中国商務部は7月1日、公告36号と37号を出し、EU原産の輸入ワインについて、反ダンピング調査と反補助金調査を開始すると発表した。
5月15日に中国ワイン協会が国内ワイン産業を代表して調査を要請した。
調査対象期間は2012年1月から12月末まで、被害調査の対象期間は2009年1月から2012年12月末までとしている。
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EUは6月4日、中国製太陽光パネルに対し、反ダンピング関税を暫定的に適用することを正式に決定した。6月6日から適用する。
12月に本調査を終え、5年間の反ダンピング関税を実施するかどうかを決める。
当初は平均 11.8%とし、8月6日までに交渉を通じて中国側に改善がみられなければ 47.6%に引き上げることとした。
これに対し、中国商務省は6月5日、欧州産ワインが中国で不当に安値販売されている疑いがあるとして、反ダンピング調査実施を検討することを明らかにした。
欧州各国の政府が補助金支給などでワイン産業を不当に保護しているとし、反補助金調査も行う。
2012年の中国のEUからのワイン輸入量は25万7千キロリットルと2009年比で4倍に膨らみ、約60%がフランスからとなっている。
EUの反ダンピング課税を強く支持したフランスを標的にした報復と見られる。
中国商務部は6月5日に中国ワイン業界による調査申請の内容をEUに通知し、17日に欧中双方による話し合いを行った。
6月21日にはEU欧州委員会から意見書を受け取った。
調査開始までの詳細な過程を発表するのは珍しく、協議を通じて貿易紛争を解決したいとの姿勢をアピールしたとも受け取れる。
EUのデフフト委員(通商担当)は6月21日、北京で中国の高商務相と会談し、太陽光パネル問題の解決に向け協議を続ける方針を確認した後、「中国製太陽光パネル摩擦をめぐり中国と合意できれば、欧州産ワインに対する反ダンピング調査をめぐる問題も解消される」との見解を示した。
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6月10日付 英Financial Times は「EUは中国への制裁課税を撤回せよ」との社説を掲載した。
欧州の多くの国は再生可能エネルギーを優先するため多額の補助金を支給している。そんな状況で太陽光パネルの価格を引き上げるのは、自らの不利益にしかならない。加えて欧州の消費者や中国への供給業者、報復措置による被害者も打撃を受ける。
当然のごとく中国は欧州産ワインの販売に標的を絞った調査で報復した。EU最大のワイン生産国であるフランスはデフフト委員を支持した。対抗制裁は個人を狙ったものでもある。デフフト委員自身がワイン醸造業者だった。
現時点での最善策は、デフフト委員はひとまず方針を撤回し、地に足のついた対応を考えるべきだろう。
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