩波書店) は、債務国の予算決定に介入して主権を奪い、ユーロ圏から切り離すことでEUや欧州の分断へと踏み出しかねないドイツ主導の権力地図に警鐘を鳴らし、危機を克服しながら欧州の連帯と統合を強化する方策を提起する。

「ドイツによるヨーロッパ」という上下構造ではなく、本来は、EU参加国の間には公平原則、均衡原則(大国・小国、強国と他の)、和解原則(責任転嫁や蔑みでなく)、搾取防止原則が必要であると説く。

イタリアのジャーナリストのエウジェニオ・スカルファリの発言を紹介している。

「ドイツがユーロを挫折するような政策をとるなら、欧州の挫折はドイツの責任。 第一次、第二次の両大戦とホロコーストに続く第四の罪になる」



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