韓国の最高裁は7月12日、ベトナム戦争に従軍した韓国の退役軍人が、枯葉剤(Agent Orange)をかぶって"chemical acne"(塩素性にきび症状)が出たとしてメーカーのDow ChemicalとMonsantoに賠償を求めた裁判で判決を下した。訴訟から14年が経過している。
「塩素性にきび」は枯れ葉剤に露出した人の顔に水疱や皮脂のようなにきびが生じる症状。
判決で、39名についてはAgent Orangeと病気との因果関係を認め、DowとMonsantoに合計415千ドルの賠償支払いを命じた。
枯葉剤と病気の因果関係を世界で初めて一部認めた。
しかし最高裁は、16千人以上の退役軍人が合計44億ドルの賠償を求めて1999年に訴えた件については、更なる検討を求め、控訴裁に差し戻した。
最高裁は今回、病気がAgent Orangeに曝されたことによるとの証拠はないと述べた。
裁判長は「気の毒な立場だけをもって判決をすることができなかった」と述べたが、事実上、原告敗訴判決を下した。
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韓国はベトナム戦争を通じて30万人の軍人をベトナムに送った。
韓国の退役軍人はAgent Orangeの被害者を約15万人とみている。
ベトナム政府はAgent Orangeの使用の結果、数百万人が死んだり、苦しんだりしているとしている。
米連邦最高裁は2009年、「枯れ葉剤は人間を標的とした毒物として作られたものではない」として原告の元ベトナム人兵士らの請求を棄却したニューヨーク連邦高裁の判断を支持し、原告敗訴の判決を言い渡している。
米国政府は今まで、責任を認めていない。
2007/6/23 ベトナムの枯葉剤被害者による訴訟
ベトナム戦争に参戦した米国・豪州・ニュージーランド軍人は1978年、米国の会社を相手取り集団訴訟を起こしたが、1984年の和解で、訴訟を取り下げる条件として
Dow
Chemical、Monsanto
など7社は240百万ドルの補償を行った。
米政府も毎年15億ドルの予算で対象者に補償を行っている。
最大参戦国の韓国は後にこれを知り、1993年に在米同胞弁護士を通して訴訟を起こした。しかし「訴訟資料不足」という理由で訴訟取り下げ命令を受け、1999年に韓国の裁判所に訴訟を起こした。
争点は3つあった。
・枯れ葉剤と原告の症状の因果関係
・枯れ葉剤露出から10年が過ぎたという訴訟時効
・裁判管轄権が韓国裁判所にあるかどうか
地裁は2002年5月に「因果関係を確認できず、時効も過ぎた」として原告敗訴判決を出した。
しかし控訴審のソウル高裁は2006年1月、「原告が主張する枯葉剤の後遺症のうち塩素性にきびをはじめ、非ホジキンリンパ腫・軟組織肉腫・ホジキン病・肺がん・多発性骨髄腫・2型糖尿病など11の症状が除草剤の副産物ダイオキシンと因果関係がある」とし、一審判決を覆した。
これらの病気とダイオキシンの間に疫学的な相関関係があるという米国立科学院の疫学調査報告書が根拠となった。
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参考 2013/7/6 沖縄に枯葉剤のドラム缶?
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