EUの通商担当のデフフト(Karel De Gucht)委員は7月23日、中国の太陽光パネルのダンピング問題で中国側と和解に達したと発表した。
付記
欧州委員会は8月2日、これを承認した。
これにより価格協定に参加する中国メーカーは8月6日以降、ダンピング課税を免れる。参加しないメーカーは47.6%の課税を受ける。
経緯と概要は以下の通り。
EUは6月4日、中国製太陽光パネルに対し、反ダンピング関税を暫定的に適用することを正式に決定した。
当初はダンピング税率を平均 11.8%とし6月6日から適用、8月6日までに交渉を通じて中国側に改善がみられなければ 47.6%に引き上げることとした。
12月に本調査を終え、5年間の反ダンピング関税を実施するかどうかを決める。
これに対しては、EU内にも中国の対抗策を懸念する声が強く、ドイツのMerkel首相はドイツ製品の輸出への影響を懸念して中国との更なる交渉を要求した。
中国製太陽光パネルを輸入する欧州の業者もダンピング課税に反対した。
6月10日付 英Financial Times は「EUは中国への制裁課税を撤回せよ」との社説を掲載した。
欧州の多くの国は再生可能エネルギーを優先するため多額の補助金を支給している。そんな状況で太陽光パネルの価格を引き上げるのは、自らの不利益にしかならない。加えて欧州の消費者や中国への供給業者、報復措置による被害者も打撃を受ける。
中国商務部は7月1日、EU原産の輸入ワインについて、反ダンピング調査と反補助金調査を開始すると発表した。
2013/7/5 中国、EU原産の輸入ワインで反ダンピング&反補助金調査を開始
中国商務部は6月5日に中国ワイン業界による調査申請の内容をEUに通知し、17日に欧中双方による話し合いを行った。
6月21日には欧州委員会から意見書を受け取った。
調査開始までの詳細な過程を発表するのは珍しく、協議を通じて貿易紛争を解決したいとの姿勢をアピールしたとも受け取れる。
EUのデフフト委員(通商担当)は6月21日、北京で中国の高商務相と会談し、太陽光パネル問題の解決に向け協議を続ける方針を確認した後、「中国製太陽光パネル摩擦をめぐり中国と合意できれば、欧州産ワインに対する反ダンピング調査をめぐる問題も解消される」との見解を示した。
その後、EUと中国側(中國機電産品進出口商会)は中国製太陽光パネルのEUにおける最低販売価格と年間割当額に関する交渉を続けた。
7月26日付の人民網によると、当初中国企業は0.5-0.54ユーロ/ワットという妥協ラインを提案していたが、EU加盟国の自国産モジュールの価格は0.6-0.7ユーロ/ワットと大きな幅があった。
最終期限が近づき、中国・EUの双方は譲歩を示した。ドイツ誌は、「EUは0.6ユーロ/ワットを大きく下回る最低輸入価格を提案した」とし、「中国の交渉代表者も妥協の意思を示し、数日内に最終的な価格を提出する見通しだ 」と報じていた。
EUは欧州委員会で正式に承認するまで内容は明らかに出来ないとしているが、最低価格が0.56ユーロ/ワットであることが非公式に伝えられている。 年間割当額が合意に含まれるのかどうかも明らかにしていないが、ロビイスト団体のEU ProSunは、予想される需要の70%であると伝えている。
アンチダンピング調査の対象となった中国企業140社のうち90社、数量では60%が この最低価格を上回っている。
この最低価格を守らない輸出業者は8月6日以降は47.5%のダンピング税を課せられる。付記
その後の報道では、輸出枠は年700万キロワット分、最低輸出価格は発電能力1ワットあたり0.56ユーロ。
2012年に欧州で新規に導入された太陽光発電容量は1715万9千kwで。今回合意した輸出枠はその4割に相当する。
中国機電産品輸出入商会によると、
年間輸出枠の6割はこれまでの各社の輸出額実績に基づいて割り当て。
3割はEUへの抗議活動に積極的にかかわった企業
残り1割を輸出実績が小さい中小企業枠。
中国製品に対して厳しい姿勢を求めていた欧州の太陽光パネルメーカーはこれに激怒している。
ロビイスト団体のEU ProSunは、この和解は欧州法に違反するものであり、市場の70%を現状の安い価格で中国勢に引き渡して国産メーカーに死を宣言するものだとして、EUを訴えるとしている。
これに対しドイツの経財相は、「これまで交渉で決めるのがよいと強調しており、妥協が行われたのはよいことだ」と述べた。
6月のダンピング課税決定に賛成したフランスも、今回の決定を支持したが、中国がEUのワインの反ダンピング調査をやめることを希望している。
中国商務部はこの妥協を歓迎し、双方が実際的で柔軟な態度を示し、問題を解決する知恵を出したショーケースだとし、中国とEUとの間のオープンで、協力的で、安定し、持続可能な経済通商関係に貢献するものとしている。
EUとの間では問題は解決に向かったが、米国の場合は簡単ではない。
米国はこの問題でEUと共同で中国と交渉し、米/EU/中国の包括的な取り決めを結ぼうとした。
しかし、米国は中国製太陽光パネルに対し、既にダンピング課税と相殺関税を最終決定しており、一旦最終決定をしてしまうと、簡単には取り消すことができない。
このため、8月6日にダンピング税率の引き上げを迎え、解決を急ぐEUに置いてけぼりを食った形となった。
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