武田薬品は6月13日、イスラエルのTeva Pharmaceutical とインドのSun Pharmaceutical の両社と和解したと発表した。
両社が米国で同社の胃食道逆流性疾患を治療するプロトンポンプ阻害薬 Protonix®(
一般名 pantoprazole)の物質特許が満了する2011年1月より前に後発品を販売したことに対し、武田薬品(が買収したNycomed)とPfizer
が特許侵害で訴えていたもの。
Nycomedは米国でPfizer
の子会社のWyethに独占的使用を許諾している。
和解により、Tevaは16億ドル、Sunは5.5億ドル、合計21.5億ドルの和解金を 支払う。このうち、Pfizer が64%の13.76億ドル、武田が7.74億ドルを受け取ることとなる。
しかし、本件は2011年1月以前の特許侵害に対応するものであり、武田薬品はそれ以後の2011年5月にNycomedの買収契約を締結(2011年9月30日に買収完了)したため、Nycomedの買収契約に基づき、受領する和解金の全額をNycomedの旧株主に支払うことにな る。
Nycomedの株主は下記の投資ファンド
Nordic Capital 41.2%
DLJ Merchant Banking 25.6%
Coller International Partners 9.7%
Avista Capital Partners 8.9%
Others 14.6%
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WyethはNycomedから米国におけるProtonixの独占的使用権を許諾されており、Protonixは同社の売れ筋商品であった。
Protonixに関する基本特許は、2011年1月まで有効であったが、TevaとSunはそれ以前にFDAからジェネリック版を販売する最終承認を取得した。
NycomedとWyethは基本特許の侵害を主張、訴訟を提起したが、仮差し止めが裁判所に却下され、Tevaは2007年12月、Sunは2008年1月にジェネリック版を発売した。
特許無効を理由に特許の失効前に販売するもので、特許が有効とされると3倍賠償となるため「リスクのある販売 at-risk launch 」と呼ばれる。
WyethのProtonix
の売上高は2007年に19億ドルあったが、TevaとSunによるジェネリック品の発売後、2008年の売上高は58%ダウンし、8億ドルになった。WyethはTevaとSunに対抗して、公認ジェネリック薬を米国で販売した。
(損害賠償訴訟でTevaとSunはこれを理由に賠償額の減額を主張したが、成功しなかった。)
WyethとNycomedは両社の特許満了前の販売から生じた損害賠償金を求め、訴えた。
2010年4月、陪審員は基本特許の有効性を支持し、Sunがこれを不服として起こした動議を7月に裁判所が却下した。
損害賠償額を争う裁判が始まった直後に双方は和解を決めた。
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Pfizerは2009年1月26日、Wyethを総額約680億ドルで買収する正式買収契約を締結した。
2009/1/27 Pfizer、Wyeth を買収
武田薬品は2011年5月、スイスのチューリッヒに本社を置く非上場製薬会社Nycomed
A/Sを買収すると発表した。
買収額は株式価値+純負債ベースで96億ユーロ(約1.1兆円)で、武田の既存事業と重複するため買収対象外の米国の皮膚科事業(Nycomed
US Inc.)の株式を除き、100%取得する。
同年9月30日に買収を完了し、同日をもって100%子会社とした。
2011/5/23 武田薬品、Nycomed社を買収
イスラエルのTeva Pharmaceutical は後発医薬品(ジェネリック)メーカー最大手。
2011/5/12 イスラエルの後発薬最大手テバ、日米で買収
Sun Pharmaceutical
はインドのムンバイに本社を置くジェネリックメーカー。
1983年に設立後、ICNのハンガリー事業、Caraco Pharmaceutical、Taro Pharmaceutical などの買収、MSD(Merck)とのJV設立などで拡大、ジェネリック医薬品やノーブランド医薬品を中心にアメリカ合衆国やヨーロッパおよびアジアなど世界中に輸出している。
武田薬品は2012年にURL Pharmaを買収したが、その後同社の後発品事業をSunに売却している。
武田薬品とURL Pharmaは2012年4月、武田がURL Pharmaを800百万米ドルで買収することについて合意した。買収完了後、武田ファーマシューティカルズUSAに統合した。
URL Pharmaの2011年の売上高は約600百万米ドルで、そのうち痛風の予防および治療薬であるColcrysの売上高が430百万米ドル強を占めている。武田薬品は2012年12月、URL Pharmaの後発品事業をSun Pharmaの100%子会社のCaraco Pharmaceutical に譲渡した。
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