南アフリカのマンガン開発

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5月31日付の日本経済新聞は以下のとおり伝えた。

南アでマンガン権益 レアメタル確保へ官民が連携 中国の攻勢に対抗

新興国でのレアメタル(希少金属)資源確保に向けた日本の官民連携が動き出す。世界最大の埋蔵量を誇る南アフリカの鉱山の採掘権を新日鉄住金グループの日本電工などが取得する。頑丈な鋼材を生産するのに不可欠なマンガン鉱石の権益を確保。中国の攻勢に対抗するため、日本の年間輸入量の2割にあたる20万トンを日本企業に優先して輸出する。

鉱物専門商社アジアミネラルズ(本社・香港)が南ア北部に広がるカラハリ鉱床の一部の鉱区で採掘権の49%を獲得し、特定目的会社(SPC)を設立する。日本電工が1割超の出資を検討している。

独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)も、鉱山開発など投資の回収に時間がかかる案件を対象とする「産業投資出資金」の枠から2.5%(約10億円)を出す計画。「産業投資出資金」から鉱物資源の案件に拠出するのは今回が初めてとなる。

記事はマンガン権益を初めて取得するような印象を与えるが、実際には既に住友商事が南アの二大マンガン生産企業の1社に約13%の権益を所有している。

記事にあるAsia Mineralsは香港の企業だが、創立者で会長は日本人。
マンガンその他の合金鉄を扱う日本電工は、本事業への参加は明らかにしていないが、Asia Mineralsがマレーシアのサラワク州サマラジュ工業団地に建設する合金鉄生産プロジェクトには参加を決めている。

南アのマンガン開発の状況と、Asia Mineralsの事業を2回に分けて紹介する。

南アのマンガン開発

南アフリカ共和国はアフリカ最大のマンガン生産国で、生産量では中国に次いで世界2位。

 

2012年の中国のマンガン輸入は1,223万トン と日本のおよそ10.5倍もある。資源メジャーは需要が急増する中国向けの供給を優先しており、「安定したマンガン鉱石の調達先を増やすことが産業界の課題」(資源エネルギー庁)。(日本経済新聞記事)

マンガン生産地域は北ケープ州北部のKalahari Basinに集中している。

これまではSamancorとAssmangの二大企業が生産を行ってきた。

SamancorはBHP Billiton とAnglo AmericanのJVで、Hotazel鉱山(Wessels坑内堀鉱山とMamatwan露天堀鉱山)を運営する。

Samancorの近隣にはAnglo Americanの傘下Kumba Iron Ore所有の同国最大のSishen鉄鉱山がある。

Assmangは高品位鉄鉱石、高品位マンガン鉱石及びクロム鉱石の3つの鉄鋼原料資源を保有する世界でも類を見ない資源鉱山会社で、African Rainbow Minerals とAssore(住友商事出資)のJV。

Nchwaningマンガン鉱山とGloriaマンガン鉱山を運営し、Port Elizabethから鉱石を輸出する。
また、Cato RidgeにあるCato Ridge Alloys(Assmang 50%、水島合金鉄 40%、住友商事 10% のJV)でフェロマンガンを生産し、Durbanから輸出する。

マンガン鉱の南部のKhumaniとBeeshoekに鉄鉱山があり、Saldanha港から輸出する。
北東部のDwarsrivierにクロム鉱山があり、近くのMachadodorpでクロム合金鉄にし、Richards Bayから輸出する。

住友商事は2007年1月、Assoreの持株会社Oresteel の株式20%をOld Mutualから取得。
その後、2回に分けて9%をSacco家から取得し2008年6月には更に20%を取得し、総額で約450億円の投資で49%とした。Assmangへの持分権益は約13%に増加した。

http://www.sumitomocorp.co.jp/ir/doc/2009f/mineral2_09.pdf

参考 Black Economic Empowerment政策(BEE政策)
南アでは不当な差別によって歴史的に不利な立場に置かれてきた黒人、カラード、女性など(HDSA: Historically Disadvantaged South Africans)に対するアファーマティブ・アクションとして、これらの経済進出を支援するBlack Economic Empowerment政策(BEE政策) が採られている。
従来のBEE企業は所有と経営参加だけを尺度としたが、少数の黒人のみが恩恵を受けるとの批判を受け、Broad-Based BEE (B-BBEE)が採用された。出来るだけ広範に富を配分するのが目的。

南アでは最近、新しいマンガン鉱が次々に稼働しつつある。

    年産
能力
生産
開始
株主  
Samancor Hotazel鉱山
・Wessels坑内堀鉱山
・Mamatwan露天堀鉱山
300万t   BHP Billiton
Anglo American
 
Assmang ・Nchwaning
・Gloria鉱山
300万t   African Rainbow Minerals
Assore
 
United Manganese
  of Kalahari
Smart、Rissik、
Botha 地区
2011年
271万t
2011 Renova (ロシア) 49%
Majestic Silver (BBBEE) 51%
現状では世界4位
中国のSinosteelがRenova持分の買収を考えている。
Tshipi E nete
  Manganese Mining
Tshipi Borwa鉱山
(Kalahari地区)
 
240万t 2012 POSCOが参加(下図)
 
OM Holdingsはサラワクに合金鉄プラント建設
Tshipi Bokone鉱山    
Kudunane
  Manganese
  Resources
York地区鉱山 2014年
300万t
2013 Asia Minerals 49.0% (61.5%)
Bold Moves(BEE) 25.5%(25.5%)
NWC Manganese(BEE) 25.5%(13.5%)
 (  )は将来
Asia Mineralsがサラワクに合金鉄プラント建設
Hotazelピット    
Kalagadi Manganese Kalahari地区 300万t   ArcelorMittal 50%
Kalahari Resorces 40%
南ア産業開発公社  10%
鉱山サイトに焼結鉱設備(240万トン)
Coegaに製錬工場(32万トン)

Tshipi E nete 株主

南アフリカでは港までの輸送と港湾設備の整備が問題である。

現在、カラハリ地区から積み出し港 Port Elizabethまでの鉄道輸送能力は年間400万トンで、輸送枠は既存2社でほぼフルとなっている。
このほかダ-バン港積みでトラック便による輸送が年間100万トンとなっている。


「Asia Mineralsの事業」に続く。



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