公取委は6月6日、JNC(チッソから事業を引き継ぎ、2011年4月1日に営業開始)に対し、下請代金支払遅延等防止法(「下請法」)に基づき勧告を行ったと発表した。
JNCは、液晶材料の原材料の製造を委託している下請業者に対し、液晶材料の原材料の単価の引下げを要請し、この要請に応じた下請業者について、単価引下げ合意日前に発注した液晶材料の原材料について引下げ後の単価を遡って適用し、下請代金を減額した。
2011年6月~2012年6月の間に、下請2社に総額3509万円を減額していた。
同社は既にこれを返還しており、2012年7月の取締役会で、違反を認め、今後違反行為を行わないことを決議確認している。 「下請法の理解が不十分だった。再発防止に努めたい」としている。
今回の勧告の概要は以下の通り。
・取締役会決議と返還の事実を社員に周知徹底すること
・再犯防止のための社内体制の整備と、その内容の社員への周知徹底
・下請業者への通知
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下請法は物品の製造等の場合、資本金3億円超の事業者が資本金3億円以下の事業者を下請けに使う場合などに適用される。
親事業者は以下の行為が禁止される。
(ア) 受領拒否の禁止(第4条第1項第1号)
(イ) 下請代金の支払遅延の禁止(第4条第1項第2号)
(ウ) 下請代金の減額の禁止(第4条第1項第3号)ーーー今回のJNCへの勧告
(エ) 返品の禁止(第4条第1項第4号)
(オ) 買いたたきの禁止(第4条第1項第5号)
(カ) 購入・利用強制の禁止(第4条第1項第6号)
(キ) 報復措置の禁止(第4条第1項第7号)
(ク) 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(第4条第2項第1号)
(ケ) 割引困難な手形の交付の禁止(第4条第2項第2号)
(コ) 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(第4条第2項第3号)
(サ) 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止(第4条第2項第4号)
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中小企業庁では、下請取引の公正化を図るとともに、下請事業者の利益を保護することを目的として下請法に基づき対処している。
平成24年度は、親・下請事業者あわせて約27万社に対し書面調査を行い、違反のおそれのある1,158社に立入検査等を実施し、このうち1,035社、2,715件の違反行為について、書面による改善指導等を行うとともに、減額した下請代金等の合計約12億9400万円の返還等を親事業者に指導した。
このうち、重大な違反行為のあった1社について、公取委へ措置請求を行った。(平成22、23年度は各4社)
JNCはこの措置請求には含まれていない。
平成24年度の1社は、壁紙、床材、カーテン等のインテリア製品のメーカーで、「見本帳協力金」としての減額や、引下げ後の単価の遡及適用で下請事業者63社に総額約5億5,701万円を減額していた。
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