DuPont は7月23日、統合応用科学戦略を全事業で展開するための人事を発表したが、Performance Chemicals 事業をどうするかを戦略的に検討することを明らかにした。
スピンオフ、売却、その他の取引により同事業の全体又は一部分を分離することを検討する。
Performance Chemicals 事業は、酸化チタンを中心に、フッ素化学品、フッ素樹脂などを扱っている。業績は以下の通りで、売上高は全社の約20%、営業損益では28%を占める。
2012年の第4四半期の実績を見ると、売上高は前年同期比で15%減となっている。数量で8%減、価格で7%減となったが、欧米でのフッ素樹脂の需要減が数量減の主な理由で、値下がりは酸化チタンが主となっている。
営業損益は値下がりと両分野での販売数量減と減産により、前年同期の433百万ドルが54%減の200百万ドルに止まった。
酸化チタンは自動車用ペイントなどに使われ、世界経済の影響を受けやすい。
不況の間、メーカー各社はプラント休止で対応していたが、昨年になり DuPont、Cristal Global、Tronox、Huntsmanなどの大メーカーが休止していたプラントを一斉に再稼働させた結果、価格が急降下した。
DuPontでは、統合科学会社として株主価値を最大にするために既存事業の見直しを行っている。
2011年5月にはデンマークの食品用酵素や素材のメーカーのDaniscoを買収した。
2011/5/27 DuPont、Daniscoの買収成功同社は2012年8月、Carlyle Group にPerformance Coatings事業を現金49億ドルで売却する契約を締結したと発表した。
2012/9/5 DuPont、Performance Coatings事業をCarlyle Group に売却
Kullman会長・CEOはPerformance Chemicals 事業について、「景気変動による事業の不安定については科学ではどうしようもない」と述べ、DuPontは農薬、栄養、バイオサイエンスのような科学主導("science-driven")事業に集中するとしている。
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DuPontは世界最大の酸化チタンメーカー。
2007年時点で全世界需要490万トンの21%(約100万トン)をDuPontが供給していたが、同社は2011年に需要増大に対応し、年産35万トンの増設計画を発表した。
2011/5/18 DuPont、酸化チタンの大増設計画発表
1)メキシコのAltamira工場に5億ドルを投じて、年産20万トンのプラントを新設、2014年末の完成を目指す。
2)既存の下記 5工場の手直しで、3年間で年産15万トンの能力増を達成する。
ミシシッピー州DeLisle、テネシー州 New Johnsonville、デラウェア州 Edge Moor
メキシコ Altamira、台湾 観音(Kuan Yin)
(これらは全て、塩素法を採用。同社はまた、フロリダ州Starkeで鉱山を運営している。)DuPont は2005年11月に山東省東営市の経済開発地区で当初能力年産20万トンの酸化チタンを生産することで地方政府と合意書を締結した。この計画は環境問題で難航しているが、引き続き、推進する。
2010/7/9 ChemChina、山東省で酸化チタン生産開始 に状況記載
DuPontは他社が硫酸法を採用するのに対し、塩素法を採用している。
硫酸法はイルミナイト鉱石と硫酸を反応させ酸化チタンの硫酸塩から二酸化チタンを製造する。工程は塩素法に比べて長く、より多くのエネルギーを消費する。また、硫酸鉄等の固形産業廃棄物は塩素法の7倍であり、廃硫酸は80%以上は回収不能な廃溶液となり、そのため必要な公害対策設備費も増大する。
一方、塩素法はルチル鉱と塩酸を反応させ四塩化チタンから二酸化チタンを製造する。気相反応で工程が非常に短く設備もコンパクトですむ。また、使用後の塩素の回収率は90%と非常に高く廃棄物は硫酸法に比べ七分の一。
大手他社の状況については、2011/5/18
DuPont、酸化チタンの大増設計画発表 参照。
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