豪州鉄鉱山開発で2つの動き

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中国需要の減で鉄鉱石の価格が低迷するなか、豪州の鉄鉱山開発を巡り、日本企業で2つの異なる動きがあった。

1)伊藤忠と三井物産、ジンブルバー鉄鉱山の新規権益取得

伊藤忠商事と三井物産は6月21日、BHP Billitonの鉄鉱石事業の一部で、西豪州Pilbara地区のJimblebar 鉄鉱山を開発しているBHP Iron Ore Jimblebarの株式を一部取得する契約を締結した。

取得後の権益比率は伊藤忠商事8%、三井物産7%、BHP Billiton 85%となる。
取得総額は伊藤忠商事が約8億米ドル、三井物産が約7億米ドルで、両社はJimblebar 鉄鉱山に関連し今後発生する開発費用も、持分権益比率に応じ負担する。

Jimblebar 鉄鉱山は西豪州Pilbara地域のNewmanより東41km地点に位置し、年産35百万トン(100%ベース)体制に向け現在開発中 。

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両社とBHP Billitonは同じPilbara地区の
Mt Newman、Yandi、Mt. Goldsworthy の3つの鉄鉱石・鉄道・港湾JVを運営している。
このうち、Mount GoldsworthyはYarrie Nimingarra 地区とNewmanの北西のC地区に分かれている。

3社の持分は、今回のJVと同じく、BHP Billiton 85%、伊藤忠商事 8%、三井物産 7%となっている。

これら3つのJVの2012年度の出荷量は約180百万トンで、中国向けを中心に輸出している。

開発中の上記のJimblebar鉄鉱山(35百万トン)を含め、年間出荷量220百万トン体制へ向け、拡張を進めている。

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両社とBHP Billitonはこれまで、西豪州鉄鉱石事業の出荷能力拡張に向け、段階的な拡張計画(Rapid Growth Projects)を推進してきた。

2007年にはPort Headlandで行っていた最終処理プロセスをMt. Newman 鉱山に移設する工事や、鉄道と港湾の拡張を行った。

2010年には19.3億米ドルの先行投資を行い、鉄道・港湾、並びにJimblebar 鉱山(BHP Billiton 100%)の開発推進のため、資機材の調達や、鉄道複線化・港湾拡張工事のエンジニアリングを実施。

2011年には74億米ドルを投じ、港湾での鉱石ブレンディング用設備を新設、年間出荷能力を220百万トン超とした。

2012年には9.17億米ドルを投じて、Port Headlandの外洋に鉄鉱石出荷設備、内陸にストックヤード及び鉄道支線等の鉄鉱石供給設備を新設して年間100百万トンの港湾出荷能力を追加する計画の先行投資を決めた。

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足元の鉄鉱石需要は低迷し、アジア向けの豪州産スポット(随時契約)価格はピーク時に比べると4割程度安いが、両社は中長期でみれば需要は回復すると判断している。

両社は中長期的に見込まれる鉄鉱石の世界的な需要増に対応する為、今回の権益取得により、西豪州鉄鉱石事業の供給能力を更に拡充する。

なお、BHP Billitonは2004年にJimblebar鉱山の一部のWheelarra鉱区を中国の製鉄会社4社とのJVにサブリースした。
JVはWheelarra JV で、近隣のMt. Newman に出資する伊藤忠と三井物産も参加した。

 出資
  中国4社(武漢鋼鉄、馬鞍山鋼鐵、江蘇沙鋼集団、唐山鋼鉄集団)40% 
  
BHP Billiton  51%
  伊藤忠         4.8%
       三井物産         4.2%

Wheelarra JVは中国4社に25年間にわたり年間約12百万トンのMt. Newman鉄鉱石を供給する。
BHP Billitonはこれに加え、追加で10年間にわたり12百万トンの
C地区のMarra Mamba 鉄鉱石を供給する契約も締結した。


2)三菱商事、豪西部の鉄鉱山開発 を延期

豪州紙は6月17日、三菱商事が子会社Crosslands Resourcesの西豪州のJack Hills鉄鉱山開発とOakajee港湾・鉄道プロジェクトの作業を正式に延期したと報じた。

昨年11月には、コスト削減と縮小改編を発表していたが、JVパートナーが見つからず、今回の決定となった。

このプロジェクトは、Jack Hills鉱山の37億豪ドル規模での拡張と、Oakajeeでの港湾・鉄道インフラ整備の59億豪ドル規模の事業で合計96億豪ドルの予定であったが、Crosslands ResourcesのCEOは現状では100億豪ドルを超えるとし、パートナーの支援が必要としている。

三菱商事では、鉄鉱石の価格が下がっているため、現状では採算が合わないと判断した。

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三菱商事は2007年6月、豪州のMurchison Metalsと50/50JVで鉄鉱山拡張と輸送インフラの建設を行うことを決めた。
鉄鉱山開発のCrosslands Resources、これに関連する鉄道・港湾インフラ事業体のOakajee Port and Railを設立した。

Murchison Metalsには韓国のPoscoが14%出資している。

Jack Hills鉄鉱山では年産150万トン程度の小規模な試験操業が2006年末から開始されていたが、2011年頃に年産2,600万トン規模に拡張し、約420kmの鉄道を敷設、Geralton北方23kmにOakajee港を建設する計画であった。
当時は総事業費を30億豪ドルとみていた。

鉄鉱山の拡張には港湾・鉄道プロジェクトがキイとなるが、その後、建設予算は急騰、Murchison Metalsの資金繰りが難航したことから、同プロジェクトは保留状態が続いていた。

このため、三菱商事は2011年11月にMurchison Metalsの権益を3.25億豪ドル(約250億円)で買収し、100%子会社とした。

三菱商事はこの6 - 12カ月の間に提携先を求める意向で、候補とし中国の中鋼集団(SinoSteel)、宝山鋼鉄、鞍山鋼鉄集団、韓国のPoscoなどが挙がっていたが、いずれもまとまらなかった。

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西豪州での日本企業の鉄鉱山開発計画は以下の通り。

西豪州 Pilbara
  Robe River 鉱山
  
West Angelas鉱山
Robe River 三井物産   33%
新日鉄     10.5%
住友金属工業 3.5%
Rio Tinto 53%
西豪州 Pilbara
  Mt Newman
  Yandi
  Goldsworthy
   +
Jimblebar
BHP Billiton J/V 伊藤忠   8%
三井物産 7%
BHP Billiton 85%
西豪州中西部
  
Jack Hills 鉱山
Crosslands Resources 三菱デベロップメント
(三菱商事)
50%
Murchison Metals Ltd
 50%
三菱デベロップメント 100%
西豪州 Pilbara
  Beasley River 鉱山
Beasley River JV Beasley River
 Iron Associates 47%
新日鉄  60%
三井物産  20%
住友金属工業  20%
Hamersley Iron 53%
(Rio Tinto group)



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