原子力規制委員会、原発新基準を決定

| コメント(0) | トラックバック(0)

原子力規制委員会は6月19日、福島第1原発事故の教訓を踏まえた新しい規制基準を決定した。7月8日に施行する。

テロ対策などを盛り込んだ「過酷事故対策編」、既存設備の安全対策を強化する「設計基準編」、活断層調査の強化や津波防護策を定めた「地震・津波編」の三つに大別され る。手順やマニュアルまでを含めると約4000ページに及ぶ。

基準には、最新の安全対策を義務付ける「パックフィット制度」が導入され、既設原発も対象になる。

毎日新聞 2013/6/20

過酷事故対策編 「特定安全施設」(事故の際、中央制御室の代替として機能) 5年間猶予
「緊急時対策所」(前線本部となる免震重要棟) 仮設も当面可能(機能を満たせば)
フィルター付きベント装置 加圧水型原発は現状でも当面容認
電源車やポンプの配備  
航空機墜落などのテロ対策 5年猶予
非常用バッテリー(3つ目) 5年猶予
設計基準編 ケーブル難燃化(火災対策)  
活火山、竜巻対策の強化  
冷却装置、電源設備の多重化、多様化  
地震津波対策編 最高の耐震性  
防潮堤、水密扉  
活断層の調査対象を必要に応じて「40万年前以降」までさかのぼって拡大  
最高津波の高さ(「基準津波」)に応じた安全対策を実施  
活断層直上に重要施設の設置を認めない 日本原子力敦賀2号を認定


地震津波対策編では「活断層直上に重要施設の設置を認めない」とされたが、現在のところ、日本原子力敦賀2号は活断層直下とみなされている。

全ての基準が直ちに適用されるのではなく、5年間猶予されるものや、条件付きで当面容認されるものもある。


国内には運転開始から40年超の原発が3基、30年超が14基ある。

「40年運転制限制」では、運転期間が原則40年に限定される。1回に限り最大20年延長できるが、原子炉圧力容器のコンクリートのサンプル分析などを行う「特別点検」に合格しなければな らない。

ーーー

早期再稼働を目指す電力会社は、急場しのぎの対策で申請に殺到する見通しだが、審査の布陣は、規制委事務局である原子力規制庁や「原子力安全基盤機構」の職員ら約80人。3つの審査チームと、地震・津波分野について横断的に審査するチームに分かれて行う。
過去の審査では、申請から安全判断まで半年〜1年程度かかったが、今回は申請が殺到する上、過酷事故対策の審査も加わる。

現在、関西電力が高浜3、4号機と大飯3、4号機、九州電力が玄海3、4号機と川内1、2号機、北海道電力が泊1─3号機、四国電力が伊方3機の計12プラントについて安全審査を申請する見通し。 (大飯3、4号機は当面の運転継続は認められる模様だが、9月の定期検査で停止後の再稼働時に審査を受ける。)


各原発の状況は以下の通り。

 
申請準備中
電所名
運転開始 型式 40年
まで
年数
能力
(万KW)
稼働 PWR フィルタ

ベント
(PWRは
猶予)
緊急時対策所
(仮設可)
電源
ケーブル
活断層
(規制委)
北海道電力
 泊
① 1989/6/22   PWR   57.9   15年度 15年度   OK
② 1991/4/12   PWR   57.9  
③ 2009/12/22  PWR   91.2  
東北電力
 東通
① 2005/12/8  BWR
(Mark-I 改)
  110.0   X 15年 16年   調査中
東北電力
 女川
① 1984/6/1   BWR
(Mark
-I)
  52.4   X 検討中   OK
② 1995/7/28 BWR
(Mark-I 改)
  82.5  
③ 2002/1/30 BWR
(Mark-I 改)
  82.5  
東京電力
 福島第一
⑤ 1978/4/18 BWR
(Mark
-I)
5 78.4   X 未定   OK
⑥ 1979/10/24 BWR
(Mark-Ⅱ)
6 110.0  
東京電力
 福島第二
① 1982/4/20 BWR
(Mark-Ⅱ)
9  110.0   X 未定   OK
② 1984/2/3 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0  
③ 1985/6/21 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0  
④ 1987/8/25 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0  
日本原子力
 東海
② 1978/11/28 BWR 5 110.0   X 設置予定   OK
東京電力
 柏崎刈羽
① 1985/9/18 BWR
(Mark-Ⅱ)
  110.0   X 着工   調査必要性
検討中
② 1990/9/28 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0    
③ 1993/8/11 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0    
④ 1994/8/11 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0    
⑤ 1990/4/10 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0    
⑥ 1996/11/7 ABWR   135.6    
⑦ 1997/7/2 ABWR   135.6   着工
中部電力
 浜岡
③ 1987/8/28 BWR
(Mark-I 改)
  110.0   X '14年度   調査必要性
検討中
④ 1993/9/3 BWR
(Mark-I 改)
  113.7   '14年度
⑤ 2005/1/18 ABWR   138.0    
北陸電力
 志賀
① 1993/7/30 BWR
(Mark-I改)
  54.0   X '15年度 '13/9   調査中
② 2006/3/15 ABWR   135.8  
日本原子力
 敦賀
① 1970/3/14 BWR
(Mark
-I)
0 35.7   X 検討中 X 調査中
② 1987/7/25 PWR   116.0   検討中   リスク認定
関西電力
 美浜
① 1970/11/28 PWR 0 34.0   検討中 検討中 X 調査中
② 1972/7/25 PWR 0 50.0  
③ 1976/3/15 PWR 3 82.6  
関西電力
 大飯
① 1979/3/27 PWR 6 117.5     仮設
対応
X 調査中
② 1979/12/5 PWR 6 117.5    
③ 1991/12/18 PWR   118.0 '15年度  
④ 1993/2/2 PWR   118.0 '15年度
関西電力
 高浜
① 1974/11/14 PWR 1 82.6   検討中 検討中 X 調査必要性
検討中
② 1975/11/14 PWR 2 82.6  
③ 1985/1/17 PWR   87.0    
④ 1985/6/5 PWR   87.0  
中国電力
 島根
① 1974/3/29 BWR
(Mark-I)
1 46.0   X   '14年度 X OK
② 1989/2/10 BWR
(Mark-I改)
  82.0   '14年度  
四国電力
 伊方
① 1977/9/30 PWR 4 56.6   '15年度 X OK
② 1982/3/19 PWR 9 56.6    
③ 1994/12/15 PWR   89.0    
九州電力
 玄海
① 1975/10/15 PWR 2 55.9   '16年度 仮設
対応
X OK
② 1981/3/30 PWR 8 55.9    
③ 1994/3/18 PWR   118.0    
④ 1997/7/25 PWR   118.0  
九州電力
 川内
① 1984/7/4 PWR   89.0   '16年度 仮設
対応?
  OK
② 1985/11/28 PWR   89.0  


PWR:加圧水型、
APWR(Advanced PWR) :改良型加圧水型 ---フィルタ付ベント設置猶予 
BWR:
沸騰水型、
ABWR(Advanced BWR):改良型沸騰水型 ---フィルタ付ベント即時設置要

フィルタ付きベントは全て未整備だが、申請準備中の12基は全てPWR(加圧水型)のため、設置が猶予される。

また、12基のうち、「緊急時対策所」の整備を終えた原発は、四国電力伊方3号機1基のみだが、機能を満たせば仮設でも当面可能となる。

但し、九州電力川内は中央制御室横の「控室」を仮施設として位置付けているが、規制委は稼働中の中央制御室横の部屋を使うことに難色を示している。

大飯3,4号機は、2015年に完成するまで、1, 2号機の会議室を仮設として使う計画だが、規制委は、その間は「1, 2号機の運転停止を条件に」認める方針。(当初は3,4号機の会議室を使用する計画であった。)

関西電力大飯のように、同じ原発で申請しないものがあるのは、ケーブルの難燃化が出来ていないなど、他の条件が整わないため。

 


トラックバック(0)

トラックバックURL: https://blog.knak.jp/knak-mt/mt-tb.cgi/2226

コメントする

月別 アーカイブ